「わかっている、許されることじゃない」
彼は寂しそうに、ぽつりと呟いた。
恐らく、俺がここにいることには気づいているのだろう。気づいていながら俺に向けた、言葉。
「私の愛しい血縁。あの子の幸せを誰より願っていたのに・・・自分の感情のため
に、そんなことのために今・・・あの子の望まぬ殺戮をさせようとしている。私は最低だ」
珍しく俯いている彼の表情は見えない。わずかに揺れる肩と吐息が、彼のやるせなさを教えてくれる。
「幼い頃から傍にいてくれた貴方に怯え、それなのにどこかで嘘だと言う自分がいる。そんな迷いのために、あの子たちを、どこに送ろうとしている?貴方のために、一人のために、あの子たちの命を・・・!」
全身を震わせて怒りに耐える。
俺は、ここにいないほうがいいんだろうか?
「生きて帰ってこられるかどうかわからない。私が貴方を殺していれば…あの子たちは生きていられた。それなのに私は、何をしている!?」
そう言うと、ばっと上を向いて空を睨み付ける。
「貴方が反逆したら、貴方だけではなく・・・あの子たちまで失ってしまう。私はこの手で、大切な者たちを殺そうとしている・・・!誰か・・・!」
叫びは虚空に消え、無力な人間が一人、残る。
「・・・私を殺してくれ」
物陰に立っていた俺は、そっとそこを離れた。
一人残された彼は、まだ不安定な10代の人間。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-05-15 19:00:00
66575文字
会話率:61%
赤い瞳が揺れる。
いつになったらこの茶番は終わるのかと。
貴方のために、愛されるために、努力したのに。その結果がこれか、と鼻で笑う。
「元第一王子妃、ローズを処刑する。」
後ろ手を鎖で繋がれピタリと首に刃をあてがわれる。
「っはは、あははは
っ!!」
狂ったように笑う。心の底から笑ったのは何年ぶりだろうか。
青い瞳の獣人が驚いたように目を見開く。
黒の瞳の男は凛としてこちらを見ている。
民衆は殺せ殺せと喚いている。
雑音の中その声は私の耳元ではっきりと聞こえた。
深紅の瞳の悪魔が囁く。
『次はもっと上手くやってね。』と。
深呼吸をし、答える。
「もちろん。だって私は‥」
『悪役』令嬢ですもの。
鮮血が舞う。舞台が赤に染まっていく。
そう、これからが彼女の舞台なのだ。
物語は常にハッピーエンドで終わる。まぁ誰だって物語を読むときくらいは幸せな気持ちになりたいだろう。しかし、そんな物語に必要な役が悪役というものだ。
これがいないと物語はハッピーエンドへと話が進まない。悪役こそが唯一幸せを運ぶ者なのだ。だから、私は決めた。
真実を知り、決意したのだ。
魔力で溢れた世界のこの美しい物語の悪役。
そう。私は完璧な悪役になると。
後に誰かが言う。
「あの子は僕の可愛い愛し子さ。悪役なんてあの子には似合わないけどね、僕は彼女のためならなんだってするよ。」
と深紅の瞳の少年。
「あの人はなんと言うか、手のつけようがございません。」
と死んだ目で言うメイド。
「アイツを怒らせたく、ない。」
と耳を倒してばつが悪そうに言う獣人。
「さすがはローズだ。」
と嬉しそうに語る銀髪の男。
「‥加減を知らない人だ。」
と黒い瞳を細め楽しそうに笑う男。
これは愛されることを知らない、死に戻り『悪役』令嬢が作り上げる物語。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-05-04 20:58:22
45913文字
会話率:41%
「祟り神をぶった斬れる刀を打ってくれ」
その日、刀鍛治の羽川蜜華にそんな無茶を言ったのは幼馴染みにして侍の男だった。
救世の巫女として人類を守るために生贄にされそうになっている女の子を守る。そのために討伐は絶対に不可能だから封じ続け
るしかない神に挑む。そう即答できるのが羽川蜜華の幼馴染みだった。
ここで引き止めても幼馴染みの馬鹿は構わず神に挑む。そこに勝ち目があろうがなんだろうが関係なく、己の信念に従って。
だったら彼の生存確率を少しでも上げるためには羽川蜜華が神殺しができるほどの刀を打つしかないのだ。
……そうやって幼馴染みに振り回されて無理難題にも程があると頭を抱えるのが羽川蜜華の日常だった。
それでも彼女は無理難題に挑む。初恋の男の夢を守るために。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-04-04 12:22:00
13718文字
会話率:41%
わたしの余命はあと半年。
貴方のために出来ることをしてわたしは死んでいきたい。
ただそれだけ。
愛する婚約者には好きな人がいる。二人のためにわたしは悪女になりこの世を去ろうと思います。
◆病名がハッキリと出てしまいます。辛いと思わ
れる方は読まないことをお勧めします
◆悲しい切ない話です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-09-18 05:00:00
26139文字
会話率:33%
「お世話になりました。 お元気でお過ごしください」
華麗な淑女の礼カーテシーをして、去っていく女性。
何故、母上はこんなことを言うのか?
全ての謎は、10年前に遡るのだ。
最終更新:2023-08-24 23:39:44
14579文字
会話率:15%
医学、薬学を愛する男爵令嬢アウロラは、婚約者のルークの為、薬と医療用品の開発に勤しむ日々。
そしてルークが王都の王立学園に入学してから遅れること2年後。アウロラも学園に入学する事に。入学前に王都で再会したルークから、学園では髪型や振る舞いを
目立たず、地味に過ごして欲しいと何故か懇願され····折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-08-21 07:35:09
385778文字
会話率:43%
僕は妻を愛している。
きっと妻も僕を愛してくれている。
妻の元同期が亡くなった。
どうしたら妻は元気を取り戻してくれるのだろうか。
妻も僕がどうしたら元気を出せるのか考えてくれている。
お互いがお互いを思うほどズレていく。
歪で理解さ
れない二人の話。
※話の進行と時系列がバラバラです折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-08-21 00:09:11
7367文字
会話率:16%
少女は呟く。
「また駄目だった」
もう何度目だろうか。
助けてあげなきゃいけないのにいつも助けられない。
次はどんな手を使ってでも助ける。
だって貴方は私を助けてくれたから。
最終更新:2023-03-16 22:32:47
668文字
会話率:20%
狼と聖女の神話が残る王国の、最後の聖女の物語。
狼騎士と称えられるルーディウスに、突然婚約破棄を告げられ、惨めに打ち捨てられたアミナ。それでもアミナは、隣国との戦争に出かけたルーディウスのために、聖女としてひたすらに皆の無事を祈る。だが戦況
は不利に傾き、国の命令に背き祈りをおろそかにしたと疑われたあみなは、投獄されてしまう。祈りの間から離されてしまっては、もう国に祈りを届けることはできない。……では、せめてあの人が無事でありますように、と唯の娘として祈ることを選んだアミナは、自身の生命まで祈りに込めるのだった。冷酷な王子オルヴェルトがその身を組み敷いた時にも、最後の時まで祈りはただ、あの人のために。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-11-14 23:36:20
185774文字
会話率:26%
ライラはハロルドに恋心を抱いていた。けれども、ハロルドを愛する故に恋心を消して騎士として仕えていた。ある日、ハロルドが溺愛する妹姫が隣国の王と駆け落ちしたと知らされる。激怒したハロルドはライラを引き連れて妹姫を奪還しようとするが…。妹姫を奪
還する過程で浮き彫りになるライラの悲壮な決意とライラとハロルドの恋模様を描いた作品。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-10-01 18:02:16
15229文字
会話率:72%
この物語の主人公は貴方です。
貴方のために私が文字を紡ぎましょう。
ご覧になるのは日常でしょうか?
それとも非日常でしょうか?
この物語は貴方になんの変化も感想も与えません。
そして
この物語は貴方に沢山の変化と感想を与えるでしょ
う。
いってらっしゃい。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-07-12 13:36:16
1478文字
会話率:14%
筋トレの経験なしの私が肉エッセイ書きます!
へ?舐めている?
なんなら試しにクリックしてみて下さい。
ふふ……私の発想に驚かせられるはずですよ。
とにかく見てくださいね?
貴方のためになりますように。
最終更新:2022-02-09 10:00:00
2684文字
会話率:14%
この世界が小説の世界だと気づいたのは、5歳の頃だった。
その日、二つ年上の兄と水遊びをしていて、足を滑らせ溺れた。
その拍子に前世の記憶が凄まじい勢いで頭に入ってきた。
前世の私は東雲菜知という名の、極道だった。
父親の後を継ぎ、東雲組の
頭として奮闘していたところ、組同士の抗争に巻き込まれ32年の生涯を終えた。
そしてここは、その当時読んでいた小説「愛は貴方のために~カナリヤが望む愛のカタチ~」の世界らしい。
組の頭が恋愛小説を読んでるなんてバレないよう、コソコソ隠れて読んだものだ。
この小説の中のミレーナは、とんだ悪役令嬢で学園に入学すると、皆に好かれているヒロインのカナリヤを妬み、とことん虐め、傷ものにさせようと刺客を送り込むなど、非道の限りを尽くし断罪され死刑にされる。
その悪役令嬢、ミレーナ・セルヴィロが今の私だ。
──カタギの人間に手を出しちゃ、いけないねぇ。
昔の記憶が戻った以上、原作のようにはさせない。
原作を無理やり変えるんだ、もしかしたらヒロインがハッピーエンドにならないかもしれない。
それでも、私は悪役令嬢から足を洗う。
アルファポリスでも連載してます。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-12-03 18:00:00
60756文字
会話率:43%
心の病気になった静浦彩希の元に来た西龍謙治
幼馴染の2人は一緒に同棲することになる。
心の病気と戦いを支えてくれる謙治の事を次第に幼馴染以上の感情が芽生えてくる彩希。
そんな2人の約半年の物語
(※この物語は作者の完全なフィクションです。
間違った知識やおかしな点がある場合はコメントにて指摘お願いします。)
前垢が入れなくなったのでこちらで連載します折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-04-10 12:00:00
7858文字
会話率:24%
猫好きの人ならわかっていただける!
最終更新:2021-01-31 08:00:00
1002文字
会話率:0%
相原拓斗には幼馴染がいた。
その子は幼い頃からアイドルを目指し、今はトップアイドルに届こうとしている天沢希美という女の子だ。
彼女にとってアイドル人生すら賭けたクリスマスライブに招待され、貴方のために曲を歌うと告げられる。
それはきっと、喜
ぶべきことなのだろう。僕もずっと、彼女のことが好きだったから
だけど、僕は―――
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-12-24 00:00:00
17109文字
会話率:26%
貴方のためにできること続編
最終更新:2020-11-03 07:18:43
7553文字
会話率:42%
あなたのためにできること。
最終更新:2020-11-03 07:12:11
1018文字
会話率:9%
路地裏の短編シリーズ。
少し疲れた貴方のために。
最終更新:2020-07-09 22:21:44
1119文字
会話率:0%
ご主人を守ります。
ご主人を救います。
貴方のために戦います。
3つの目標はすべて途絶えた。それは前世忠義を果たしていたご主人エリーゼが死んだと聞いたから。
しかし、エリーゼには孫がいた。忠犬はエリーゼの孫と、反旗を翻すために世界と戦う。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-08-17 13:12:27
4253文字
会話率:59%
ファンタジーが好き? SFが好き?
ラブコメが好き? ホラーが好き?
泣ける話が好き? 笑える話が好き?
ハッピーエンドが好き? ビターエンドが好き?
一途な純愛が好き? 乱れたハーレムが好き?
そんな欲張りな貴方のために、全部
ここにあります。
第一部《魂萌え雀》……短編連作。人外ハーレムオムニバス。
第二部《雲呑み兎》……オムニバス長編。親子三代にわたる、物怪と関わる数奇な運命の物語。
各話の簡単なあらすじは、題目表に記載してございます。
第二部から読み始めても差し支えはありません。
※今作はweb漫画と小説の投稿サイト「新都社」にて同名で以前掲載していたものに、改稿を加えた作品です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-04-29 21:33:54
177418文字
会話率:37%