「江戸時代、紙屋で働いていた一人の若者が、店のお嬢様と恋に落ちた。若者は大旦那様に結婚の許しを得ようとしたのだけれど、はねつけられた。それでもあきらめない、何度も何度もやってきて畳に頭をこすり付けて懇願する若者に、大旦那様は言ったの。空を
飛んでみせろ。そしたら娘はお前にくれてやる」
想いを告げてくれた彼に対して、わたしはこんな話をしている。遠まわしに断られていると思ったかもしれない。
「それって天地がひっくり返っても、お前なんかに娘はやらないっていっているようなものだよね。だって江戸時代だろ?」
「でも、彼は飛んだのよ」
「何と」
「紙屋の技を活かしてね。和紙と布と竹の骨組で、とんでもなく大きい翼を組み立てたの」
「ハング・グライダーだ」
「そう、イギリスの誰だかがハング・グライダーでの滑降に成功した、その何十年も前のこと。ライト兄弟による飛行機発明の百二十年前。数え切れないほどの試作を繰り返して、ある夏の日、彼は橋の欄干から飛んだ。恋人の見守る前で。そりゃ物凄く怖かったろうけど一生に一度の勇気を出して、世界で初めて彼は飛んだ」
「で、ハッピーエンド?」
なんてあこがれる言葉だろう、ハッピーエンド。わたしは首を横に振った。
「残念ながら。夕涼みしていた町人たちが大騒ぎしちゃってね。本気で天狗が飛んできたと思ったみたい。彼、名前は浮田幸吉っていうんだけど、役人に取り押さえられて町から追い出されたそうよ。恋人ともそれっきり」
「罰が厳しいなあ」
「殿様の頭上を飛んだのがまずかったの」
「文字通り頭が高いってやつか。ところで、ということはだ。この場合みどりは紙屋の大旦那様で、俺がその浮田幸吉って人なのかな」
「ひどいでしょ、わたし。あきれてくれていいよ」
「こんなことであきれるくらいなら」
彼は、その先は言わずに微笑んだ。
わたしは彼に告白された。つきあってくれといわれた。その返事としてわたしは要するに、なにか凄いことをしてみせてくれたら、つきあってあげてもいいよと言っているのだ。
愚かしいほどに、頭が高い。
雨が窓ガラスを、わたしのことを咎めるようにたたき続けた。
あなたは何様ですか。そんなことをしてもらえるような、上等な人間なのですか。
本当はわたしにだって分かっている。
空を飛ぶべきはわたしなのだ。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-12-29 02:11:07
148922文字
会話率:37%
気がつくと、江戸時代に転生していた。平和な時代と思いきや、悪鬼妖怪、夜叉の暗躍する世界。
もしかして、史実とは違う異世界なのか?
剣の腕は一流なので、思い付いた剣技を駆使して、江戸の治安を守ります。
最終更新:2023-12-28 12:18:49
13902文字
会話率:50%
江戸時代の相学の大家、水野南北の末裔だった主人公は、異世界でミズリーという少女に転生した。ミズリーは通っていた学園の文化祭で、ふらふらと占いコーナーに立ち寄り、そこで自分の前世に気付く。占いコーナーで鑑定をしていたのは、学園の魔術科で天才と
言われているデビオンだった。魔術は天才でも占いはへっぽこ。デビオンのいかにも当たらなそうな鑑定内容に、つい声を上げてしまうミズリーだった。そして……。
※本作は、『第5回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』参加作品です。
※キーワードは「文化祭」と「五年」です。
※作中の占い内容は、作者の独自解釈です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-12-23 11:40:16
1000文字
会話率:31%
陰陽師として有名な土御門家。江戸時代以降、その名は消えて行った。だが現代にも系譜は残っている。「土」か「御」か「門」の名を持つ者の中に。その一文字を持つ御上浩介は、高校生である。一族の願いと誇りをかけて、彼は全国を旅する。
目的は物の怪の抹
殺。相棒は黒猫である。
今日もまた、浩介は新たな地へ、新たな高校へと向かうのである。
※本作は「なろうラジオ大賞5」への参加作品です。
※実在の地名などが出てきても、フィクションです。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-12-04 17:48:03
1000文字
会話率:17%
現代から江戸時代にタイムスリップしてしまった市之助とおはま。
なぜ、ふたりは江戸に誘われたのか…-。
江戸時代中期の下町を舞台に、男女二人が織りなす物語。
最終更新:2023-12-23 09:00:40
1726文字
会話率:7%
コンビニオーナーが江戸時代へタイムスリップ!?
コンビニ経営で得た知識を生かして流通革命!
最終更新:2023-12-21 17:11:11
711文字
会話率:16%
うちの旦那さんは学生の頃はモテたそうです。
※ 娯楽が少ないない江戸時代くらいの設定とでも思っていただければ間違いないかと。
キーワード:
最終更新:2023-12-21 07:26:50
3189文字
会話率:8%
江戸幕府が開かれて数十年。
乱世が終わり天下泰平の江戸の街は今日も賑わう。
しかし一見平和に見えるこの街にも悪は蔓延る。
晴らせぬ恨み晴らします。
これは渡し人と言われる闇の仕置人たちが庶民の恨みを晴らす物語である。
最終更新:2023-12-14 23:34:40
222156文字
会話率:39%
館山藩下級士族の五男、若き侍である野村清五郎は剣の腕を磨く日々を送っていたがある日屋敷に呼び出され藩命を受ける。
「師の仇、城戸道久を討て──」
それは清五郎にとって過酷な旅の始まりであり、士というものの考え方を見つめ直す出来事であった。
武士とは何か。士道とは?
やがて2人の士は対峙する。
※舞台は架空の江戸時代幕末あたりがモチーフです折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-05-30 06:20:03
24993文字
会話率:26%
なろうラジオ大賞参加作品です。
今日は赤穂浪士討ち入りの日でござる。
こんなん書いてみました。
最終更新:2023-12-14 22:02:17
536文字
会話率:20%
土佐を支配する長宗我部家の跡継ぎ、長宗我部信親に令和の歴史オタクが転生する。
容姿端麗、高身長で文武に優れ家中からの信用も厚く、完璧すぎる信親に現代人の知識が加わった事により信親はみるみるうちに豊臣政権での立場を確立していく。
だがこの時、
彼がもう一度転生……しかも幕末の自身の子孫になるとはまだ誰も知らない。
これは一介の地方大名が戦国、幕末を渡り歩き日本の未来を変える物語折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-12-10 17:11:44
241225文字
会話率:44%
幼馴染みの物理学者・いつながつくった、異世界への扉。
誤って迷い込んでしまった璃羽がとばされた異世界は、まるで江戸時代の日本のような、でもまったくの別の国・龍の国だった。
当たり前のように妖魔が出現し、人々を脅かすこの国で、璃羽はいつ
なの発明メカと共に戦い抜いていく。
「あなたは救世主といわれる――龍姫か?」
国の長にそう呼ばれ、龍姫として平和をもたらすことを条件に、璃羽は護衛たちと共に元の世界へ戻る方法を探す旅へと出る。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-12-09 21:48:49
54246文字
会話率:44%
忠臣蔵――――世に有名な赤穂浪士討ち入り。吉良家の兵として戦い、討ち死にしたとされる剣の達人・清水一学は、名を一生一学と変え密かに生き延びていた。
事件から二十年後、赤穂浪士を義士と讃えるとある宿場に、死んだ筈の剣客が訪れる。
江戸時代
を舞台にした歴史のイフ短編です。史実に忠実ではありません、エンタメとして楽しんでいただければ幸いです。
カクヨムにも同じ小説を投稿しています。https://kakuyomu.jp/works/16816452219844072212折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-12-07 20:14:02
20786文字
会話率:39%
1000文字無い短編ですのでサクッと読めます。
江戸の世には珍しく戯作(げさく)で生計を立てている半兵衛は普段から嘘ばかりついている。
しかし時にはその嘘が関わった人を幸せにすることもある。
いつか長編で書きたい主題ですが、試
しに短編で書いてみました。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-12-05 17:07:39
985文字
会話率:27%
とある八王子にある、とある江戸時代から続く、とある老舗の銭湯に嫁入りした湯本(旧姓本郷)かなめ。
かろうじて三十路前にお嫁さんになったけど嫁いだ先は老舗の銭湯。
そして実はここの経営者は人では無かった!
物の怪と人の血が混ざった湯本家の人
々はこの地で物の怪をまとめ上げながら銭湯を運営していたのだ。
毎日毎日驚きの事が起こり、かなめの毎日はてんてこ舞い。
それでも愛する守(まもる)と一緒にこの伝統ある銭湯を守って行かなきゃならない。
「それでも守さんは番頭に立っちゃだめです!」
彼女はそう言って今日もまた顔を赤らめて銭湯の番頭に立つのだった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-12-04 06:00:00
40866文字
会話率:42%
明暦の大火で振袖は燃やされていなかった……。
江戸時代に江戸の町を襲った未曽有の大火災、明暦の大火で燃やされたとされる振袖はこの世にあらわれた魔物と戦うための唯一の手段となる聖なる衣として魔物と戦う少女が纏っていたが、彼女は戦いに敗れ、振袖
は結晶と化しバラバラになって飛散していった。
それから350年ほど時は流れ、現代の日本、東京。
彩羽(いろは)高校に通う女子高生である火宮さくらは、ある日学校からの帰り道で七色に光る破片を持つ狐に似た生き物が車道に飛び出したところを目撃し、助ける。
その生き物はしゃべり出し、「なくしてしまった「振袖のカケラ」を探してほしい」と頼む。
小さい頃に祖父から聞いた振袖小町の伝承が事実だったことに驚きを隠せない中、キツネに似た生き物=イナリと探し始めるが、町では少女が操る怪物が暴れパニックになる。
さくらの親友で幼なじみの水崎あおいとその双子の兄である水崎蓮をはじめとする人々が襲われ、町がめちゃくちゃになる光景を見ていられなくなったさくらは、「自分の力で誰かを助けられるなら」と、振袖小町になることを決意。その直後、異空間で謎の少女から力を与えられる。
光る破片=振袖のカケラと謎の少女から与えられた力によってさくらは火の振袖小町となって町を救う。
こうして、振袖のカケラを巡る激しい戦いの火ぶたが切って落とされたのである。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-11-28 12:00:00
440941文字
会話率:47%
うまく連載にすることができず、仕切り直して、再投稿してます。
主人公は、古市村庄屋の三郎衛門、木綿商人の嘉助、綿作農家の幸吉、三人です。
彼らは舞台回しのように、最後は一千七ヵ村もの国規模の農民が結集し、権力者を相手取って、自分たちの訴えを
勝ち取るまでを、演じていきます。
主人公たちだけでなく、過労死しそうなほど八面六臂で活躍し続ける幕臣、ドラッカーよりずっと前に「人を幸福にすること」をモットーにマネジメントを唱えた思想家、選挙は一番で勝ったやつより二番手の方が有能!と言い切った村役人等々、面白い登場人物が次々現れます。しかもほぼ実話で。
これがこの小説の特徴で強みです。
この物語は、あくまでフィクションです。ノンフィクションまじりの......
どの部分が創作でどの部分が実話か推理するのも一興かと......
歴史ものである限り、諸説ある事はあらかじめご了承ください。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-11-25 06:00:00
96402文字
会話率:21%
もしも江戸時代にSNSがあったら、どんなことが書かれていたでしょうか。ちょっといい話、不思議な話。名所旧跡にまつわるエピソード。ほんとか嘘かわからない健康法。おまじないやライフハック……。江戸で暮らしたごく普通の人々の息づかいをリアルに伝え
る、短文随筆集『耳嚢』の魅力に迫ります。
本作は、ひだまりのねこ様主催『集まれエッセイ企画』参加作品です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-11-21 10:20:38
4631文字
会話率:0%
藩医の跡取り・高階清順(せいじゅん)と、薬種問屋の娘・お宇乃(うの)はほどなく祝言を控えていた。ところが新郎新婦の父親同士が打合せを行う医家の屋敷に、突然現れたのは薄汚れた旅姿の若い娘・七重。清順の子を身ごもっていると泣き崩れる娘に顔面蒼白
になりながらも、新郎となるはずの清順は、父親に、お宇乃との縁談を破棄して七重と添いたいと訴える。かたや、新婦となるはずのお宇乃は、座敷に引きこもってろくに家族とも話さず、挙句、目を病みかかっていた。八方ふさがりの苦境に、新婦の父である平松屋与兵衛と、清順とお宇乃の幼なじみで、平松屋の手代・耕太郎は、起死回生の一策を案じる――。
江戸時代のとある藩の城下町を舞台にした物語。
「秋の歴史2023」(テーマ:食事)企画参加作品です。
初稿書き上げ済み、定期更新を予定しています。
一話2000字程度(最終話のみ3500字程度)、全11話予定。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-10-26 10:16:42
32432文字
会話率:51%
十二歳の少年、弥吉は、病に臥す姉のため、禁じられた崖に薬草を取りに立ち入ってしまう。そこで出会った不思議な少女と、異形の男。弥吉は無事、家に帰り着くことができるのか。命を繋ぐための勝負の行末は……。江戸時代の日本っぽい、どこかの世界のどこか
の国の、鄙びた農村のお話です。
全十話構成。一日二話ずつ掲載予定(午前・午後)です。
小畠愛子様主催『カドゲ・ボドゲカフェ企画』参加作品です。
ストーリーの重要な部分で、蛇を描写しています。苦手な方はご注意ください。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-06-29 16:23:32
36425文字
会話率:28%
時は江戸時代。
日本中を荒らし回っていた『あやかし』たちは既に強い退魔師によってあらかた退治されたと言われ、人々は恐怖に怯えることなく平和に暮らしていた。
妖怪退治の名門一族の末っ子『雪風音丸』は十五になった。一族には十五になった者は修
行の旅に出る掟がある。
もう日本にはへっぽこ妖怪しか残ってはいないと聞くが、音丸は颯爽と旅に出る。音丸も『へっぽこ丸』と呼ばれるほどのへっぽこなのだ。ちょうどいいと言えた。
あ。ちなみに音丸は女の子である。
妹思いの兄たちはそれぞれ心配して、彼女の初めての修行の旅を見守る。
もしかしたらどこかにまだ強大な『あやかし』が潜んでいるかもしれぬという不安を胸に。
※難しいことは何も考えてない、かわいい時代劇アクションです。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-11-20 07:02:12
111483文字
会話率:46%
私の名は雪風心丸。妖怪退治の名門一族として名を知られる雪風一族のはしくれだ。山道に人の衣服を剥いでイタズラをするけしからん鎌鼬がいると聞いて、退治にやって来た。私の初めての妖怪退治の相手にうってつけだと思ったのだが……
最終更新:2023-01-08 10:13:46
4405文字
会話率:42%
あたいの長屋に異人さんが引っ越してきた。ここみくさんはとても不思議で、でも優しくて……
最終更新:2022-01-15 22:47:38
2594文字
会話率:30%
菊を名産とする山間の村、菊原村……そこには、菊畑の開祖と言われる姫の塚があった。その名も、白菊姫。しかしその塚には、中秋の名月の晩に白菊を供えると死霊が出る、という恐ろしい伝説があった。興味を持った小学生の咲夜たちは、その伝説について村の
老人に聞きに行くが……。江戸時代と現代、二つの時代で起こる、世間知らずな姫から始まる一夜の惨劇。ゾンビは感染しますが、基本的に呪いが原因です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-11-19 09:00:00
809476文字
会話率:19%
幕末、文久三年。
動乱という名の嵐が吹き荒れる京都に、多くの若者が身を投じている。
三原と才蔵も、その若者達の一人になろうとしていた。
心が熱く昂る。
明日には江戸を出立して、京への道中を歩み始める。
星が煌めく夜空の下で、男達は誓いを立て
た。
凶刃が潜んでいることなど、知る由もなかった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-11-18 19:07:20
9094文字
会話率:24%
「己が業は、己が一番分かっている」
月明かりが雲間に隠れた丑三つ時、男はある廃寺を目指し歩んでいた。そこに潜む男の、友を殺した男のこの手でその首を討たんが為に。
しかして、震える胸の内。
それは恐ろしいからか、武者震いからか。
それは、
男のみぞ知る話である。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-02-15 19:16:21
7548文字
会話率:11%
維新が成って十年。互いに互いの道を歩んだ男達は、因縁巡って相対する。
最終更新:2018-09-23 17:02:06
11175文字
会話率:21%
全編読み切りの右衛門シーズ。右衛門とその仲間たちが、自分たちの世界を構築していく。
理想郷を求めて、戦う物語。
最終更新:2023-11-15 17:16:33
1013221文字
会話率:37%