砂の都・ファリダーンには、満月の夜だけ香を焚く古い下宿がある。かつて栄えた隊商の街角、砂と星が交わるその静かな一角に、未亡人リヤーナはひっそりと暮らしていた。
彼女の夫は十年前、王都の戦争に志願して出て行ったまま、帰ってこなかった。だがリ
ヤーナは信じていた。炎の神に祈り、影の精霊に捧げ物をし、月夜には彼の帰還を夢見て、扉を開けたまま眠る癖がついていた。
ある日、彼女の下宿に一人の若き書記官がやってきた。名はカイム。瞳は砂漠の夜のように深く、声には絹のような柔らかさがあった。リヤーナより十も年下だったが、彼の気遣いや優しい視線に、リヤーナの心は少しずつほどけていった。
それでも、彼女は認めなかった。夫への誓いを破ることはできなかった。いや、破るのが怖かった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-15 20:00:00
4756文字
会話率:35%
花は、人の心を動かす舟。
香は、人の心を映す鏡。
都の外れ、ひっそりと佇む花屋《花しらべ》。
そこでは、ただ花を売るだけではなく、香を焚くことで“記憶”を読み取るという、ひとつの秘術が受け継がれていた。
店を守る少女・いちかは、花に込めら
れた想いを辿る「香花術」の使い手。
花の香から浮かぶ声、想い、過去——。都に暮らす人々の心に寄り添いながら、いちかは今日も香を調える。
そんな折、都に蔓延しつつある“禁じられた香”の気配に気づいた密命の役人・青嵐が《花しらべ》を訪れる。
偶然に見えた出会いは、やがて、ふたりの失われた過去へと繋がっていく。
忘れられた幼き日の約束、そして禁術に使われた幻の花・待雪草。
花と香が巡るその先に、ふたりが思い出すのは——。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-01 16:37:31
3219文字
会話率:19%
時は平安。妖や魔物が多く蔓延るこの日ノ本で二人の異端児が出会った。
転生し、千年以上もの未来の記憶を持って生まれた自称忌み子でフリーの陰陽師の陽光(はるみつ)。
妖狐でありながら人と西洋の悪魔の血が流れている礼羅(ライラ)。
神仏習合さ
れたこの世では日夜穢れや呪いを祓うために潔斎や読経、芥子や護摩を焚く屋敷があったが、それでも祓われることのない魔物が都で現れるようになる。
それはこの時代の日ノ本には存在しないはずの西洋の悪魔だった。
陽光が構えた十字架によって祓われかけた礼羅は自分の実父を、陽光は自分を忌み子にした何者かを探すという約束をし二人は今日も都の悪霊を退散させる。
!注意!
・実在の人物、団体名が出ますが史実と異なる場合があります。
・転生要素は薄いです。
R-15は保険です。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-02-26 19:20:00
318140文字
会話率:48%
「火を焚くと人が寄ってくる」・・・。
人と人が心でつながる話。たった焚き火ひとつで。
最終更新:2025-02-25 23:03:01
2937文字
会話率:17%
世界の北の果てに近い村がある。
その村では初雪が降った次の満月に亡くなったものが星に向かえるよう、夜通しで送り火を焚く。
これはある年、火守の役目を担った少年が触れた送り火についての想いの話。
最終更新:2025-02-25 01:33:26
6022文字
会話率:46%
道具屋を営む彼が「面白いもんを手に入れました」と言って、包みをふたつ取り出した。
包みを開くと、それは香炉とお香だった。香炉は美しい装飾が施されているものの、どこからどう見ても普通の香炉とお香。これのどこが「面白い」ものなのだろう。もしか
したら珍妙な香りがするのかもしれない。
「これは反魂香というもんです。なんでも、焚くとその煙の中に死んだ者の姿が現れるとか。これを焚いたどこぞの国の皇帝が、煙の中に亡くならはった奥さんの姿を見たそうです」
死んだ誰かにまた会うことができるなんて夢がある。死が今生の別れではあっても、永遠の別れではないと、思うことができる。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-08-30 09:00:00
8648文字
会話率:31%
古い港町では、海から帰ってくる霊たちを迎えるために花火で迎え火を焚く。その後は誰もが盆踊りに興じた。漁師やおかみさん、それに子どもたちの声が祭り囃子を盛り上げる。そんな盆の入りに現れるのは此岸と彼岸の狭間か死者たちか、それとも――。※他サイ
トにも掲載
[港町に住む男 × 美しい男 / 怪談風BL]折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-07-16 17:16:59
10511文字
会話率:38%
平凡な25歳、立花依。営業補佐。
恋人の作り方もわからなくなってはや3年。
もう、このままおひとりさまでいいかと思っていたら、あれよあれよと、スパダリ課長に迫られる。
揺れ動きながら、お盆休み。流されるままに付き合っちゃおうかと思っていたと
ころに、不思議なことが起きる。
お盆の始めに迎え火を焚いたら、死んだおばあちゃんがやってきて!?しかも、横に何かイケメンがいるんですけど??もしや、死んだおじいちゃん??
えっ?違う?じゃあ誰?
しかも幽霊って見えるの?えっ?マスコット大の幽霊?可愛すぎませんっ??
ひょんなところから、幽霊と同居を始めることに。
依とほのぼのと過ごすイケメン幽霊。
そんななか幽霊の生前の闇を軽くしてあげたり、自分の恋愛相談をしたり....。
仲良くなり、かけがえのない関係になったふたり。しかし、お盆ももう終わり。
送り火を焚くと、空へ帰らなくてはならない。
来年のお盆に、また会うことを約束して涙する依と幽霊。
そして幽霊と過ごしているうちに、課長のことに折り合いをつけた依は、休み明けに返事をする。
イエスかノーか...
※3話に、際どい表現がありますが、いたしてません。気になる人は、バックよろしくお願いします。
※最後まで書ききってます。1日3話くらい投稿予定。前34話
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-11-09 21:42:55
136117文字
会話率:14%
気に入らないことがあると癇癪を起す我儘姫の専属侍女ライザ。
他の侍女が務まらない中で約一年、仕事にもやりがいを感じ始めたころ姫様に突然結婚話が持ち上がった。隣国のルディ王子はライザ好みの美形だが、エリザベス姫は他に好きな人が居るから結婚など
するものかと大激怒。
ルディ王子とエリザベス姫の顔合わせをするもお互い気が合わないようで、そんな時にルディ王子の弟から怪しいお香をプレゼントされる。
気分が落ち着くお香だと言われるが、エリザベス姫の気分が落ち着くならとお香を焚くも気付けばライザとエリザベス姫と体が入れ替わってしまう。
明日からルディ王子と仲を深めるために隣国へ行かないといけないのにエリザベス姫のフリをして過ごせと言われ困惑するライザ。
もし体が入れ替わっていることがバレてしまえば戦争になるかもしれないと言われてライザは仕方なく絶世の美女エリザベスのフリをして過ごすことを決意する!
エリザベスのフリをして過ごすうちに優しいルディ王子に心惹かれていき……。
エリザベス姫のように暴言を吐くことも物を投げることもできないライザが頑張るお話。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-07-24 17:22:41
100482文字
会話率:39%
条件はそろっているはずなのに、なぜか火がつかない。
あなたにはそのような経験、ありませんか?
最終更新:2023-01-23 21:00:00
2314文字
会話率:4%
たき火おばさん。
それは父の住んでいた地域に、ときどき姿を現し、たき火をしている喪服のおばさんだ。
彼女の焚く火のぬくさは、少し離れた場所にも届く。
寒い日が多い時など、子供の父たちは重宝していたらしいけれど……。
最終更新:2021-12-28 18:00:00
2749文字
会話率:0%
ノストラダムスの滅亡大予言を始め、オカルトブームが隆盛を誇っていた時代。
どうせ滅ぶのなら、とやんちゃをしていた私だが、ある時、家への近道である細道を通っていた。
地元民ならばよく利用するであろうその道は、夕暮れ時の今、人通りが絶えて暗闇
が立ち込めている……。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-11-09 18:06:34
3995文字
会話率:2%
線香花火には、常世の秘密が隠してある
まず、線香花火を焚くと、幽霊が寄ってくる
火花は、彼岸花でできている
火玉は、じーと鳴って、ぽとりと落ちて、迎え火の代わりをする
仏壇の前で、線香花火を焚くと、祖先が喜ぶという
夏の、風物詩
美しい、彼
岸花の羽折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-02-25 09:21:06
558文字
会話率:0%
『本』とは『知識』。
『本』とは『記憶』。
『本』とは『願い』。
あらゆる役割が『本』というものに備わっている。それが力となり経験となる。
だが、それ故に『本』というものは危険視され、厳しく管理される。
八年前、世界に『魔書』というものが
出現し世界は混乱に包まれた。
『魔書』は多くの事件や事故を起こし、あらゆる被害を被った。それを見て困り果てた人間は国際組織を設立。その組織名は『図書議会』。本に関するものすべてを管理する組織であり、その組織には『司書』という取り締まる職業の者がいた。
そしてこれは『国立図書議会』で働く、とある『司書』の視点を描いた物語である。
これで幕は開かれた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-12-05 23:46:20
13261文字
会話率:66%
喪失を紡ぎ続ける人生で唯一、復讐を心の拠り所よりどころとして生き長らえて来た双剣使いの男、ジェイル。
時は、現在より遥はるか未来。
純粋知性同士の、厄災と呼ばれる大きな争いは、世界の大半を焦土に変え、その影響で大きく狂わされた生態系は、オ
ルディウムと呼ばれる怪物どもを生んだ。
文明を大きく後退させられた人類は、新たに発生した亜人類と呼ばれる他種族と手を携たずさえ、オルディウムの脅威に対抗しながら、限られた生活圏で生活している。
主となる時間軸より十五年前。
正体不明の神殿の調査を命じられたジェイルと彼の恋人ラピスは、国王に命じられるまま、封印されていた古代兵器の封印を解いてしまう。
それらは、かつて純粋知性と、それに肩入れした狂科学者達が生み出した、十代前半の少女達をベースに造られた人類の負の感情を燃料に稼働する"祟り神たたりがみ"と呼ばれる殺戮兵器だった。
封印時に大幅な弱体化を施されているにも関わらず、かつて数多の国々を滅ぼした兵器の力は人一人で抗うには前に、なす術すべもなく瀕死の目に遭あわされるジェイル。
そしてラピスは、彼の目の前で───
死んだかに見えたジェイルを生き長らえさせたのは祟り神が一柱、アリア=リリウムワイズ。彼女はある理由で、ジェイルを自らの神子みことし、自らの力を分け与える。
復讐の炎を保つために、その魂をも薪まきとして焚くべ続けるしかないジェイル。
その精神は疲弊に疲弊を重ね、彼の残された人間性も少しずつ焼き尽くしていく。
果たして彼は仇かたきを討うてるのか。
それがもし叶ったところで、彼が人として生きていく道など存在するのか。
鬼を討たんとする者は、それを凌しのぐ鬼となるより他にないものを───
作者が、自分の生きる意味を問い続けるすべての人達に、魂を野晒しのざらしにしながら必死に、真摯しんしに紡つむいだ物語。
もしもこれが、誰の心も震わせることが出来なければ、自決するしかないという覚悟で臨のぞんだ、入魂の一作。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-02-28 23:16:29
100984文字
会話率:35%
玄関で一人迎え火を焚く祖母。いつまでも夕食の支度を続ける母と姉。いないはずの場所から現れた父。
少しずつ風景がずれていくお盆の日に、碧が見たものとは―。
最終更新:2019-09-03 22:08:18
3034文字
会話率:29%
もうすぐ苦手な冬やけど、そのまえの宴がある国、日本。
(他にも出します)
最終更新:2017-10-07 22:58:59
170文字
会話率:0%
安倍祐樹は”いい子”であった。少なくとも、いい子であろうと努めた。それが彼にとっては幸せであるように思われた。本当はどうなんだろう。
幸せは一瞬で終わり、不幸せは継続的に続くらしい。だとすると、幸せはいつから幸せになって、いつから幸せでなく
なるのか。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-08-14 20:44:52
1960文字
会話率:25%
焚き屋さんが来るから、お留守番をお願い、と母から頼まれた少年・環(たまき)。
焚き屋さんという、ありそうでないお仕事と、それを迎えた多感な少年のひとときのお話です。
最終更新:2017-06-21 21:54:56
6825文字
会話率:23%
よく口にする
チャーハンと焼き飯の違いは何か。
消えようとする歴史から、その違いを紐解く。
サラリーマンと歴史研究者として二足のわらじを持つ、私が調べ上げた結果をお伝えしたい。
最終更新:2017-04-26 12:57:07
1714文字
会話率:3%
童話風味に・・・
特に深いストーリーはありませんが
寒い銀世界で火を焚くだけのお話です。
最終更新:2014-01-16 23:12:54
1336文字
会話率:28%
ケントは霧不断が香を焚いているような、そんな森でゼファーという少年と出会う。
最終更新:2011-07-30 23:56:58
33309文字
会話率:51%