アリエの実の両親が殺されたのはアリエが一歳のときだ。育ての養父母が殺されたのはつい二週間前だった。チェロック村は村そのものがアリエひとりを殺すために全滅させられた。いっしょに育ったキリがアリエの身がわりに殺された。キリは親友とも兄弟とも言
える男だった。キリがかえ玉になったおかげでアリエはひとり生きのびた。
もっとも。それはあとで知った事実だ。当夜は大混乱だった。ミッドナイト皇国の黒の暗殺隊が四方からチェロック村に殺到した。月のない深夜を狙ってだ。
アリエとキリは同い年だった。顔立ちも背かっこうもよく似ていた。
襲撃がはじまったときアリエはキリの父ニコラス・ニジンの手で土に埋められた。頭をなぐられてだ。死んだらどうするんだ? 気絶する瞬間アリエの頭に浮かんだ言葉はそれだった。結果としてアリエは生き残った。だが撲殺されてもよかったのだろう。死ぬのがその夜のさだめだったはずだ。生死の境をさまよう仮死状態だったから生き残った。そんな思いが強い。
気がついたときアリエは土の中で窒息しかかっていた。あわてて這い出すと村は廃墟になっていた。おびただしい血と焼け焦げ。見知った人々の死体。徹底的に破壊された家々。
たったひとり首から上のない死体がキリだった。自分とおなじ体格をした少年の首なし死体。それを見たときアリエはすべてをさとった。キリがアリエの身がわりとして殺されたと。十五年前にほろぼされたセントラル王国の王子アリキエル・セントラルとして。
アリエは死体を前に泣いた。養父母。顔見知りの村人たち。幼い子どもたち。身体中に矢が刺さり刀傷や槍傷だらけの死体ばかりだ。特にひどいのはキリの父でありアリエの養父であるニコラス・ニジンの死体だった。同一の剣によるすさまじい数の刀傷がきざまれていた。傷は深く浅く無数と言えるほどの手数で養父をさいなんでいた。養父のニコラス・ニジンは格闘拳の達人だ。そのニコラス・ニジンを斬った者もただ者ではないはずだった。
アリエはひとりずつの前で手をあわせた。涙がいちいち落ちた。
村人全員の遺体を埋めおえてアリエは確認した。生き残ったのは自分ひとりだと。全滅させられる原因であるアリエだけが残された。
おれが十五年前に死んでいれば。そうアリエは歯をかみしめた。
次にこぶしをかためた。ゆるせないと。
アリエは復讐を誓って旅立った。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-10-26 19:09:58
137925文字
会話率:44%
顔に刀傷があり人前に出る時は猫のかぶりものをかぶっている女の子リリアンと、腕は立つけれど、それ以外は色々残念ないかついおっさん戦士リカルドは、お互い相思相愛なのに気がついていない。
薬草園のスローライフとあんまり進展しないゆるゆるの恋
愛がメインのお話です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-08-27 01:33:53
274631文字
会話率:34%
旦那様は身長2メートル越えのゴリマッチョ。眼光鋭く、額から頬には刀傷が残る超強面。泣く子も黙るトレーディア王国騎士団の騎士団長だ。
一方、聖女の能力を持つ奥様は、小柄で華奢。ふわふわとした砂糖菓子みたいなとっても可愛い女の子(※見た目に反し
て中身はけっこう行動的)。
そして奥様には皆に内緒の秘密があって…?
そんな凸凹夫婦がおくる、離婚の申し出から始まる分かりやすい溺愛のお話。
ふたりが本物の夫婦になるまでのまさに出来レースです*^^*♪
ムーンライトノベルズ掲載作の大人描写を抑えたものです折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-05-04 19:23:44
39985文字
会話率:37%
江戸、浅草にて――妻を亡くしたやもめ浪人の親信(ちかのぶ)が長屋に戻ると、刀傷を負って逃げ込んできた若侍が倒れていた。放り出すわけにもいかず、手当てをする。気がついた若侍は、名を幸之進(ゆきのしん)といい、眉目秀麗ではあるものの、侍と呼んで
よいものかというほどには侍らしからぬ男だった。傷が治ったのなら出て行けばいいものを、居心地が良いと言っては居座る。厄介な男は、親信の子供たちを手懐け、周りを引っかき回し、そして何故だか妙に馴染んでは長屋暮らしを満喫するのであった。
※カクヨム様にも同時掲載中。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-12-04 17:00:00
268120文字
会話率:35%
ずっと昔の、小さな国の貧しい村が物語の舞台。少年ソラは、両親と二人の弟、一人の妹の家の長男。村はかつて繁栄していた。ソラが生まれる数年前の暴風雨による川の決壊で壊滅していた。
今、村の為に男達は、遠い町まで行商に出る。
留守中の畑を耕し、家
畜の世話をする母親とソラ達兄弟。
ある日、男達が不在の村は盗賊に襲われる。その時、村に戻って来た父達も返り討ちにあう。
ソラは妹を抱いて逃げる。そして力尽き気を失った。目覚めた時妹は死んでいた。
村に帰ると若い盗賊に拉致される。盗賊の首領は、額に十文字の刀傷のある男だった。
獲物を求めて出かける盗賊達。隠れ家に残る盗賊の一人とソラは共に過ごす。
盗賊はソラに不思議な力を感じ、自分の命を賭けてソラを逃がす。戻った首領は、その経緯を透視しその盗賊を処刑する。ソラは東に向かって走り続ける。
国軍配下の少年達にソラは又しても拉致され野営地に連れて行く。
隣国軍が身近に迫る。そして国軍は壊滅した。
星空の下、屍の中でソラは気を取り戻した。今度こそ東の森に向かって走り出す。
森の奥に辿りついた。ソラは獲物を求め森を走りまわる。
ある日、森の中で恐ろしい声を聞く。盗賊の首領の声の思念だ。
暗黒勢力の首領は、ソラが光の勢力を従える存在であることを知っていた。ソラがそれを自覚する前に殺してしまおうとしていた。
逃げ戻ったソラの魂は肉体を離れた。
ソラの魂の前にいつか見た少女が現れ言う。「十年森に留まり、約束を思い出す為の生活を送れ。そして正しい力を持て」と。
ソラはやがて木々や動物と会話をし、星の声さえも聞くことも出来るようになった。
ある日、黙想するソラに、ソラ自身である光の玉が現れ語りかける。「千年王国のために戦え」と。
目覚めたソラに二頭の狼が訪れ、戦いが来たことを告げる。森を出たソラを天の使い達が舞い降り囲む。
やがて邪悪な勢力を従える盗賊の首領との戦いが始まった。首領はソラの刃に振り払われる。
ソラは戦いに打克った。しかし敗れ去った暗黒の勢力は息絶えることなく、ソラを狙い続けると告げられる。これからも戦いは終わることはないとソラは知る。
天の使いたちは帰った。そして二頭の狼は、死んだソラの二人の弟の姿に戻り別れを告げた。
微笑むソラは懐かしい村に向かって帰って行く。そこには父親が待っている。美しい娘となったソラの許嫁と共に。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-10-28 00:00:00
82777文字
会話率:9%
強大な妖が跋扈する時代。人々が決起し、英雄を主力に反撃の狼煙を上げる。英雄は敗れてしまう寸前、自身を身代わりに一人の少年を助ける。時は決戦の30年後、妖を人類の抵抗も虚しく領土を次々と失う中で、人類は能力に優れた子を数カ所に分け、そこで妖討
滅のための修行を行なっていた。決戦の地から遠く離れた「南都」と呼ばれる南都修行所。かつての英雄と同じ壮年となった少年は、医者として、また父として忙しい日々を送っていた。その子供が今、修行所への入所を迎えようとしていた。
魔法はありませんが、結界や術などがあります。
レベル、スキル、転生、チート、ハーレムはありません。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-05-21 20:47:39
1323文字
会話率:25%
ある日突然婚約者を従姉に奪われ、婚約破棄されたリデル・ドリモアは、悲しみが癒える間もなく実家の借金のカタにフリードリヒ・ウェラー侯爵に嫁ぐことになった。
彼は軍人で王家の覚えもよく誉れ高い人物であるが、その一方で戦争にしか興味がない戦闘狂と
噂れる。冷たい眼差しに顔に刀傷をもつ氷の侯爵フリードリヒのもとに戦々恐々として嫁ぐが、夫の愛は期待できないものの予想以上の快適な暮らしが待っていて!?
新婚まもなく夫は戦場へ行き、リデルの領主代行生活が始まる。
最初は毎日更新、ストックがなくなれば不定期更新
☆苦手な方はご注意ください☆
「君を愛せない系」です。最初主人公はドアマット。ヒーロー癖あり折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-03-22 07:00:00
99314文字
会話率:44%
痛みも感じない生きかたは、ロックンロールじゃない。
痛みを愛してこその、ロックンロール。
最終更新:2022-02-03 00:00:00
532文字
会話率:0%
太兵が死んだ――。知らせを受けて向った勢田川のほとりには、衣も纏わぬ太兵の骸がうち捨てられていた。民人にとって、穢人は犬猫と同じ。無残な刀傷も露わに、驚愕に目を見開いた姿は、庄助の哀しみを煽った。
自らを責め、哀しみにくれる庄助に、素間は珍
しく労りの態度を示す。
太兵は勘違いで殺された――。素間は謎の言葉を残したまま、野辺送りの場から姿を消した。深夜の御師邸に忍び込み、件の仲間の様子を確かめようと腰を上げた庄助は、朝熊岳の小坊主の元へ行けという素間からのメッセージを受ける。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-05-18 16:14:07
5706文字
会話率:23%
『参場 あらすじ』
吉右衛門と弁慶、霞と三人で、霞を現世の巫女へと変えた黒幕、馬場頼嗣の屋敷に忍び込む。情報を得るために。そこにいたのは、霞が知っている馬場頼嗣ではなく別人で……
『弐場 あらすじ』
源義経が囚われている寺が消滅した。この
世の力とは思えない膨大なエネルギーを受け、何も残っていない状態で。そんな時、靜華が謎の少女をおんぶして屋敷に戻ってくる。
少女はその寺で、巫女の残滓の力を使い現世の巫女として作り変えられた少女だった。
『壱場 あらすじ』
前編、【竜の一族 降天の巫女編】 からおよそ半年後、
ようやく暖かくなった春の日に吉右衛門は顔に刀傷のある鎌田政光に仕事の依頼を受ける。
依頼内容は、鎌田の主人の奪還。
その、奪還作戦の相棒として吉右衛門につけられた男は、以前に静華に絡んだ弁慶。
弁慶は、静華の戒め通り、正業に就くためにいくつかの職を転々としていたらしいが、今は鎌田の主人の郎党になっていた。
捕らわれた主人の名は、源九郎義経。
弁慶とともに主人が捕らわれている山腹の寺に偵察に行くと、突然、篠笛の音とともに雷撃を食らう。あきらかに降天の巫女の力。静華は巫女の力を失ったと言っていたが……別な誰かと言うのか?幸いにも竜の加護で難を逃れた二人だが……
EP2 竜の一族 偽りの残滓編
全八場、中編読みきりシリーズ第二弾開始。
毎日10時過ぎ更新折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-03-27 10:24:45
60642文字
会話率:53%
真央国を震撼させた「第二王子刀傷事件」。この事件の背景には、第二王子と二人の婚約者、そして彼らを取り巻く人々の様々な思いが織り交ざっていた。
同シリーズ「他人事だと思ったら」に出てくる乙女ゲームの主要人物達の心情と過去を、それぞれの視
点で語るオムニバスストーリー。
※ヨシュアやヒィナ達、「他人事だと思ったら」の主要人物達も登場させる予定あります。
◆2018年1月1日、side:ヒロイン〈学園編〉を編集・再投稿いたしました。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-05-26 18:00:00
50397文字
会話率:27%
第二王子が引き起こした刀傷沙汰から数日後。事後処理に追われるヨシュアの元に、事件当事者の一人となった妹・ヒィナが訪れる。彼女の口から語られる南星国での生活はヨシュアの心をかき乱すが、それらは全て、妹のとある「お願い」によって吹き飛んでいっ
てしまうのだった――。
「他人事だと思ったら」シリーズ第二弾。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-03-19 00:00:00
14588文字
会話率:42%
世は幕末。ある晩、町娘のお香の家の前で一人の若い侍が倒れていた。お香とその両親は彼を熱心に手当てしたが刀傷を負った侍は目覚めると何も覚えていなかった。
最終更新:2017-03-10 22:37:26
6215文字
会話率:49%
北町奉行である父と花魁の母との間に生まれた人形師、朱王(すおう)と傀儡廻し、海華(みはな)の兄妹。養母の虐待から命からがら逃げ延び、上方へ向かった二人が江戸へ舞い戻った時、異母兄は亡き父と同じ北町奉行となっていた。
因果の元に生まれ落
ちた兄妹を襲う数々の事件、亡霊となってなお、二人を責め苛む養母、朱王の背に刻まれた刀傷は何を物語るのか。
モバスペBOOKで連載していた作品の加筆・修正版となります。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2015-12-16 22:37:37
1127548文字
会話率:34%
身体つきは普通ながら、不思議なほど腕力の強い主人公レイン。
優しい心を持ち絵の才能があり、兄レインを心から慕う妹メル。
砂沙漠の一角に、駱駝や羊を飼いながら両親とともに仲良く暮らしていたが、父の不在を盗賊に襲われ、レインとメルの目の前で
母は犯されながら無惨に殺された。
激昂したレインは手近にあった斧で盗賊たちを薙ぎ倒す。
片目をつぶされ背中に大きな刀傷を負いながらも、妹を連れて逃げ出すレイン。
高熱にうなされながら、レインは、自分の持って生まれた力で、ただ1人の妹を守ることを誓う。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2014-09-21 15:00:50
6310文字
会話率:18%
(あらすじ) 一九九五年に西暦時代が終了後。再生暦という新時代がはじまった。その土地には巨大企業。神童産業があった。彼らは神童(しんどう)と呼ばれる超能力者を利用して社会を支配していた。
神崎月矢(かんざきつきや)は十八歳の少年だった。
月矢は神童産業で陰陽線(いんようせん)という人体強化パーツをうめこむ手術を受ける。
月矢は人間をこえる速さで銃を撃ち、敵の弾をかわす能力を持つ、超人的なガンマンとなった。月矢はある旅人の手帳を手に入れたことで今の街を捨てて、ユートピアを探す決意をする。
月矢の街ではバスによって街から街をめぐる組織。夢想鉄道(むそうてつどう)が、トラベラーを募集していた。
月矢は愛銃コルト・ライトニングを手に夢想鉄道に入る。
月矢のパートナーになったのは十七歳の少女。無傷儚(むきずはかな)。無傷は顔に大きな刀傷をもつ美少女とはいえない少女で、過去を語らない正体不明の人物だった。
旅の途中。立ち寄った街で月矢は運命調き律師(うんめいちょうりつし)と名乗る謎の男と出会う。
「人生もサイコロみたいに、運で決定される部分があると思わないか?
確率や偶然で決まってしまうような、人の力ではどうにもならない何かが、あると思わないか?」
男は予言じみた警告を月矢にした。警告は無傷の秘められた過去と、月矢に定められた宿命的な戦いを暗示していた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2014-01-23 16:54:27
137164文字
会話率:33%