その生徒の名前は、学園内の記録から消えていた。
存在を示すデータも、写真も、証言すら曖昧で──まるで最初から存在しなかったかのように。
「記録の残る限り、罪は裁ける。」
記録管理課所属、風間湊。
警察の中でも地味で無名なその部署に所属す
る彼は、過去の未解決事件や矛盾した報告書の“記録の歪み”を読み解く特異な観察眼を持つ。
今回は“ある学園”で発生した奇妙な失踪事件を再調査するため、臨時の学内派遣として潜入することに。
だが学園には、閉鎖された空間特有の緊張と、教師・生徒たちが共有する“何かを隠している”空気が渦巻いていた。
かつて記録され、そして意図的に消された“罪”とは何か。
残された記録と矛盾の狭間で、風間は真実へと辿りつけるのか──。
これは、「記録」に残された罪と、「記憶」から消された存在をめぐる、静かな戦いの始まりである。
■風間 湊(かざま みなと)
警察庁・記録管理課所属。28歳。
“事件の痕跡は、記録の中にこそ残る”という信条のもと、現場の矛盾や記録の曖昧さから真相に迫る異色の捜査官。
温厚な物腰の奥に、冷徹な論理と観察力を秘めている。過去に起きた“ある事件”をきっかけに、記録に取り憑かれた。
■神代 莉緒(かみしろ りお)
今回の潜入先・私立聖錬学園の臨時教員。20代後半。
表向きは協力者として学園内を案内するが、何かを隠しているような節がある。風間の観察によって、徐々にその過去と正体が明らかになる。
■謎の“消えた生徒”
学園の記録から存在が消えたはずの人物。
しかし一部の生徒は、断片的にその記憶を持っている。果たして彼は実在したのか、それとも…?折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-21 15:47:08
95410文字
会話率:23%
戦国の四国・土佐国。この地にあって、都の雅な血を引く名門――一条家がひっそりとその歴史を刻んでいた。主人公・一条彩(いちじょう あや)は、土佐一条家の娘として生を受け、やがて数奇な運命に導かれていく。父の死、兄との確執、渦巻く陰謀。男が世を
動かす時代にあって、女として生まれたがゆえの苦悩と差別の中、彩はただ静かに力を蓄えていく。
美貌、才知、そして武の冴え。人並外れた資質を持つ彩は、幾度もの試練に立ち向かい、やがて周囲の信を勝ち得てゆく。しかし、土佐の地は安穏ではない。四国には多くの勢力がひしめき合い、隙あらば隣国が攻め入ろうという緊張の渦中にあった。内には疑心と権力争い、外には野心と敵意。華やかな装束の陰に隠された鋼の意志が、彩を静かに、確実に変えていく。
武家としての誇り、姫としての覚悟、人としての慈しみ――すべてを胸に抱きながら、彼女は小さな御所の門を一歩、また一歩と踏み出していく。時に非情な決断を迫られ、時に己の信念すら試される苛烈な運命のなかで、それでも彩は道を選ぶ。剣を執るか、筆を取るか、それとも別の術で世を渡るか。選び取った一歩一歩が、やがて土佐の未来を形作っていく。
この物語は、一人の姫が時代に抗い、民のために戦い、己の在り方を問い続けながら歩んだ軌跡を描く伝説である。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-21 13:01:50
6624文字
会話率:41%
『闇夜の真実』第1話「消えた影、揺れる真実」あらすじ(サスペンス要素強調版):
深夜、ジャーナリストの美波誠が忽然と姿を消した。その背後には、警察内部の腐敗と誰も知らない闇が潜んでいた。元警察官の私立探偵・神崎玲は、誠の妹・優子からの依頼
を受け、失踪事件の調査に乗り出す。しかし、捜査が進むにつれ、玲自身の過去の傷跡が再び浮かび上がる。
手がかりを求める玲の前に現れるのは、かつての同僚で冷酷なリアリストとなった情報屋・西条隼人。彼の持つ断片的な情報は、警察内部の腐敗がこの失踪事件と密接に関係していることを示唆していた。
さらに、誠の失踪前に接触していた警視庁の刑事・黒田圭司の存在が不気味な影を落とす。表向きは誠実な刑事として知られる黒田だが、彼の二重生活が玲を危険な真実へと導くことになる。黒田の冷徹な表情の裏に隠された罪悪感と葛藤は、物語の緊張感をさらに高めていく。
玲は真実に近づくたびに、見えない敵の存在を確信する。誰が味方で誰が敵なのか、すべてが疑わしく思える中、彼女は自身の過去と向き合いながら、闇夜に潜む危険に挑む。隠された真実の先に待つのは、救いか、それともさらなる絶望か——。
⸻
【全話1話完結の物語】折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-21 00:08:04
1428203文字
会話率:30%
自然大災害【黒の大侵蝕】が終わって二十年。それを収めた英雄「夕凪鷹宗」が住まう異能者共存国【アルバドリス】では、フィアネス大陸中で最も賑わう復興祭が開催された。そんな中、非異能者・異能者共学校に通う高校三年生の来杉弥彦は、近づく卒業に焦
りを覚え始める。
自分はなんのために異能を持って生まれたのか。
自身が異能者として生まれた意味を見出せず将来に漠然とした不安を抱え始めた彼に、黒の大侵蝕の英雄と讃えられる夕凪鷹宗から突然電話がかかる。
理由の語られない謎の呼び出し。緊張した足取りで向う弥彦を待ち受けていたのは、どういうわけか広大な森と黒獅子だった。
平凡な生活が静かに崩れていく瞬間が訪れた。
現代風ファンタジーで紡がれる、特別な存在【神獣】と出会った異能者たちの成長譚、開幕。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-20 15:17:47
261956文字
会話率:36%
・福祉施設での「不審な入所者の死」と謎のメモ
・過去の"地下サロン"と榊原の隠された嗜好
・サロン関係者が次々と死亡、刑事が捜査開始
・アクロトモフィリアに取り憑かれた若者の告白
・榊原と刑事との緊張関係、仄見える裏の顔
・サロンのオーナーが語る「彼の過去」
・施設で新たな死、警察が突き止めた事実
・本当の“仮面”の持ち主とは?
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-18 10:46:30
18574文字
会話率:26%
デジタルな孤独が深まるこの世界で、「サミー」は思いがけない体験の入り口に立っていた――政府から支給された“ギフト”、名前はアニヤ。緊張しやすくて無愛想、そして彼への軽蔑を隠そうともしない猫娘。
愛もなければ、親しみもない。ただの一時的な契
約と、沈黙と気まずさに満ちた小さなアパートだけ。
だが、プログラミング、冷めたコーヒー、そして怒りでピンと立った尻尾の中で、サミーの人生は静かに揺れ始める――。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-14 09:36:59
2370文字
会話率:39%
戦争、呪い、医学の発展……様々な理由で男女比が2:8になってしまった世界。
各国の諍いや争いは絶えず、常に緊張状態が続いていた。
山あいの小さな農村で、筋骨隆々の身体で鍬を振り下ろす男――レオン・ヴァルクは、口下手で無愛想ながらも村民に信頼
され、平和な日常を送っていたが……
平和を奪う戦火は、すぐ近くまで迫ってきていた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-12 23:45:32
10166文字
会話率:42%
……大魔女ミゼルが亡くなって10年。
魔女の召使いだったリーゼは、年を取らなくなる魔法×城を出たら死ぬ魔法を掛けられていた為、城中に引きこもりながら、ぼんやりと時を重ねていた。
『そろそろ、私も死ぬのかしら?』
そんなことを考え
ながら、趣味で取り寄せている恋愛小説だけを楽しみに生きていたのに、ある日突然、この国の王太子殿下・シエルが城に押しかけてきた。
「この城は、私のものだからね」
そう宣言して、強引に城での生活を始めてしまったシエル王太子と家臣たち。
どうやら、シエルはリーゼの暮らす城で「何か」を探しているようで……?
リーゼの深い知識に、シエル王太子は素直に感動して、二人は次第に打ち解けていくものの……。
コンプレックスの塊を抱えているリーゼは、彼の優しさに引け目を感じてしまう。
そんな時、緊張状態にいる隣国の王が、シエルを訪ねて城にやって来ると打診があって……。
人生を諦めている魔女の召使い×空気を読んでしまう優しい王子様
二人が出会った時、止まっていた時間が再び動き出す。
両片思いの恋愛ファンタジー折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-12 21:24:50
142014文字
会話率:31%
---
缶詰(カンヅメ)――
それは備蓄の象徴であり、閉じ込められた日常でもある。
壊れた世界に、火を灯すように。
少年たちは手を取り、屋上に畑をつくり、暗闇に明かりをともした。
いつ終わるともしれない緊張の中で、笑える夜を探していた
。
戦いは避けられない。だがそれが、目的ではない。
目指すのは生き延びることではなく、「生きる」ことそのもの。
死が日常になった世界で、彼らは日常を生きようとする。
生き残るために、戦うのではない。
生きるために、日常を築くのだ。
---折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-12 20:32:11
86346文字
会話率:21%
紀元前300年頃、奈良県桜井市の三輪山と初瀬川の湖を背景に、大倭日高見国と耶靡堆国の対立が繰り広げられる。豊かな米の国・大倭と、新たな志を抱く耶靡堆国の王・耶靡堆日子の野心が火花を散らす中、大倭の皇子・伊弉諾尊と耶靡堆の皇女・伊弉冉尊の婚姻
が両国の和平を約束する。二人の子、大日?貴、月読、素戔嗚は神々の子として未来を担うが、地震と疫病が耶靡堆を襲い、伊弉諾たちは大和盆地の湖の地へ遷都を決意する。大和で大日?貴は天照大神として即位し、新都を築くが、素戔嗚は侍女・替矢姫との恋ゆえに天照の怒りを買い、追放される。替矢姫は自責の念から命を絶ち、素戔嗚は悲しみを胸に出雲へ旅立つ。新羅の試練を乗り越え、出雲で櫛名田姫と新たな愛を見つけ、国を築く素戔嗚。一方、笠(大和)では天照の夫・八意思兼が病死し、末子・熊野久須毘の死が笠と出雲の緊張を高める。天照の孫・饒速日は、十種神宝を手に日本統一の使命を担う。出雲の大国主の娘・天道日女命、三嶋湟咋の娘・活玉依姫との婚姻を通じて、笠と出雲、九州を結び、耶馬臺国を建国。饒速日の娘・櫛玉姫と大国主の息子・八重事代主の結婚が最終的な和平をもたらし、三輪山の麓に新都が輝く。愛と喪失、争いと和解を経て、日ノ本は神々の祝福の下、統一された未来へと歩みを進める。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-12 15:56:17
19613文字
会話率:49%
東洋の端に浮かぶ島国「秋津皇国」。
戦国時代の末期から海洋進出を進めてきたこの国はその後の約二〇〇年間で、北は大陸の凍土から、南は泰平洋の島々を植民地とする広大な領土を持つに至っていた。
だが、国内では産業革命が進み近代化を成し遂げる
一方、その支配体制は六大将家「六家」を中心とする諸侯が領国を支配する封建体制が敷かれ続けているという歪な形のままであった。
一方、国外では西洋列強による東洋進出が進み、皇国を取り巻く国際環境は徐々に緊張感を孕むものとなっていく。
六家の一つ、結城家の十七歳となる嫡男・景紀は、父である当主・景忠が病に倒れたため、国論が攘夷と経済振興に割れる中、結城家の政務全般を引き継ぐこととなった。
そして、彼に付き従うシキガミの少女・冬花と彼へと嫁いだ少女・宵姫。
やがて彼らは激動の時代へと呑み込まれていくこととなる。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-12 12:15:43
2173681文字
会話率:36%
王都エンヴィレアの中央広場には、今日も多くの人が集まっていた。
年に一度の神託式――それは、女神様がこの世界の者たちに「職業」を授ける、運命の祭典。
「次の者、前へ!」
「はっ!」
列に並ぶ若者たちの緊張感と、広場を取り囲む市民たちの期
待が入り混じる中、神殿の壇上に立つのはこの世界を統べる女神・アステリナ。
ただし――
「ふにゅ……えーっと、次は……『にんじん栽培士』? あれ? 『忍者』だったかしら?」
この女神、視力が絶望的に悪い。
はたしてまともな職業を選んでもらえるのか!
物語は未知!折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-12 12:00:00
4432文字
会話率:55%
家族や学校の人間関係に悩む少女の、自分らしさを取り戻す物語
桜井陽菜は、中学2年生。小学生だったある冬の日を境に、それ以前の記憶を失ってしまった。それ以来、恐怖や緊張を感じると、呼吸が乱れ、意識を失ってしまうことがあった。人前に出ることが
恐ろしくなり、しばらく学校から遠ざかっていたが、父の知り合いの紹介で、フリースクールに通うことになった。
そこで出会った同級生との交流から、自分らしさを取り戻しつつ、成長する過程を描いた物語。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-11 00:00:00
65891文字
会話率:37%
異世界放浪者が誰もが冒険を夢見たり、旅人になりありとあらゆる土地に足を運ぶなんて思うなよ!
そう我こそは、ビビり体質の緊張しい、人見知りの人付き合い激悪、都合のいい時だけ猫を被るカメレオン男。
元の世界で二十八歳派遣社員、独身、童貞、友人
、二、三人の超一般人。見た目はなぜか十歳の子供姿のまま異世界にやってきた。
悪いことだけするなと言われ育った男。
「それが中村正、それが俺だ!」
こうして、中村正の冒険は幕を開けることをしない……はず。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-10 17:00:00
523449文字
会話率:36%
※大半がAI生成文です。
「ポチョムキン理解」という一種の欠陥が暴露される中での、ChatGPTの一出力例。初めは自分の小文を批評させているが、議論はあらぬ方向へと拡大する。議論の中に格納されている自作や質問文は、当然AI生成文ではない。こ
の生成AIという微妙な道具に対する、自分自身の意見は、最後の方の質問
で奔放に発露されている。ここでやり取りされる様に、AIの使用自体がAIの改良行為とも重なっているのだと仮定すると、かつてない社会的にエキサイティングな面を持った人間の道具であるとも考えられる。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-09 15:25:01
41705文字
会話率:12%
ゲームが趣味の高校生カズがいつものようにVRのFPS《Battle of Duty》で遊んでいると、前触れもなく女性フレンドから「会おうぜ」と誘われます。
「いったいどんな人なんだろう……」
緊張しながら待ち合わせ場所に向かうと、そこ
に待っていたのは不思議の国のアリスの絵本から飛びだしてきたみたいな少女でした。
さらに外国のファッション誌の表紙に載っていそうな美人まで現れます。
二人の正体は人気のVTuber。
二人と一緒に遊ぶ間に、実は配信デビューしていたカズは、一緒にゲーム大会へ出場することになります。
ファックが口癖の元気少女アリサにいたずらされたり、美人で大人なジェシカに優しくからかわれたりして、カズは二人と絆を深めていくのだが……。
ゲーム仲間だから勘違いやすれ違いが発生してしまい、カズはアリサやジェシカといったいどうなってしまうのだろうか。
◆
文庫1.5冊分くらいのボリュームです。
ハッピーエンドで気軽に読めるラブコメです。
連載開始時点で最終話まで書き終わっています。
エタらないので安心して読んでください。
◆
下記作品(小説家になろうとカクヨムに掲載)の、基本コンセプトとキャラ設定を流用した、別バージョンの新作です。
VRゲームやVTuber等の要素を入れて、現代っぽさ増し増しです。
終盤は完全に別物ですし、旧作を読んだ方も、是非、読んでみてください。
『原作』
https://ncode.syosetu.com/n6713gq/
FPSで伍長だから雑魚だと思った? 実は最強クラスです。僕を追放した奴等は後悔しても、もう遅い。あと、リアルで会ったフレンドはメスガキでした。一緒に仲良くゲームします。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-09 12:23:04
182304文字
会話率:32%
女性が冷遇された時代に、自立した女性が活躍するお話です。
14世紀フランスの、実在する城塞都市を舞台にして庶民の生活を描きました。
1310年、地中海に面した南フランスの城塞都市アイガ・モルタス。
若くして都市の一等地に店舗を構
える理髪外科医のエリザベートは、同業者からの嫉妬と嫌がらせに悩まされていた。
ある日、都市の付近で狼が目撃され、都市内に緊張が走った。人々は「異端の教えを崇拝する悪魔憑きは、満月の光を浴びると狼に変身する」と信じており、恐怖が広がっていく。
理髪職人組合は夜警を結成することにし「各店舗は男を一名出すこと」という条件を定める。女一人で店を経営するエリザベートは、夜警に男を参加させなければ組合から除籍処分にすると脅され、困り果てる。そんな時、都市の外から移民希望の少女ヴァンがやってくる。
エリザベートはヴァンを徒弟として雇い、男のフリをして夜警に参加するよう頼んだ。ヴァンは快く引き受けてくれた。
だが、隣人が占星術でヴァンの未来を占うと「壁の崩壊」により「繁栄をもたらす」という結果が出てしまう。さらに後日、ヴァンの出身の村が、何者かに襲撃されて全員殺されていたことが発覚する。
ヴァンは悪魔憑きの仲間だろうか? 都市内部から城壁を壊そうとしているのではないか?
エリザベートはヴァンに対する疑念にさいなまれ、彼女を信じたい気持ちとの間で苦悩する。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-07-28 19:52:43
143231文字
会話率:56%
部屋の中にGがでた。私がゆで卵を作っている真っ只中。ふと玄関を見るとドアの隙間から這い寄る混沌、黒く名状しがたい、いやしたくもない奴が、こっそり顔をのぞかせてきた、と思ったらすぐに急発進。まて、そこには私が普段使っている靴がある。ゆで卵な
んかほっぽり出してすぐ近くにあったアースジェットを取りに駆け出した。すぐに振り返る。奴はまだ移動していない。今しかない!私は右手に伝説のアースジェットを持ち、そろりそろりと近づき、発射した。奴は苦しんでいるようだ。苦しいからか外に出たがるようにドアに向かって走り続けている。噴射し続けながら左手でドアをそっと開けると、ようやく外に出て行ってくれた。ようやく一安心だ。
周りを見ると、白い煙が充満している。どうやら噴射しすぎたようだ。ガスの警報が鳴らないといいな。
奴を打ち倒してからも私の中の警戒心は下がらなかった。そいつはドアを挟んですぐそこにいるかもしれない。しかも奴はドアの隙間から入ってきたんだ。想像をする。暗い部屋、寝ぼけて目で部屋の隅を見ると何やら黒いものが。いやだ、そんなのいやだ。私は今日は徹夜をしてドアを見張ることにする。スマートフォンを見ながらドアを5分おきぐらいに確認する。この緊張感はなかなか来るものがある。そうして1時間が過ぎた頃、私は勇気を出してドアを開けてみることにした。外はすっかり暗く奴が紛れるにはいい暗さだ。しかしそんなことを気にしていてもしょうが無い。左手には明かり用のスマートフォン、右手にはアースジェットの布陣でドアを開ける。いざ尋常に。私は、特殊部隊員さながらの素早さでドアの周辺のチェックを行った。奴はいなかった、私はようやく一安心できた。
私はドアの周辺にとりあえずアースジェットを吹きかけておいて、奴が嫌いな匂いだというレモンの汁もかけておいた。大量に。奴は暗い場所が好きらしいので、家中の電気をつけて寝ることにした。明日も朝早い。寝なくては。私は2時間ごとぐらいに不安で目を覚ましたが眠ることができた。ここ数ヶ月Gを見ていなかったから、この周辺には存在しないものかと思っていたが不用心だった。明日は絶対にG対策のグッズを買いに行こう。
1匹見つけたら30匹いると思え。奴はそう言われているから、この夏の私と奴との攻防はまだ続くだろう。次からは家の中に一歩も踏み入れさせずに、家に結界を張っておこう。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-08 18:28:06
291文字
会話率:0%
人類が宇宙に飛び立ってもう幾分もの時間が過ぎた。あるSFアニメーションによれば、人が宇宙に飛び出すことによって人類は成長し分かり合えるようになるはずだった。
だが現実にはそうはならなかった。
歴史は韻を踏む。
それは、人の愚
かさに再現性があるということだ。
つまり、かつての人類が繰り返してきたように、ドニェルツポリ共和国とその隣国プディーツァ連邦、そして覇権国家たる地球連合との外交的緊張はついに極限に達し、プディーツァ連邦はドニェルツポリ共和国への侵攻を決意した。
戦争である。
とはいえ国境宙域に住む少年、ユーリ・ルヴァンドフスキにとってそんなことは知る由もないことであった。しかし、やってきたその戦争によって、彼の運命は大きく歪められることになる――。
これは、今ある世界に戦争が来る話。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-08 18:00:00
951049文字
会話率:51%
羽田空港のベテラン航空管制官・片山直樹が東京国際空港管制保安部に赴任して一年。順調に見えた日常のなかで、世界的なネットワーク障害、航空機の遅延——新たなトラブルが、再び片山たちを試すように降りかかってくる。
一方、恋愛運に恵まれない内田翔
平はまたしても交際が長続きせず、失恋を繰り返していた。そんな彼を同僚たちは少し遠くから温かく見守っている。常に冷静沈着な篠田恵には、誰にも言わない“密かな楽しみ”があった。それは、彼女のストイックな姿とのギャップを感じさせる、小さな心の拠り所だった。
家庭では、三津谷雄介が妻と5歳の娘との穏やかな日々を過ごしていたが、長野に住む父の病が突然の知らせとして届く。公私ともに大きな転機を迎えた三津谷は、職責との板挟みに葛藤する。
羽田空港では新システム導入を控え、現場には緊張感が漂う中、片山は若手たちの成長を見守りながら、自らも再び“管制官”としての原点と向き合っていく。
空の安全を守る彼らの戦いと、個々が抱える人間ドラマが交錯する、空港シリーズ第二章——
『AIRPORT2 : 東京国際空港管制保安部』。
舞台は再び、混雑と緊張が交差する管制室。今、空と地上をつなぐ者たちの想いが、静かに動き出す。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-08 11:10:00
27519文字
会話率:44%
15年間、大分空港で地方航空管制の最前線を担ってきたベテラン航空管制官・片山直樹は、新たな任務地として日本の空の玄関口・東京国際空港(羽田空港)への異動を命じられる。新天地で待ち受けていたのは、国内屈指の交通量を誇る複雑な空域、そして予測不
能なトラブルの連続だった。
東京空港管制塔で片山を迎えたのは、駆け出しの新人女性管制官・山口真奈美とバディを組み、過酷な現場に挑んでいく。
一見、落ち着いた現場に見えても、空港には常に緊張が走っている。突発的な悪天候、機材トラブル、外国からの緊急ダイバート、さらにはテロを疑われる不審機の接近――さまざまな難題が次々と襲いかかる。
片山は自身の豊富な経験と冷静な判断力で、新たな仲間とともにこれらの危機を乗り越えていくこととなる。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-09 16:27:45
23073文字
会話率:49%
聖女殺害未遂事件の介入者である異能使いを探しに王都から港湾都市に調査チームがやって来た。港湾都市の繊維工場で働くキアラは農村出身のごく普通の田舎娘だ…今は。その繊維工場にやって来た調査チームの若い男は、聞き取り調査の為に呼び出したキアラを
いきなり薙ぎ倒した。王都の人間にとっても、港湾都市の女性労働者など虫けら同然なのか。
異能が判明したキアラを調査チームは王都へ連れて行く。貴重な異能使いとして貴族の養女となるキアラ。だが、責任者の王子とキアラの緊張関係は解けない。そして、聖女殺害未遂事件で明らかにされた人身売買事件の処分を巡って、王国は二分されつつあった。キアラの翼は王国から悪徳を排除出来るのか。
一応、拙作『蝙蝠の翼』の続編ですが、こちらは娯楽作にする予定です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-07 22:52:01
230834文字
会話率:58%