深い霧の中、事故に遭った宮部郁が、江間、福地、佐野、菊田、寺下と共に辿り着いた先は、化け物のうろつく異界の森――祖父の故郷だった。
言葉も文明も環境も何もかもが異なるこの場所で、保護という名目のもと、彼ら‟稀人”の争奪戦を始める異世界人
を前に、どこで、誰と、どう生き延びる?
【ケース1:宮部の場合】
Q1.稀人だと――明かす? 隠す? どうやって?
A1.隠す。言葉が使えることを利用して、勘違いするよう仕向ける。
Q2.友達と協調――する? しない?
A2.人を化け物の生贄にして自分たちは逃げるという間柄を、そもそも友達と言わない。
Q3.向こうの知識を利用――する? しない?
A3.利用する。ただし、向こうの知識ではないと見せかける。
Q4.何になる――王様? 神様?
A4.一般人。王様も神様も面倒くさい。
Q5.こっちの‟幼馴染”を――頼る? 頼らない?
A5.頼らない。顔を見たらぶん殴るとわかっている権力者には近づかない。
Q6.向こうに――帰る? 帰らない? 誰と?
A6.帰る。どうしようもなく馬鹿なお人好しと、以前の稀人に育てられた子と。
――騙す相手は、自分を含めたすべて。
※舞台の性質上、残酷/グロ描写があります。※直接的・具体的な描写ではありませんが、登場人物たち置かれた環境や関係性の表現のため、性描写があります。※「カクヨム」様でも投稿中です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-25 21:00:00
883817文字
会話率:44%
その日、主人公は偶然にも鮮やかな動画広告に巡り合った。
そして目がはなせなくなるほどの蒼穹が視界に広がり、聴き惚れるたおやかな女声が耳を撫でるその動画が示すゲームに、どうしようもなく魅せられてしまう。
[想像と深淵とともに歩む、あなた
だけの生きゆく物語]をキャッチフレーズにした、一つの技術の到達点として完全五感体験型をうたう、没入ゲーム【シードリアテイル】。
ありふれた剣と魔法の幻想世界に、五感体験と自由度の高さを刺激のように加えたそのゲームは、主人公の好奇心を強く刺激した。
趣味全開で金髪緑瞳のエルフ美青年としての姿を作成し、ロストシードと名乗りゲームの大地に降り立った彼は、好奇心のおもむくままマイペースなプレイヤーとしてゲームを楽しく遊んでいく。
ノンプレイヤーキャラクターたちとは、本物の人のように豊かな交流を。
精霊たちとは、つついたりつつかれたりと、たわむれながらの交友を。
研究めいた魔法の習得には、予想と驚きと高揚感をともなって。
隠された要素さえ、時には運、時には閃きで見つけていくロストシードは、自身が思っているよりも無自覚に様々な所で先駆者や変わり者となっていく。
これはそんな好奇心旺盛でマイペースなエルフのゲーム体験を綴る、軌跡の遊楽記。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-25 21:00:00
1138849文字
会話率:30%
「気づいたんだね。
……うれしいよ。ずっと、君を待ってた。」
最初にそう言ったのは、
白い服を着た少女だった。
冷たいようで、どこか優しい目をしたその人は、
まるでずっと前から、僕のことを見ていたようだった。
──うっすらと、気づいて
はいた。
この世界は、少しだけおかしい。
誰もが穏やかに暮らし、争いも悲しみもない。
でも、なにかが“整いすぎて”いる気がした。
きれいで、静かで、完璧な日常。
なのに僕だけが、その中に立っていると、
どうしようもなく「ずれて」いる気がした。
みんなが見えていないものが、僕には見えてしまっていた。
それでも、ずっと気づかないふりをしていた。
少女と出会ってから、
世界の輪郭が、少しずつ歪みはじめる。
存在しないはずの場所に現れた扉。
知らないはずの光景に、なぜか覚えがある感覚。
そして僕は、彼らと出会う。
この世界を見つめる「観測者たち」と。
「ここは一度終わった世界だ。
君にしか、この結末を選ぶことはできない」
どうして僕なんだろう。
ただ生きてきただけの僕に、そんな役目があるのか。
でも――
あの日から、心の奥で鳴り続けていた違和感だけは、
たしかに“本物”だった。
これは、生きることを忘れた世界で、
観測者たちに導かれた僕が、
たったひとつの答えを探す物語。
選ばなければ、選ばされる。
だから僕は、選ぶ。
もう一度、この世界を終わらせるかどうかを。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-25 20:30:00
3680文字
会話率:8%
「好き」と伝えた瞬間、すべてがなかったことになる。
国家の不正を暴く天才ハッカー《怪盗エル》の正体は、町のパン屋で静かに暮らす女性・緒方楓。彼女には、“誰かに恋をされた瞬間、世界が巻き戻る”という呪いがかかっていた。
それでも彼女は、失
踪した妹の真相を追うため、力と孤独を引き換えに生きている。
そんな彼女の前に現れたのは、国家公安の捜査官・岬朔弥。
感情を語らず、ただ“見る”男。けれど彼の沈黙は、彼女の静けさを崩していく。
一度目は、彼女が恋をして世界が壊れた。
二度目は、彼に恋されてまた壊れた。
三度目は——恋を避けながら、それでもどうしようもなく、心が触れてしまう。
これは、「言葉にできない想い」が、「言葉にしてはいけない運命」に抗う、
何度やり直しても恋に落ちてしまうふたりの、沈黙と選択のラブストーリー。
10万字規模想定。全40章プロット完成済。
nolaノベルズにも同時に連載しています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-25 06:00:00
17900文字
会話率:42%
その秋の夜。俺は彼女に殺された――。
生まれながらにして宿した殺人衝動に苦悩する少年、夜月琉倭。理性と本能の狭間で揺れる琉倭は愛用の凶器を片手に、夜の街を徘徊する日々を送っていた。連続猟奇殺人事件による刺殺体。自身を戒めるための自傷行為。
衝動を強制的に遮断させるオーバードーズ……。しかし、これらあらゆる手段は問題の先送りでしかなく、積りに積もった衝動の果てにどうしようもなくなった琉倭は、巷を騒がしている連続猟奇殺人鬼の殺害を決意する。
だが、その決意が彼の生活を非日常へと変えさせる。陰と陽。昼と夜。生と死。現世とあの世。何もかも曖昧な境界線に立つ少年が見た非日常の世界とは……。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-14 22:26:14
199041文字
会話率:61%
目が覚めたら異世界でした。そうです、よくある“トラック転生”ってやつです。
でも……何一つ歓迎ムードじゃなかった。
「貴様のスキルは……危険すぎる」
“心の声が勝手に伝わる”というふざけたスキル《オートモノローグ》を理由に、俺は転生3分
で牢屋にぶち込まれた。魔法理論は意味不明、常識もズレまくり、食事は謎汁。元の世界に帰る方法? ないらしい。
そんな俺を助けてくれたのは、金髪碧眼でやたらと厳しい少女・アリシア。
でも彼女もまた、この世界では「異端」とされる能力を隠して生きていた。
「あなたの声を、私はちゃんと“読める”の」
誰にも聞いてもらえなかった声を、初めて受け止めてくれた彼女。
俺たちは、逃亡者として共に旅に出ることになる。
暴かれていく世界の秘密。
「物語は“神語”によって決まっている」という不条理なルール。
その中で、俺たちは“物語の外”にいる存在――「アンテイル」に目をつけられてしまう。
逃げるか、戦うか。
選ばれる側じゃない俺に、進む方向なんてあるのか?
これは、“転生したら地獄でした”な俺と、
“世界を書き換える少女”の、
どうしようもなく不器用で、
それでも確かに繋がった、
ひとつの物語。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-10 19:10:00
62932文字
会話率:58%
【あらすじ】夏のホラー2025 人魚
とあるお屋敷、その庭の池にて。
昼の湿っぽい暑さが残る夜。
主人公が酔い覚ましに池の水に触れる。
そこには誰もいないはずが、水面を揺らす音がした。
よく見ると池の鯉が尾ひれを跳ね上げ、こちらに向かって
きている。
主人公と鯉が向かい合う。
池を泳ぐ鯉に見えた、それは人魚に姿を変える。
驚く主人公だったが、人魚の手を取りしばし見つめあう。
その時感じた、甘美な誘惑に抗えなくなる。
思わず人魚を、自身に引き寄せ、口づけをしてしまう。
ここで初めて主人公は、自身の渇きを自覚する。
自分自身の気持ちを止めらなくなってしまい、快楽に身を任せてしまう。
気絶していた主人公、妹の声に応えて目を覚ます。
既に人魚の姿は無く、全身びしょ濡れになっていた。
妹と共に屋敷へ戻る。
翌日の夕暮れ時、主人公が池のほとりに立っている。
何故そこに立っているのかは本人にもわからない。
ただ、あの人魚ともう一度会いたい、その思いだけで足がこの池に向いた。
鏡のように凪いでいた水面が跳ね上がり、人魚が姿を現す。
主人公に近づき微笑むが、次の瞬間に牙を剥き襲われる。
その時、全てを確信し行動に移す。
時折、どうしようもなく湧いてくる飢え、渇きの感情を満たしたい。
昨日、人魚はそれを満たしてくれた。
思わず主人公は、逆に人魚に喰らいつき、血を飲み干してしまう。
しばらく後、屋敷に大きな鯉を抱えた主人公が戻る。
妹が出迎える。
「あら、兄《あに》さま。何を捕まえてきたの?」
妹が無邪気に問いかける。
「これは人魚だよ。今夜のメインディッシュ」
ニヤリ、と主人公がする。
「そう。それは楽しみね」
ウフフ、と妹が同意した。
その日の夕飯。
煮付けにされた人魚が食卓に並ぶ。
主人公が口にすると、しっかりした歯応えが。
感触を確かめ、ゆっくりと口から出す。
それは人の指の骨だった。
それを見た主人公は何かに納得したように骨を見て、皿に置いた。
おしまい。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-09 01:06:48
3268文字
会話率:17%
ある日、僕は夢を見る。それは見知らぬ少女に喉を切り裂かれるという非日常的なもので、しかしそれは迫りくる未来でもあった。そうと気付いた時にはすでに遅く、その未来は現実のものとなっており——。
そんな僕を救ってくれたのは、魔術師退治の専門家を名
乗る学校の先輩だった。そこから、訳もわからず魔術の世界へと足を踏み入れることとなる。
始まりはつまらない夢だった。けれど歩き出せばもう止まれない。魔術に縁などなかったのだから、魔術の基礎など知らない、そもそも魔力を操れない、もちろん魔術など使えない。自分の意思で制御できない魔眼だけを頼りに、流される状況を前にして進んでいく。
これは現代に生きる魔術師達の、どうしようもなく残酷で荒唐無稽で、愚かに壊し合う物語だ。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-06 22:11:53
874777文字
会話率:43%
自分のことが大嫌いでどうしようもなく嘘つきな私の物語。
自己肯定感と承認欲求。
この2つをテーマに自分の経験をもとにして書いています。(嘘も含まれます。)
のんびり投稿していくので、ぜひ読んでいってくれると嬉しいなぁ!
最終更新:2025-07-06 17:38:39
7175文字
会話率:14%
主人公・天野真は夢を持たない男であった。
しかし、夢を持つことにどうしようもなく焦がれていた。
そんな彼が、夢を持つために、ふたたび立ちあがろうとした。
だが、事故により異世界転生?してしまう。
見知らぬ世界で、果たして夢を見つけられるのか
?!折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-03 10:23:54
28965文字
会話率:47%
彼女とは、恋人じゃなかった。
名前を呼び合い、身体を重ね合っても、関係に名前をつけることはなかった。
大学のクラスメイト──宇和島亜美。
美しくて、どこか影があって、近づけば壊れてしまいそうな女の子。
「都合のいい男」として側にいた俺は
、ある日その距離を踏み越えてしまう。
そして、彼女は消えた。
残されたのは、何もかも遅すぎた現実。
これは、誰にも頼らず、誰も責めず、誰のことも傷つけたくなかった彼女と。
そんな彼女を、本気で愛してしまった俺の話。
思い出すだけで、壊れてしまう。
ありふれていて、どうしようもなく、忘れられない、ただのひとつの恋の話。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-28 22:00:00
3475文字
会話率:19%
侯爵令嬢ティナ・レオーニは、王太子アンジェロ・ミネッティに突然の婚約破棄を通告をされる。
悲しみに沈むティナは、屋上から何者かに突き落とされ、地上にいたアンジェロ殿下に激突した。
目が覚めると自分が王太子と入れ替わっていることが分かり、
そして、体が入れ替わった王太子が自分の代わりに監獄に入れられていることを知る。
周囲は誰も信じてくれず、どうしようもなく困っていたところに現れたのは王太子の親友 チェーザレ・ネスタ。
氷の貴公子と言われた姿とは全然違い彼はとても取り乱していた。そして、中身が入れ変わっていると気がつかず、彼女にティナの救出を手伝ってくれと懇願する。理由を聞くと、「俺はティナのことをずっと前から愛していたんだ」と胸の内を突然激白してきた。
自分の正体を打ち明けることができなかったティナは、戸惑いながらも彼と協力して、自分と中身が入れ替わっているアンジェロ殿下を救い出そうとするが、死刑の期日は刻一刻と迫ってきて……
もちろんハッピーエンドです。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-27 19:00:48
46018文字
会話率:50%
私たちは肩をくっつけてしゃがみ込み、窓にあたる雨音を聴くようになった。
そんな時は二人とも何も話さない。時間など感じない不思議な世界に存在していた。
恋人同士でもない友達でもない。
あやふやな関係なのに、誠を媒体として溶けてしまうほど
に一つになれるのだ。
ラジオから流れるのは知らない音楽。
口ずさんでしまうのはなぜだろう。
雨の日に恋人になる。それでもいいかもしれない。
きっと雨が恋しくなる。
毎日が雨ならいいのにと思う。
さよならなんて浮かばないほど、どうしようもなく恋人になるのだ───。
愛を語らう相手ではないのに……。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-27 10:49:14
86412文字
会話率:47%
目覚めたら、私は“神の声”を聞く聖女になっていた。
けれどそれは、昼の私の話。
夜になると、もう一人の人格──“悪役令嬢リシェル”が目を覚まし、闇の魔法と毒舌で貴族社会をざまぁして回っている。
つまり私は今、聖女と悪女の二重人格ヒロイン
として異世界で暮らしているわけだ。
厄介なのは、昼と夜で“好みの男”まで違うこと。
◆昼の聖女ユリシアは、第一公爵家の跡取り・カイ・エルグランドに恋をした。
女好きで冷酷、いつも誰かを弄んでいるような危険な貴族。
最低の相手だと分かってる……なのに、心はどうしようもなく惹かれてしまう。
◆夜の悪役令嬢リシェルは、第二王子・ユリウス・セレスタを好きになった。
誠実で不器用、理想を語る真面目な王子様。
彼だけは、誰も信じない私の“心”をまっすぐに見てくれる。
でも問題は――
この世界では、一人の女が二人の男と恋に落ちることはできないということ。
王国の未来を託される聖女として、
裏社会を陰で支配する悪役令嬢として、
それぞれの恋と使命、そして“自分自身”との戦いに私は巻き込まれていく。
二つの人格、二つの恋、二人の運命。
誰かを選べば、誰かを傷つける。
誰かを守れば、誰かが崩れる。
これは“昼と夜”を生き分けていた私が、
やがて“ひとりの自分”として、
“たった一人の愛”を選びとるまでの物語。
恋して、泣いて、ざまぁして──
その先に待っていた“本当の私”と“未来”とは――!?
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-24 14:37:32
112103文字
会話率:37%
この世界にはさまざまな生き物が存在している。
それは神であったり僕を含めた人間だったり、そうでないものだったり
それが僕はどうしようもなく──
宵海 洸を基点とした今後出す物語のサイドストーリーです。
最終更新:2025-06-23 02:57:44
12054文字
会話率:39%
東京を逃げて、千葉の安食に辿り着いたのは、ただ腹が痛かったからだった。
我孫子で乗り換えた成田線の電車にはトイレがなく、目的地に着く前にどうしようもなくなって降りた駅は無人で、夕暮れの匂いがどこか冷たかった。
それからの数ヶ月。
人生が少
しだけ不自然な方向に滑り出すとは、そのときの僕には知る由もなかった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-22 16:24:38
7088文字
会話率:13%
どうしようもなく子宮に還りたくなることが時々ある。
最終更新:2025-06-21 01:29:03
321文字
会話率:0%
どこかに存在する世界で、どうしようもなく生きていく人物のお話。
静かに物語を味わってくださる方へ。
どうか、ゆっくりと、彼女の呼吸を感じ取っていただければ幸いです。
最終更新:2025-06-17 21:21:11
28409文字
会話率:47%
50歳を迎えた迫田光希は、近所のスーパーでパート勤務を続けながら、日々更年期の症状に悩まされている。
ホットフラッシュ、感情の浮き沈み、理由もなく募るイライラ。
自分でもコントロールできない心と体に、苛立ち、自己嫌悪に陥る日々——。
けれ
ど、それを「理解して」とうまく言えないまま、夫との関係はぎくしゃくしていく。
真面目で優しいけれど口の悪い夫・浩二は、疲れて帰宅したときにぶつけられる光希の怒りに、「病気じゃないだろ」とつい言ってしまう。
そんな中、レジ仲間の先輩たちと交わすささやかな会話が、光希の心を少しずつ変えていく。
「私もそうだったよ」「最近、同じようなことが…」——
自分だけがつらいわけじゃなかった。そのことに気づけただけで、ふっと肩の力が抜けた。
たまに帰ってくる息子は、母に優しく寄り添い、父にもさりげない言葉をかけてくれる。
すれ違っていた夫婦も、不器用ながら少しずつ歩み寄っていく。
完全に晴れる日は来ないかもしれない。
それでも、揺れながら、笑ったり泣いたり、誰かとつながりながら、今日も生きていく——。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-09 19:00:00
16305文字
会話率:30%
同盟は狩猟から帰還した一団に湧き立つ外野の者達の奥から無事を願っていた事を体一杯に抱き付く身内なのだろう、その少女を足蹴にするそぶりを汚れた靴底で見せるが、両者は互いを笑う一団の同胞に恥ずかしく感じながらもその場の平凡な日常のある場所に身を
許す。
その隅に…2席の椅子にカビを含んだ臭いがする布を掛け、その下で背を横たえ汚れた木の床で寝ている。髪はここの泥やハコノ葉が引っ付き、少女らしい体格を感じない程に着込み、汚れが目立つ着こまれた制服。
私はそういう物しか持ち得ない、誇れないだろう仕事を職場で待ち続ける…。
少女が横になった身体から顔をその一団の方に寄越し、どうしようもなく聞こえていたそれに乾いた唇でそう独りの不甲斐なさを吐いた。
もし、本物でなくても無事を祈ってくれる人がいるならば、本物でなくても大きなパンにハコノ葉のペーストを少し塗って焼いたのを沢山食べれたら。本物でなくても、生きたいと願えたのならば。
少女は帰り道、そう考えながら一つの涙を流す。
それに答えるかの様に一箇所の叢が揺れ、少女はそれを掻き分ける。そこにはオオカミの特徴を持つ亜人の少女に転生した男子高校生の穀持に出会い…。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-09 06:04:51
571文字
会話率:13%