※縦書きでの読書をおすすめします。
死にたいわけじゃない。けれど、生きたいとも思えなかった。
病とは、名前を与えられて、はじめてその輪郭が見えてくるものだと、わたしは悟った。
それなら、この気持ちにも、きっと名前があるのだろう――
けれど、それが何なのか、誰にも話せないまま、大人になってしまった。
窓辺に置いたモンステラの葉が、朝の光に濡れていた。雫が一滴、葉の先から、音もなく落ちた。
ただ、それが綺麗だったから――それだけの理由で、わたしは今日も生きている。
ーーーーーーー
希死念慮を抱えながらも、それを静かに受け入れ、淡々と生きてきた「梢」は、ある日、荒れた海岸を彷徨う中で、危うい行動をとっていたところを、思わぬ誤解を招き、青年「歩」に声をかけられる。歩は初対面の彼女を案じ、安全な場所へと連れて帰る。数日間、歩の家に身を寄せることになった梢は、これまで誰にも語れなかった死生観や孤独について、少しずつ言葉にしていく。彼女の中には、他者との関係や生きる意味をめぐる、深い問いが息づいていた。
一方の歩は、人懐っこく、誰とでも自然に接することができる青年だった。けれど、ただ一人、弟との関係だけはうまく築けず、そのことに心の奥で悩みを抱えていた。そんな彼もまた、梢との出会いを通して、言葉にできなかった思いと静かに向き合い始める。
物語は、梢と歩の出会いを起点に、それぞれが抱える孤独や痛み、そして他者と触れ合うなかでのささやかな変化を描いていく。静かに交差していくふたつの心は、互いの不安や哀しみを少しずつ癒しながら、やがて新しい明日への輪郭を描き始める。語りかけるような一言が、誰かの心にそっと残り続けるように。この物語が、そんなささやかな願いとともに綴られていくことを願って。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-24 00:18:05
69008文字
会話率:29%
都内某駅は突如として起きた謎の局所的地殻変動によって異様な姿に変貌し、ダンジョンと化してしまった。
高次元との接触で生まれたそのダンジョンは既存の物理法則が歪み、
中に充満する不可視の”瘴気”は、適合しない人間にとって致命的なものとなる上
、
異形の化け物が跋扈する危険に満ちた世界だったが、同時に新たなエネルギー、鉱物資源をもたらすフロンティアだということも判明した。
数年後、日本は適合者を公務員としてダンジョンに派遣し、探索と採掘を進めるようになっていた。
そんな中、適合レベルとしては最低ランクの作業員「阿内 翔(あない しょう)」は採掘作業中に発見した深層まで届く縦穴に誤って転落、命を落としてしまう。
だが、今際の刹那、翔の意識に語りかけてくる”声”があった・・・折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-22 06:10:00
31302文字
会話率:13%
赤羽の喧騒の中で異変は静かに始まっていた。
異臭が街に広がると、人々は次々と倒れ、救急車のサイレンが鳴り響く。
異臭騒ぎの中で意識を失った長瀬良治は、気づけば病院の一室にいた。だが、そこはただの病室ではなかった。異常な静寂、微かに聞こえる囁
き、不自然に揺らぐ影——まるで現実が少しずつ侵食されているかのようだった。
同じ被害者たちも次々と異常を訴え、やがて「それ」が現れる。
声なき存在は長瀬に語りかける。「選べ」と。
果たして、彼が目にしたものは幻覚なのか、それともこの世界の境界が崩れ始めた証なのか——
消えた被害者、歪む空間、囁きの正体。そして、向こう側に続く扉はもう開かれている。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-08 12:00:00
15954文字
会話率:16%
アストリアは、空に浮かぶ森と草原の村だった。風が生まれる谷、星が降る丘。人々は空に語りかけ、風に名を呼ばれることで大人になった。
トレインもまた、いつか己の名を、空に刻むことを夢見ていた。
ギルド試験“風裂祭”は、ただの力比べではない。
天空の流れを読み、漂う島々を渡り、失われた言葉を拾い集める、古き誓いの儀式。
スカイタウンに集う若き挑戦者たちにとって、それは「風と契約する」ための初めての“空の航海”だった。
村の長老ダリオンは、かつて“空を渡る者”として名を馳せた伝説のスカイランナーだった。
老いてなお鋭いその眼差しは、トレインに多くを教えた。
風の呼び方、空の罠の見抜き方、そして、何よりも「耳をすませること」。
「風は声を持っている。だが、聞こうとしなければ決して語らない。
空に愛されたければ、まず自分が、空を愛せ」
その言葉を胸に、トレインは何度も村の外れの断崖へ足を運んだ。
夜ごとに吹き抜ける高空の風に、名もなき星のきらめきに、彼は小さな誓いを立て続けた。
だが、世界は静かに、確実に、崩れ始めていた。
帝国ヨルムンガンド──氷の王座に君臨するガーランドと、オシリスの神核を掲げるその軍勢は、既に四つの大陸を掌握し、神の庭に血の色を滲ませていた。
自由の地ヴェントゥスもまた、例外ではなかった。
帝国の飛行艦隊が空の霧を裂き、漂流島の上空に影を落とし始めたのだ。
大陸中枢の浮遊都市群では、目に見えぬ「占領」の兆しが静かに進行していた。
それでも、アストリアの村人たちは信じていた。
風が、まだ彼らを守ってくれることを。
空は、誰のものでもないということを。
ある日、断崖の上に佇むトレインのもとへ、吹きすさぶ風に乗って奇妙なささやきが届いた。
「──忘れられた時間が、風の中に眠っている」
それは、すべての始まりだった。
風裂祭のために旅立とうとするトレインの前に、
名もなき死者たちの声が、風とともに蘇りはじめる。
そして彼は、まだ知らなかった。
自らが拾い上げる一片の“言葉”が、
やがて十二の大陸すべてを巻き込み、世界そのものの運命を紡ぐ糸となることを。
──これは、忘れられた記憶を拾い、
まだ見ぬ未来を切り開く者たちの、物語である。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-06 21:19:09
57781文字
会話率:15%
▼説明
自作の男性向けシチュエーションボイスの台本です。
女性が男性に語りかける音声の台本になります。
本作は『pixiv』『note』『カクヨム』にも重複投稿しています。
▼利用規約
ご自由にお使いください。
Youtube、Twit
ter、ツイキャスなど、どちらのサイトで使って頂いても大丈夫です。
台本としての使用はご自由に使って頂いて大丈夫ですが、テキストのみの無断転載はご遠慮ください。
(動画内に字幕として表示するのはOK)
台本作者名の表記は必須ではありませんが、動画の概要欄などに表記して頂けるとうれしいです。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-06 16:33:41
104600文字
会話率:1%
▼説明
自作の女性向けシチュエーションボイスの台本です。
男性が女性に語りかける音声の台本になります。
本作は『pixiv』『note』『カクヨム』にも重複投稿しています。
▼利用規約
ご自由にお使いください。
Youtube、Twitt
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台本としての使用はご自由に使って頂いて大丈夫ですが、テキストのみの無断転載はご遠慮ください。
(動画内に字幕として表示するのはOK)
台本作者名の表記は必須ではありませんが、動画の概要欄などに表記して頂けるとうれしいです。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-03-13 09:28:00
13665文字
会話率:2%
人生の危機にこちらに語りかけてくる謎の石に遭遇した青年ーー十六夜双葉。一か八か、その石に運命を委ねた先にあったのは魔法に満ちた異世界だった。魔力も魔法も持ちえないフタバがその世界で出会ったのは空賊として追われる謎の美少女ユーリ。自分が何故異
世界に転生したのかを探るため、少女のいる空賊、空の蛇(ヨルムンガンド)のメンバーとして加わるがその空賊団は世界から狙われるお尋ね者の集団だった!?
ひょんなことから世界と少女を救うために奮闘することになった魔法を持たない双葉の世界を股にかける空賊ファンタジー!折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-05 20:12:10
55317文字
会話率:43%
これは、ある青年が、婚約者をキッカケに、耐えるだけだったのを止めた話。 / ペデュール王国では【青】が高貴な色として愛されている。ジェイコブが嫡男として生を受けたエルウィズ伯爵家は「シャーリーブルー」という新しい青の染料を作り出したことで財
を成した家だ。そんなジェイコブには、婚約者がいる。伯爵家にとって最重要な存在である「シャーリーブルー」の生産を安定させるために結ばれた、政略的な関係の婚約者。名は、ローゼマリー。隣国ジュラエル王国の伯爵令嬢だ。住む国が違う事もあり、二人のやりとりは手紙だけだった。婚約を結んで少ししたある時、両国を行き来していた人間から「ローゼマリー嬢はブサイク」という話がジェイコブの耳に入る。その話はあまり広めないようにと通達を出したものの、ペデュール王国の社交界ではいつの間にか「ローゼマリーはブサイク」という話が広まってしまう。その噂を否定するための材料――絵姿――を手に入れる事も出来ず、ジェイコブは噂が風化するのを耐えるしかなかった。次第に、ジェイコブ自身も「ああ婚約者が(ブサイクな)令息」と語りかけられるようになった。そんな中、ついにローゼマリーが嫁ぐ為にペデュール王国にやってくる日がやってきて……。 / 話の設定上、ブサイクという単語が凄い飛び交います。 / とてもとても軽いざまぁがありますが、本当にちょびっとやり返す程度です。 / 完結済み、各話順次投稿します折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-05 18:00:00
33785文字
会話率:28%
「頼む!最強スキルきてくれ!」
ダンジョンのある世界。LV10になると、与えられるスキル因子……そこで冒険者としての人生が決まると言われている。人より冒険者の才能がなく、なのに借金2億を抱えていた男子高校生の俺は、人生の一発逆転を夢見て、そ
れにすがるしかなかった。
そこで与えられたのは……
「世界でとびっきり1番の美少女声」
だった。
終わった……。元々才能なんかないのに、こんな戦闘にも役に立たないこんなスキルじゃあ、ダンジョン攻略なんて夢のまた夢。しかも、男の俺にこんなものあって、どうしろと!?しかも自分じゃ声の変化わからないし!
そんな途方にくれた俺に、義妹が語りかける
「お兄ちゃん!その声、最高すぎる!世界取れる!Vtuberやろうよ!」
「はあ?なんだそれ?」
「知らないの?じゃあ教えてあげる!」
これが、ネットでは新星の美少女Vtuberとして、異常な速度でファンを作りながら、V界隈を駆け上がっていく伝説の始まりになるとは、俺は知るよしもなかった
もちろん、美少女として知名度があがってくので、知りたくもなかった(迫真)
俺は男です
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-04 08:30:00
61802文字
会話率:51%
高校生の凪花は、友達と別れて一人静かに帰宅する途中、桜並木の中でひときわ目を引く古びた桜の木に出会う。その木は不思議な雰囲気を纏い、長い年月を感じさせる存在感を放っていた。幼い頃、亡くなった祖母が語った「桜の木には人の想いが宿る」という言葉
が脳裏によみがえり、凪花はその木に引き寄せられる。
木の根元には、雨上がりの柔らかな土から顔を覗かせる古びた箱があった。興味を引かれた凪花はその箱を取り出し、錆びついたふたを慎重に開けると、一冊の古い日記が姿を現す。表紙には「楓」と記されており、その名前に胸が高鳴る凪花は、日記を手に取る。
日記のページをめくると、そこには時を超えて語りかけるような美しい言葉が綴られていた。「桜の木は、僕の記憶の証人だ。いつかこの言葉が誰かに届くことを願っている。」その言葉が、亡き祖母との記憶と重なり合い、凪花の心に温かな感覚を広げる。
日記を通じて広がる新たな物語は、凪花の過去と現在、そして未来を結び付ける鍵となる。桜の木と楓の日記が、凪花の人生に新たな希望を与え、彼女を未知の旅へと誘う——。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-02 00:31:17
14108文字
会話率:21%
2085年、突如として現れた異型の怪物『キマイラ』によって、人類は存亡の危機に直面した。
絶望の中、救いの手を差し伸べたのは、テンプル聖教会という宗教組織だった。
彼らはお伽噺に登場する騎士のように、キマイラを打ち倒し、人々に希望をもた
らした。教会は人類守護機構『聖郭騎士団』を設立し、信者たちは教会の庇護の下、平和な日々を享受することとなった。
2098年、聖郭騎士団はユーラシア大陸全土を守る巨大組織へと成長し、旧日本の極東エリアに設置された教会でシスターとして仕えるアーシャリアは、平穏な日々を送っていた。
彼女は幼少期から教会で育てられ、信仰心が強く、他者を助けることに喜びを感じていた。しかし、彼女は時折見る悪夢に悩まされていた。その夢の中で、彼女は自らの内に眠る怪物とその葛藤を感じ取っていた。
ある日、些細な出来事がきっかけで、アーシャリアの平穏は崩れ去る。
アーシャリアの体を借りた彼女は心の内に語りかける。
「私はエクリティア。かつて神を信奉し、裏切られ、そして神に弓引いた怪物だ。」
エクリティアの記憶の断片から教会の裏を知ることになったアーシャリアは、教会との決別を決定させる。
アーシャリアは、残酷な真実と自信が人ではなくなることへの葛藤を抱えながら、それでも真実を求めて進む。
彼女の選択が、平和な世界を脅かす新たな危機を招くのか、それとも人類の希望となるのか。
※ この作品はカクヨム様でも掲載しています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-01 23:36:16
60734文字
会話率:15%
雨が降りしきる日本の住宅街でひっそりと暮らす魔女、槙野。彼女は過去の凄惨な性暴力の記憶に深く傷つきながらも、結婚を間近に控えた恋人との穏やかな日々を送っていた。しかし、結婚式前日、突如として拉致され、見知らぬ倉庫で終わりのない悪夢のような監
禁生活を送ることになる。
絶望の淵で、槙野の中で抑え込まれていた強大な魔力が覚醒する。それは世界の理さえも捻じ曲げるほどの力だった。解放された魔力は倉庫を破壊し、彼女の周囲の世界を一変させてしまう。
意識を取り戻した槙野が見たのは、歪んだ景色と感情を持たない人形たちが蠢く異質な世界だった。自身もまた人形となった彼女は、人間だった頃の記憶と憎しみを抱えながら、共食いが蔓延る世界を彷徨う。
そんな中、槙野は共食いを拒む小さな人形たちと出会い、微かな絆を育む。しかし、小さな人形が他の人形に捕食される光景を目の当たりにした時、彼女の中で再び怒りが爆発する。「こんな世界は間違っている」。
人形の体ではかつての力は発揮できないながらも、槙野は残された魔力と人間の感情を武器に、この歪んだ世界を変えようと立ち上がる。小さな人形たちに希望を語りかけるうちに、無機質だった人形たちの心に希望の光が灯り始める。互いを思いやる心は徐々に広がり、世界は少しずつ変化していく。
そしてついに、槙野の中に温かい感情が溢れた時、世界は眩い光に包まれる。人形たちは元の人の姿を取り戻し、槙野は愛する恋人と再会を果たす。悪夢のような出来事を乗り越え、希望と愛の力で世界は再び温かい日常を取り戻すのだった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-29 02:19:11
3578文字
会話率:9%
前世では人気ラジオパーソナリティだった主人公が、公爵令嬢として異世界に転生。
エレイン・フォン・ロルファートは昼間は完璧な公爵令嬢として振る舞いながら、夜になると「レディ・ミッドナイト」と名乗り、秘密のラジオ放送を行っていた。
文
字を送る電信魔法が発達した世界でありながら、音声を遠くに届ける文化はまだ存在せず、彼女は古代の魔道具と魔法水晶を組み合わせた独自の方法でラジオ番組を配信。
美しい音楽と共に、異世界の知恵を交えた独自の視点でリスナーの悩みに寄り添う「レディ・ミッドナイトの秘密の部屋」は、偶然その放送を聴いた人々から次第に評判を呼び始める。
貴族社会のしがらみに縛られない自由な声で語りかける彼女の放送は、身分や立場を超えて様々な人々の心を掴む。そして、その正体が公爵令嬢だということは誰も知らない。
放送の人気が高まるにつれ、正体がバレる危険性も増していく中、エレインは二重生活を続けられるのか? 彼女の放送が異世界にもたらす変化とは――
前世の知識と現世の立場を持つ主人公が紡ぐ物語。
※完結まで執筆済です折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-25 18:10:00
55408文字
会話率:53%
彼女がこの世を去った日、父の時間も止まった。
部屋に残された日記、未完成の歌、そして伝えられなかった想い。
それらは、ただの記憶として消えていくはずだった――あの日までは。
ふとしたきっかけで“あの声”が、もう一度、響き始める。
まるで彼
女がそっと語りかけてくるように。
それは幻か、奇跡か、それとも…ずっと胸の奥にあった願いなのか。
伝えられなかった愛と、残された歌が導く、
静かな再会と、心の再生の物語。
折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2025-04-25 10:51:22
8091文字
会話率:24%
誰もがスキルを1つ持っている世界。シャラズ王国。‥そんな中、のどかな農村フレシア村では、スライム一体を倒すのにも苦戦するダイスケという男が居た。彼は他の勇者からは笑い物にされている。彼はスキルを持ってないどころか、基本ステータスも弱い。だ
が、勇気を振り絞って初心者ダンジョンへ来たダイスケだったが入ろうとした瞬間、突如脳内に「スキル発動条件を満たしていません。発動条件、ダンジョンボスを1回討伐」と機械音声が語りかけてきた。自分にはスキルが無いと思っていたダイスケはそのスキルを発動するために、条件であるボスを討伐するため初心者ダンジョンへと挑む‥
衝撃スキルでの成り上がり劇!折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-17 11:30:00
23067文字
会話率:32%
……ねぇ、聞こえる?
誰かが、朝起きて、
誰とも話さずに電車に乗って、
会社に行って、
また夜になる。
その繰り返しに、
「違和感」って、ある?
心が動いてないことに、
気づいてないふりして、
毎日を生きる人がいる。
でもね、
そ
れでも、ふとした音とか、風とか、
記憶の奥に触れる瞬間があって。
そのとき、
もうひとりの「自分」が、
静かに語りかけてくるんだよ。
「思い出して」って。
忘れていたはずの幸せ。
感じていたはずの感覚。
名前もないけど、たしかにあったもの。
これはね、
声にならなかった想いと、
もう一度向き合う、
そんな静かな物語。
だいじょうぶ。
わたしは、ここにいるから。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-13 12:16:38
3597文字
会話率:4%
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛の予定です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品はアルファポリスでも公開します。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-07 21:00:00
40554文字
会話率:29%
「そなたとの婚約を、今この場で破棄する!」
王妃陛下主催の夜会の会場にて、王子は婚約してわずか3ヶ月の婚約者に婚約破棄を通告した。
理由は『婚約者たる王子に対して無視を続け愚弄した』こと。
それに対して婚約者である公爵家令嬢は冷静に
反論するも、王子にその『言葉』は全く届かない。
それもそのはず。令嬢は王子の思いもよらぬ方法で語りかけ続けていたのだから━━━。
◆例によって思いつきでサクッと書いたため詳細な設定はありません。主人公以外の固有名詞も出ません。
比較的ありがちなすれ違いの物語。ただし、ちょっと他作品では見ない切り口の作品になっています。
◆特に問題提起する意図はありませんが、普段あまり関わりのない人には関心が非常に希薄になりがちな問題がテーマになっています。男女問わず読んで頂き向き合って頂ければと思います。
◆話の都合上、差別的な表現がありR15指定しております。人によってはかなり不快に感じるかと思いますので、ご注意願います。
なお作者およびこの作品には差別を助長する意図はございませんし、それを容認するつもりもありません。
◆無知と無理解がゆえにやらかしてしまう事は、比較的誰にでも起こり得る事だと思います。他人事ではなく、私(作者)も皆さん(読者)も気をつけましょうね、という教訓めいたお話です。
とはいえ押し付ける気はありません。あくまでも個々人がどう考えどう動くか、それ次第でしかないと思います。
◆異世界かつ婚約破棄ものなので一応ジャンルは恋愛で。違和感あればご指摘下さい。
◆この話も例によってアルファポリスでも公開しています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-06-16 20:00:00
5366文字
会話率:46%
正義というものが理解できず、ヒーローに興味を持てない高校生・藤崎。クラスメイトの篠宮はヒーローアニメに夢中で、藤崎に熱く語りかけるが、彼にはその魅力がわからなかった。
そんなある日、帰り道で篠宮の前にトラックが突っ込んでくる。藤崎は咄嗟に
篠宮を突き飛ばし、自らが犠牲となる。
意識が途絶えたはずの藤崎が目を覚ますと、そこは真っ白な世界だった。目の前には緑の髪と黄色い瞳を持つ少年・リトルが現れ、藤崎に語りかける。果たして、これは死後の世界なのか? それとも新たな運命の始まりなのか?
正義を信じない少年が迎える新たな物語が、今ここから始まる──。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-06 23:04:30
14799文字
会話率:32%
男の部屋に長い髪の毛が一本。そいつは語りかけてきて。
最終更新:2025-04-06 22:01:55
1158文字
会話率:43%
君は今、“誰か”に読まれている。
それに気づくのは、もう少し先の話だ。
ある日ふと目にした、名もなき文章。
穏やかで優しい語りかけと、どこか懐かしい記憶の断片。
ただ読み進めているだけのはずなのに──
君は少しずつ、“誰かの目線”に取り込
まれていく。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-02 00:25:06
7928文字
会話率:1%
40歳、就職氷河期世代。
非正規雇用を転々とし、ついには老いた母の介護で働くことすらできなくなった俺――葉山義久。
父は災害で早くに他界。支援の網からも外れた母子家庭は、財布に十円すら残らない極貧生活へと落ちていった。
「お願い……わたし
を、殺して」
アルツハイマーを患った母の言葉は、悲痛の極みだった。
その願いを叶えた俺は、自責と絶望の果て、自らも命を絶つ。
だが――その瞬間、あの古びたお稲荷さんの祠が、青白い光と共に語りかけてきた。
「見とったぞ。ようがんばったな。ひとつ、来世をやろう」
気づけば俺は、代々総理大臣を輩出する名家の御曹司、葉山悠真として転生していた。
金も、地位も、未来も約束された“上級国民”。
使用人も教育も最高レベル。だが、そこに“貧困”も“痛み”もなかった。
幼い頃から前世の記憶を持ったまま育つ中、俺はこの社会の異常なまでの格差に気づく。
下級国民は存在しないことにされ、上級国民だけの「檻のような理想郷」が築かれていた。
でも――俺は知っている。泥だらけでも、必死で生きる子どもたちの存在を。
「今度こそ、誰かの“生きたい”を守れる社会を作る」
幼い俺は、AI〈chatGPT〉と手を組み、匿名で教育・医療・福祉支援の仕組みを構築し始める。
それはやがて、少年企業家としての伝説となり、政界への足がかりとなっていく――。
「おにぎりすら買えなかった俺が、総理大臣になって、この国を変える」
これは、ただの成り上がりではない。
絶望の果てに生まれ変わった男が、もう一度この世界を信じるために歩む物語である。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-03-30 19:00:00
7456文字
会話率:23%