人前で、笑顔を貼り付け十三年。
少しでも失敗を犯したら鞭で打たれ、最近は平手もおまけのようについている。
今はそんな鞭打ちのお時間。何回されても慣れないこの鞭打ちも、表面上美しい笑顔で耐えてみせる。
(何回やっても、慣れないわね……)
ルーリア・コキリ・セロライハラ。侯爵家の次女であるがメイドのような暮らしをしている。否、メイドより酷い暮らしをしている。
ワンピースに近い薄茶の埃まみれのドレス。埃を被った髪。その髪は血のように赤黒く、それが理由で家族に虐げられていると言っても良い。髪と同様、目も赤黒くて、まさに血塗れなのだ。瞳がルビーのようなんて、そんな綺麗なものではない。ルビーと呼ばれるものは透き通っていて、生き生きとした赤色の瞳のことを言うのだ。
ルーリアの瞳はそんな色ではない。
赤にはドス黒い黒色も混ざっていて、今にも死にそうな目をしている。髪も同じだ。埃を被って少しばかり見えないは見えないが、よく見れば直ぐに分かるということで。
そんなルーリアが鞭打ちの時間が過ぎて窓拭きをしている最中、母であるギュアカーラの聞いたことのないほどのご機嫌な声を聞き、ルーリアは怪訝そうに窓から門前を見る。すると、ギュアカーラの隣でメティーチェイアが上品なカーテシーを披露しているではないか。
その前には男性がいる。誰かしら。そう思ったのは少しの間。姉と母の自室があるこの廊下には、来ないのではないだろうか。
そう思い窓拭きを再開し鼻歌を歌っていた時、話し声が聞こえて横を振り返ると、あの三人がこちらへ来ているではないか。
ルーリアはバケツとタオルを置いて曲がり角まで逃げた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-16 15:52:00
91777文字
会話率:43%
会社をリストラされたしがない中年・佐藤浩一(42歳)。ある日、世界中にダンジョンが出現し、人々はスキルに目覚めた。
しかし、佐藤が手に入れたのは、ダンジョン内の「モンスター」「罠」「宝箱」といったオブジェクトの位置を、一日三回だけ自由自在に
『配置換え』できる、戦闘能力ゼロの地味スキルだった。
「こんなもの、何の役にも立たないじゃないか……」
再就職も上手くいかず、やけくそでダンジョンに入った佐藤は、試しにスキルを使ってみる。通路の奥にある【落とし穴の罠】を、襲い来るゴブリンたちの足元へ。危険な罠地帯の奥深くにある【宝箱】を、安全な入り口へ――。
地味だが、使い方次第で「戦わずに勝てる」最強の攻略スキルだと気づいた佐藤。
高ランカーたちが苦戦するギミックを鼻歌交じりで突破し、誰にも発見されなかった隠し宝箱を根こそぎ回収する。
いつしか彼は、その正体を誰にも知られないまま「ダンジョンの神」と呼ばれるようになっていた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-16 08:13:11
39403文字
会話率:22%
午後九時二十三分、定時帰宅。
相川太一(40)はコンビニで買った冷凍パスタを電子レンジにかけながら、鼻歌まじりにテレビの録画を再生した。画面に映るのは、制服のリボンを揺らすアニメの女子高生たち。空想の中では、今日も春が舞っていた。
だが、
現実は違う。
薄暗いワンルーム。洗濯物は干しっぱなし。脱ぎ捨てたスーツが床でくたびれている。
冷凍パスタがチンという音を立て、太一は動いた。淡々と、何の感情もないルーティン。
「……そうだ、日記でも書こうか」
そのとき、ふと脳裏をよぎったのは、桜の香りでも、恋のときめきでもなかった。
ただ、手持ちのノートとキーボードが呼びかけていたのだ。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-16 08:00:00
18974文字
会話率:6%
数多ある魔法の中で「光魔法」が最高でみなそれを敬い、手にしたい者もいた。
魔法はこの世界に無数にある。
最終更新:2025-07-14 11:45:19
115235文字
会話率:58%
ビルの窓から眺める風景。
真正面に見える街路樹の枝は、夏には力強い青々とした葉をつけ、秋には淡い黄色い葉になります。冬は葉の代わりに霜や雪で化粧をして、そして春には、淡いピンクの花びらをつけます。
それは、こんなコンクリートの建物が並
ぶ都会の中でも、四季を感じられ、情緒があります。
東京という土地は、周りの街並も慌ただしく姿を変え、形を変えてとしていくけど、この事務所はコンクリートや配線が剥き出しで、昔の姿のまま、時間が止まっているようにも感じます。
あくまでも、原色の赤いソファを除いてですが。
そう、ここは、アルクィン拝み屋探偵事務所です。
所長と、職員が二人だけの、総本山からすれば小さな小さな祓い屋です。
わたしは窓から外を眺め、彼女に色んなことを教えていきます。
「あれ見て、渡り鳥だよ。あの方向は臨海の方に飛んでいくのね。まだ少し寒いから、夏に成ったら見に行こうね。それより、八重洲口の桜がもうすぐだから、先にそっちを見に行こうね」
そう言うと、彼女は心なしか喜んでいる様子でした。
わたしは鼻歌を交えながら、その窓から、変わりゆく街並みを眺めていました。
そこで足音が聞こえ、わたしは慌てて彼女を消します。
古びれた音を立てて扉があき、所長が戻って来ました。
「おい、今、あれを出していただろ!」
そう怒り声を上げる所長の脇をすり抜け、わたしは逃げていく。
所長は長い黒髪をなびかせながら、追ってきました。
必死に逃げる、わたしの名は、折坂………、うわっ、捕まった!折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-12 02:47:43
49207文字
会話率:27%
間魁人は改造人間である。
非人道的な人体実験の奇跡的な成功例である彼は超人的なスペックを有しているが、それはそれとして初ミッションに失敗した。
一週間寝込んだ魁人に告げられた次なるミッションは、東京で一年間一人暮らしをすることであった。
楽なミッションに鼻歌交じりの魁人だったが、なんやかんやあって当座の資金百万円を瞬く間に溶かすことに成功。資金の穴埋めのため、組織に内緒のアルバイトを始めることになる。
その内容は――特撮ドラマ『スカルフェイス』の主演俳優?
秘密組織のエージェントって、テレビに出ていいもんなの?
※カクヨム様でも掲載しています。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-11 21:53:25
58352文字
会話率:43%
流れ星が大地を焼き払い、異形蠢くダンジョンが現れた世界。そこで手にした職業は、まさかの【足手まとい】!?
「そんな彼女を守る労力は良い訓練になります」
──俺、男なんですけどぉぉぉ!?
幼馴染たちと「トップ冒険者になろうぜ!」なんてノ
リで誓いを立てた俺・橘 慧は、与えられた悪口にしか思えない職業に絶望する。さらには、職業と同時に発現したスキルは【守ってあげたいタ・イ・プ】【絶対無敵なアイドル】【だってお姫様なんだもん】など、意味不明で胡散臭いものばかり。ついでに鍛えても憧れのマッチョにはなれず、なぜか華奢なままお肌がスベスベ美白度アップし続けた原因も判明。
一方、俺の幼馴染たちは外見に似合わない(一部は見た目通り?)ガチの戦闘狂揃い! モンスターに鼻歌交じりにナイフを突き刺し、無表情のまま焼き払うヤバいやつらばかり!
史上最弱(?)の【足手まとい】美少年が、最強(そして最恐)の幼馴染パーティーに無理やり参加させられる!?
クソ職業×戦闘狂幼馴染、ここに爆誕!
ポンコツ美少年とヤバすぎる仲間たちが贈る、勘違いと波乱のダンジョンコメディ、開幕!
※文字数は17000文字程度です折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-30 20:40:00
63565文字
会話率:38%
こんなディストピアでも、生き抜かなきゃいけない。
最終更新:2025-05-17 14:55:06
437文字
会話率:0%
おはように、おはようで返せないオウムは、鼻歌のようなハミングであいづちをうつ。
最終更新:2024-09-19 07:00:00
292文字
会話率:0%
とくに言いたいこともなく、詩を描きました。
最終更新:2024-01-10 07:00:00
381文字
会話率:0%
異世界に転生していることに気づいた元日本人の村娘アデルと、願いを叶えてくれる美しい精霊との、歌を通してはぐくまれる愛と別離と再会の物語。
ハッピーエンドです。
ここは歌が大好きな精霊様がいる世界。
精霊様に歌を捧げ、その歌を気に入って
もらえると願いを叶えてもらうことができる。そういう魔法がある世界だ。
ふと思い出した前世の記憶、その記憶にあった日本の歌を鼻歌で歌ったらめっちゃ精霊様に気に入られてしまった……
日本の歌ならサビだけでも鼻歌でもなんでも良いらしい。
それなら私の願いは叶い放題だ。
日本の歌目当てにまとわりついてくる美貌の精霊様をなんとなく受け入れて、
歌を歌って願いを叶えてもらう日々が、ずっと続くと思っていたのに……
突然の流行り病を消してほしいと願ったことによって訪れた別れ。
それをよしとしなかったアデルは一人、精霊がいるという聖域に向かう。
そこで捧げた歌に現れたのは、まったく別の精霊だった……折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-03 18:01:50
5947文字
会話率:14%
ネオンに濡れる街を歩くひとりの男。彼は主人公ではない。ただ、過去に封じ込めたはずの記憶を呼び覚ますため、静かに歩みを進めている。
その男が口ずさむ鼻歌は、彼自身も忘れかけていた出来事を引き起こす。まだすべてが動き出す前、すべてが無駄に感じる
前、そして運命を選ばなければならなかったあの時のことを。物語は未来から過去へと遡り、荒れた現実の中で抗えない運命に向かっていく。どんな選択が、どんな結末を招くのか。そして、それを目の当たりにする男の心の変化とは…。折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2025-05-01 19:16:24
3416文字
会話率:25%
一瞬だけ潮の香りが強くなり、風は涼しさを帯びて通り去っていく。
俺の瞳に映ったのは。
「ふふん〜……ふんっふふ〜♪……」
「っ……」
ラムネ瓶を片手に鼻歌を歌う、
天使みたいな女の子──。
『ただひたすらに眩しい、
二人の青春恋物語』
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-21 07:40:52
12363文字
会話率:25%
何処かの城の何処かのダンスホールで、私達は向かい合っていた。私は燃えるような赤いドレスを、瑠衣は瑠璃色のタキシードを来て、お辞儀をした。
手を取り合って、足を差し出して、互いに向かい合って、鏡合わせになるように。
注意事項1
起承転結は
ありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
上手い回答が出来ない人間なので、感想欄閉じてます。
これは読者様の問題ではなく、私の問題。
詳しく知りたい方は代表作の『作品と作者の注意点』に書いてあります。
注意事項2
某曲を聴くと、何度も回ってお辞儀をする場面が浮かぶんですよ。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-11 18:14:14
863文字
会話率:16%
「フン、フンフ~ン、フフ~ン……違うな。フフン~フ~ン、いや、うーん……」
朝、男はシャツのボタンを留めながら、鼻歌を繰り返していた。頭の中を漂う旋律の断片を何とか掴み取ろうとしているのだ。それはどこか懐かしくもあり、まったく新しいもの
でもあるような、説明しがたいが、確かに強く惹きつけられる何かがあった。
「フ~ン、フフン~フ~……んー」
何度試しても、しっくりこない。折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2025-04-01 11:00:00
1361文字
会話率:59%
――死にたくない……どうしておれが……。
刑務所の独房の中、男は震えていた。
死刑囚である彼は、逮捕され死刑判決を受けたとき、鼻歌を口ずさんでいた。犯し、奪い、殺し、好き勝手に生きてきたからだ。思い残すことはないとまでは言わないが、
死刑が執行されるのを待つ間、余韻に浸るには十分な思い出がある。
そう思っていた。しかし、時が経つにつれ、体の奥底からじわじわと『死にたくない』という思いが這い上がってきた。それは次第に膨れ上がり、ある日ふと気づいた。これまでの余裕はただの虚勢だったのだと。
折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2025-03-22 11:00:00
2328文字
会話率:39%
朝。囀る鳥の声と風に耳をくすぐられながら少年は自転車を漕ぐ。
イールストリート。出来てそう何年も経っていない、似たような住宅が立ち並ぶその通りは道路もまた綺麗に舗装されており、自転車のタイヤから伝わるその滑らかさに自然と鼻歌うたう。
今、ある家の庭に新聞を投げ込んだタイミングで、その家に住む夫婦の夫がドアを開け、新聞配達員の少年がリンリンと自転車のベルを鳴らす。
遠ざかっていくその背中を見つめ、軒下から出た夫は頭上から降り注ぐ陽射しに目を細めつつ、新聞を拾い上げ、そして顔を顰めた。
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最終更新:2024-04-21 11:00:00
1309文字
会話率:5%
原作の細かい部分全然知らないモブが悪役令嬢代理として転生ヒロインちゃんを自滅させる話。
最終更新:2025-04-01 06:00:00
7151文字
会話率:9%
江戸の春の夜、自由気ままに生きる女性・彩雲は、川沿いを鼻歌まじりに歩いていた。帰路の途中、武家の争いに遭遇するも、関わるつもりはなかった。しかし、運悪く侍たちに見咎められ、命を狙われることに。迫りくる刃をひらりとかわし、秘技「雪霞」で侍を退
けると、囚われていた若侍は闇へと消えていった。まるで何事もなかったかのように、彩雲は家路を急ぐ。夜風に舞う桜の花びらとともに、江戸の物語が静かに幕を開ける——。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-03-25 07:39:24
15683文字
会話率:24%
すらりとした長身にすっきりとした中性めいた美貌、だが髪はぼさぼさ。趣味は散歩と、のらりくらりと暮らしていたが、他の者と一線を引く特技があった。ひとつは異形を見定める目、人の視線と筋肉の動きで相手の考えを読み取る能力、そして世界でも数名のNe
の称号を持つ。それらを駆使し日常に潜む怪奇をパズルを解くかのように、読み解いてします。「えー普通のおにいさんですよ、俺は」他人事の様に鼻歌を歌い、謎を解いていく。
※怪奇現象はあまり怖いものは出さないつもりです。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-01-18 08:03:31
8532文字
会話率:52%
素敵な演奏だ。お礼に一つ秘密を教えよう。君が風呂場で鼻歌を歌う時、家の外で何が起こっているのか。他人の鼻歌で即興の演奏会を行う『鼻歌楽団』、彼らの活動を観察してみよう。
最終更新:2024-11-24 17:51:24
1600文字
会話率:4%
鳥獣人の癖に歌が上手くないと婚約破棄されたフクロウ獣人のロザリア。
だってフクロウだもの。全く鳥獣人の事を何も知らないのだからと憤慨しつつも、やっぱり気にしてしまう。
そんな中、最近人気な鳥獣人のコンサートへ行き、すっかりその歌声にハマって
しまう。
やけに目が合うな~でもステージは明るいし、ここは暗いし、見えるはず無いわ。
お気に入りの曲も出来て、鼻歌も出る。そしてそれは恋の歌で――折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-09-28 10:00:00
9838文字
会話率:20%
あれ……私、もしかして死んじゃったの?
一年間の白い結婚生活は、どうやら不慮の事故で、私の死と共に幕を閉じてしまったらしい。
まだ天国にも地獄にも逝けないみたいだし……暇つぶしに、夫の傍を飛んでみようっと。
……ほら、さっそくニヤニヤし
て、鼻歌まで歌い出しちゃったわ。
私が死んだのがよっぽど嬉しいのね。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-05-26 22:12:03
5906文字
会話率:9%
「なあなあ、これからみんなでカラオケでも行こーぜ」
「「「いいねー!」」」
とある放課後。
今日も陽キャの坪井が、同じく陽キャの連中をカラオケに誘っている。
まったく、なんで陽キャはこんなにカラオケが好きなのだろうか?
「ねえ、音
霧さんも一緒に行こーよ」
――!
坪井が音霧さんのことも誘いやがった。
だが――。
「ごめんなさい、私これから、用事あるから」
「――! そ、そっか」
フッ、ほらな。
やっぱり断られた。
音霧さんは男女ともに魅了する、絶世の美貌を誇っていながらも、誰に対しても常に冷たい態度しか取らないことから、『氷の女王』と呼ばれている孤高の存在。
お前みたいなチャラい男の誘いになんて、乗るわけがないだろう。
さて、と、こうしちゃいられない。
俺も今日は、大事な用事があるんだ。
鞄を手にした俺は、鼻歌交じりに教室を後にした。
「よし」
自転車でわざわざ隣町までやって来た俺は、とあるファンシーな店の前で自転車を停めた。
この店こそが、俺の目的地である、猫耳メイド喫茶の『ニャッポリート』。
俺はニャッポリートの常連なのである。
今日から新しくバイトで入ったという、新人猫耳メイドのプリンちゃんを指名した俺は、どんな娘が来るかワクワクしながら待つ。
すると――。
「ニャッポリート! ご指名ありがとうございますにゃ! 新人メイドの、プリンですにゃ~。にゃにゃにゃにゃ~ん! ………………あ」
「――!!!」
席に現れたプリンちゃんを見て、俺は思わず絶句した。
何とそれは――氷の女王こと、音霧さんその人だったのである――!
なにィイイイイイイ!?!?!?折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-05-17 21:02:15
7843文字
会話率:42%