1986年の夏。田舎の高校に通う僕は、退屈な日常を送っていた。部活に明け暮れてなんとなく過ぎる毎日。そんな中、突然現れたのは、学校一の不良、天城アケミ。最初はただの噂でしかなかった彼女だったが、出会った瞬間から僕は何かが変わった気がした。だ
が、彼女は僕の手の届かない存在だと思っていた。しかも、どうやら先輩との関係も微妙で――。どうしようもなく引き寄せられる僕と、謎めいた彼女との関係は、思いもよらぬ展開を迎えることに…。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-25 00:31:37
3913文字
会話率:30%
高ノ宮中学校に通う一年生、村上慎也。成績はほぼ平均、特別何かが飛び抜けてすごいというわけでもないめんどくさがり屋な性格、それが彼である。そんなある日、慎也は学校生活二学期初日に自分の名前を呼ぶ声が聞こえてくるという不思議な体験をする。そして
その日の夜、慎也はその日あった出来事を気にかけながらも眠りにつく。すると、再び誰かに呼ばれた気がした慎也は目を覚ますが、慎也が目を覚ましたのは、壁も天井もない真っ白な空間だった。
この作品はすべて俺の、一度でもいいからこういう体験したいなー、っと妄想した物語です。なのでキモイとか思っても全然構いませんよ。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-24 23:41:33
632012文字
会話率:65%
恋人からの言葉は、いつの間にか凶器になっていた。
誰よりも優しかったはずの彼女は、いつから俺を支配するようになったのだろう。
ある日。作成中だった文化祭のポスターを破られた瞬間、俺の中の何かが音を立てて崩れた。
逃げるように飛び出した先
で再会したのは、幼い頃に離れ離れになった幼馴染・詩音だった。
「ウチ、来る?」
――たった一言。それだけで救われた気がした。
これはモラハラ彼女に心を削られた高校生が、懐かしい優しさに再び触れていく物語だ。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-24 20:00:00
13384文字
会話率:49%
幼なじみの笑顔が消えた夏。過去の記憶は失ったまま、それでも彼女を救いたいという想いだけは心に残っていた。時間を戻せるという神社で、僕は“記憶”を差し出し、夏をやり直す。これは、君の笑顔を取り戻すために僕が選んだ物語──バック・トゥ・ザ・君の
笑顔。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-24 18:00:00
22934文字
会話率:52%
耳を塞いでいたのは、世界か、君自身か――
大学2年、軽音サークルに所属する八坂奏(やさか かなで)は、どこか浮世離れした“元”吹奏楽少年。今はギターボーカルとして、サークルでのライブや配信活動を淡々とこなしながら、音楽と距離を置くように
生きていた。
そんなある日、大学構内で東雲陽葵(しののめ ひまり)の姿を見かける。彼女は高校時代の吹奏楽部の同期で、当時から圧倒的なホルンの才能を持ちながらも、高圧的で近寄りがたい存在だった。
大学に入り、偶然同じキャンパスで再会した二人。距離を縮めることなどないと思っていた彼女との日々が、少しずつ変わり始める。しかし突然、陽葵は姿を消した。
サークルの練習にも、授業にも現れない。
噂を追って辿り着いた先には、壊れかけた家庭と、音を失いつつある少女の姿があった――。
「音がなくても、君となら、奏でられる気がした」
これは、耳に届かない音を、心に響かせるための、長い長いラブストーリー。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-24 18:00:00
4458文字
会話率:27%
妖精と人の間に生まれた子供。
妹はきっとそういう存在だ。
不思議な色合いに光る髪の毛とか、僅かな綻びも無く整った容姿だとか。人の世界に馴染めない存在感は子供から見ても異質で――。
なんとなく、彼女の居場所はこの世界の何処にもないよう
な気がした。
そんな思いからはや数年。
妹は立派なニートになりました。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-24 16:28:45
543150文字
会話率:51%
……長い眠りから覚めた気がした俺が見たのは、見慣れない石造りの天井と、心配そうに俺をのぞき込んでいる綺麗なお姉さん。
そして小さくなってしまった子供の体と、二つの記憶。
一つは日本で冴えないアラフォーサラリーマンをやっていたもので
、もう一つはアムルサール帝国の26代皇帝、アムルサール26世。11歳のもの。
幼い皇帝の記憶によると熱病に罹って死んでしまったらしく、そこに俺の魂が入って生き返ったらしい。
――大国の皇帝とか人生勝ち確なのではと舞い上がったのも束の間、すぐに様子がおかしい事に気付く。
皇帝の死に際だったというのに、殺風景な部屋には付き添いが一人だけ。医者も大臣もいない。そんな事ってあるのだろうか?
不審に思って情報を集めた俺は、間もなく知ってしまう。
この国は宰相によって牛耳られており、皇帝はただのお飾り。宰相の意に添わなければ簡単に挿げ替えられてしまい、その数はこの40年で21人。皇帝の平均寿命は15歳という、まさに使い捨ての存在である事を。
――勝ち確人生のはずが一転、命の危機に瀕した俺はなんとか生き延びる方法を。
できれば王宮から多少の資産と、美人なお姉さんを連れて逃げる方法を探す事を決意する。
この物語はそんな打算に満ちた俺が、恩人の少女と幼い皇帝の記憶に残っていた望みを叶えるために。平凡な人生経験と読書好きだった知識を活かして国を取り戻し、恋した女の子と一生を添い遂げる。そんな純愛帝国再建記……。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-24 10:50:00
609013文字
会話率:19%
⿻*.·┈┈┈┈┈┈┈┈┈⿻*.·
──『私の人生は、まるで壊れた映写機みたい。いつだってフィルムが早送りで、内容なんてちっともわからないうちに、あっという間に終わってしまうんだ』
私は眠り続ける。世界においてけぼりにされながら。
私
は眠り続ける。決して現実ではない夢の中で、憧れた青春を彷徨いながら。
「僕の人生だって、巻き戻しはきかないよ。でも、だからこそ──一瞬一瞬の光景が、色が、綺麗に見えるんだ。風の匂いも、夕焼けのグラデーションも、全部心に焼き付けておきたくて」
神様はいじわるだ。
人生は、時に酷く不公平で。
泣きたくなるような不条理で溢れている。
それでも。ねえ、それでも。
やがて恋に変わる君との出会いで、私は、確かな光を見つけた気がしたんだ────。
⿻*.·┈┈┈┈┈┈┈┈┈⿻*.·折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-22 17:48:19
241文字
会話率:0%
郊外の開発工事が急速に進められている現代。ある建設現場で、作業員たちはいつものように重機を動かし、地面を掘り進めていた。だが、そのとき――。
『助けてくれ……』
突然、微かに響く声が聞こえた。作業員たちは手を止め、耳に手を添えた。
「あ、お前も今の、聞こえたのか?」
「お、おう、気のせいじゃない……よな?」
「おれも聞いたぞ」
「おれもだ。実はさっきも聞こえた気がしたんだ……」
作業員たちは顔を見合わせ、背筋に寒気を覚えた。誰か一人ならまだしも、全員が聞いたとなれば、これは――
折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2025-04-22 11:00:00
1438文字
会話率:66%
旅行が趣味の、とある男。ヨーロッパの田舎町を訪れ、ひっそりと建つ古びた教会を見つけた。
石造りの外壁はところどころ崩れ、ひび割れには苔がびっしりとこびりついている。木製の扉は半ば朽ち、微かに軋む音を立てながら開いた。
内部には埃が漂い
、天井の隙間から斜めに差し込む光が、舞う塵を銀色に浮かび上がらせていた。床には風や鳥が運んだのか、小さな草花がひっそりと咲いている。
神父の姿も巡礼者もおらず、完全に廃墟となっていた。だが男は、むしろその荒れ果てた静けさに、妙な神聖さを感じた。
目を閉じて深く息を吸い、静かに耳を澄ませる。どこからか聖歌が響いてくる気がした。
「……聖歌? 空耳……いや、確かに聞こえる」
折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2025-04-21 11:00:00
1887文字
会話率:50%
「おじいちゃん、聴こえる? ねえねえ」
「ふふふっ、聴こえてるよ。きっとね……」
「疲れてるみたいだ。もう休ませてやろう」
「あたしたち、明日また来るからね!」
「そうね、また明日来ようね……」
「そうだな……じゃあね、父さん……」
ああ、また明日……。そう声に出せないおれは、届いてくれと願いながら心の中でそう念じた。孫の元気いっぱいな声と息子夫婦の優しい話し声が遠ざかっていく。
やがて、「ご臨終です」「お疲れさまでした」と、そう聴こえた気がした。
瞼の向こうに感じていた病室の蛍光灯の光が徐々に暗くなり、そして完全な暗闇になると、過去の自分が映像となって浮かび上がった。それは、物心ついた辺りから始まり、青年期、成人期、壮年期、老年期、そして最後、【fin】の文字が浮かび上がると、再び目の前は明るくなり……。
「お疲れさまでした」
折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2024-07-27 11:00:00
2185文字
会話率:54%
着ぐるみに包まれるのが好きだった。
そのふわふわの中でなら、自分を忘れられる気がした。
ある日、バイト先で出会ったのは、大きなクマの着ぐるみ。
そして、それを優しく、けれど確かに“脱がせない”よう導いてくるアテンドの女性・ノノ。
密閉さ
れた空気、布越しの音、擦れる感触。
少年はしだいに、着ぐるみを“着ている”のではなく、“着ぐるみそのもの”へと変わっていく。
名前もいらない、素顔も戻らない。
ぬいぐるみとして動き、笑い、見られる存在――
“くまちゃん”として、少年は静かに人間であることを終えていく。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-22 10:48:25
5418文字
会話率:13%
冬の終わり、誰もいない丘の上で、少年は少女に出会った。
白い息と静けさの中、彼女はそこに「いる」よりも「在る」に近い存在だった。
まるで、季節の狭間にふと現れた夢の欠片のように。
彼女の名前を聞いた気がした。けれどそれは、風にさらわれて消
えた。
何度か言葉を交わし、何度か笑い合ったけれど、いつも次の瞬間には遠ざかる幻。
それでも少年は、その曖昧な光に心を惹かれていった。
やがて春、高校の制服に身を包んだ彼女は、現実の中にいた。
教室の陽だまり、窓の外の風、手のひらのぬくもり――
まるで彼女がこちら側の世界に降りてきたようだった。
けれど、どれだけ時間を重ねても、
彼女の瞳の奥には、触れられない景色があった。
まるで、今もどこか遠い場所で、
自分に気づかれないまま眠っている夢のように。
これは、手を伸ばした先にあった温度と、
手を伸ばしてもなお届かなかったひとつの恋の記憶。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-21 01:56:10
16719文字
会話率:16%
中学生の浅野春樹は上級生と喧嘩騒動を起こしたことがあった。
その上、目つきが悪く地毛は茶髪のため不良少年のような扱いを受けて学校では孤立していた。
そんな中、幼馴染の深瀬志穂だけは春樹のことをいつも気遣ってくれていた。
同じ高校に行こうと
声を掛けてくれる志穂の言葉に応えたい一心で受験勉強にも力を入れていた。
春樹にとって、学校で孤立していることは問題ではなかった。
昔から志穂が近くにいてくれるから……。
しかし、3年生なってから志穂の態度がよそよそしくなってきた。
登下校も別々になり、学校で話しかけてくることも無くなった。
志穂の心が自分から離れていってしまっている気がした春樹は焦っていた。
彼女と話がしたい。笑った顔が見たい。
志穂と一緒に帰ろうと、彼女が部活動を行っている体育館へ向かったのだが……。
そこで春樹が目撃したのは、自分の悪口を言って部活の友達と楽しそうにしている志穂の姿だった。
その瞬間……春樹の中で志穂に対する想いや信頼は完全に消滅した。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-18 07:34:22
161436文字
会話率:43%
かつての東京都中枢。
首都機能を支えた都市が、地殻変動と構造崩壊によって、ある日、まるごと沈んだ。
地下鉄、都市基盤、再開発区画、無数の人工層。それらが崩れて混じり、歪み、沈んだ結果、生まれた“巨大な落とし穴”──。
旧東京都多層構造地
下圏
通称《CORE(コア)》
異常な断層と入り組んだ構造。
沈んだ都市の中で、独自に生まれ直した“何か”。
いつしか人々は、こう呼ぶようになった。
──ダンジョン、と。
上京したばかりの青年は、偶然出会った少女に巻き込まれ、非正規ルートからこのダンジョンへと足を踏み入れる。
金も希望もない──だが、誰かに観られたその瞬間、何かが変わる気がした。
近未来×配信×ダンジョン潜行。
これは、誰かに観られることでしか生きられない時代の物語。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-17 19:00:00
27724文字
会話率:37%
家って、どこからどこまでのことを言うんだろう。
親が離婚して、母は仕事に追われて、私は高校から叔母の家で暮らしていた。
一応、生活に不自由はない。
けど、家族って、もっと――「うるさくて、あったかくて、うざったくて」そういうもんじゃなかっ
たっけ。
高校三年の春。
美術室の窓際で、ひとり絵を描いていた私に話しかけてきたのは、
クラスでも地味な部類の男の子、牧野くんだった。
「その絵、ちょっと好きかも」
たぶん、好きって言われたの、初めてだった。
私の“絵”にじゃなくて、“私”に向けられた言葉みたいで。
日曜日の午後、彼の家に誘われた。
両親が揃っていて、犬がいて、お姉さんがケーキを焼いていた。
なんでもない、けど、見たことない「家族」の風景。
そこにいると、なぜか泣きたくなった。
恋が始まる気がした。
けどそれと同時に、自分の“家”を見つけなきゃいけない気もした。
「ただいま」って言える場所は、きっと、
誰かに作ってもらうもんじゃなくて、
自分で作るものなんだ。
青春と恋と、ちょっと複雑な家族と。
小さな勇気で、私はほんの少し、大人になる。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-17 08:49:50
4657文字
会話率:34%
成り上がりを夢見る青年オース。ところが、その夢を叶えたのは見下していた瓜二つの双子の弟ルースだった。夢と幸せを奪われたオースは、村で悶々とした日々を過ごすこととなる。
そんなある日、彼は蝶の魔物に村を襲われる悪夢を見る。それが、ただの
夢ではないような気がした彼は、一人で村を飛び出して討伐に向かう。
だが、結局何も見つからず村に戻ると、目前に燃え盛る村と変わり果てた村人達、蝶の魔物の姿があった。果敢に立ち向かう彼だったが、あっという間に劣勢に追い込まれた挙句、火事で崩れた家の下敷きとなり、瀕死状態になってしまう。
そんな彼に差し伸べられた魔の手。間違いだと気付きながらも、甘言に乗せられた彼はその手を掴んでしまう。
魔王の配下となった彼は、弟に勝利するために暴れまわる。別々の道を歩み始める双子の運命は、一体どこで交わるのか――!?
――勇者はひとりじゃない。
これは、成り下がりダークファンタジーである。
***
基本的に、週一更新を予定しています折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-13 23:26:16
710485文字
会話率:53%
「初めて会ったのに、私はその声を知っている気がした」
事故により記憶を失った見習い修道女の少女フラウリアは、ある時、役目を嫌がる友人に代わり、治療士ベリトに届け物をすることになる。
ベリトは人嫌いで無愛想なことから修道院の子達からは恐れ
られていたが、フラウリアは彼女にそのような印象を抱かなかった。それどころか、初対面なのにベリトの声を知っている気がした。
ベリトを怖いと感じなかったフラウリアは、友人の役目を代わることに。その際、修道院長から約束させられたのは、ベリトに触れないことだった。 折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-13 15:40:00
613696文字
会話率:34%
“ただいま”が言えた夜、やっと自分になれた気がした。
家に居場所をなくした少女・ひかりと、
自分の過去に目を逸らしながら生きるホスト・流星。
夜の街で出会ったふたりは、
パチンコに人生を賭けるような不安定さで、
それでもお互いの“今”にす
がるように惹かれていった。
「誰かの代わり」なんかじゃなく、
「助ける/助けられる」関係でもなく、
ただ“ちゃんと好きになりたい”と願ったこの気持ちに、
ふたりは何度も傷つきながらも、名前のない愛を育てていく。
社会に否定されても、法に引き裂かれそうになっても、
それでも選んだのは――「一緒に生きていく」ことだった。
これは、
悲しみのとなりで手を取り合ったふたりが、
世界のどこかに、“ただいま”を作る物語。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-13 10:46:07
5403文字
会話率:58%
「死体が、笑っていた。
その顔が、私だった気がした。」
高校に通う秋月しおりは、ある日“自分の死体”らしい夢を見る。
夢の中の死体は、顔がぼやけ、名前も記憶も曖昧なまま、ただ制服だけが“自分”を思わせた。
悪夢として片づけようとするしおり
だったが、その夢は繰り返し訪れ、やがて現実を侵し始める。
恋人の朝凪みつきは、しおりに微笑みながら、少しずつ彼女の生活や外見を“真似”し始める。
「おそろいだね」「これが、愛だよ。ね?」──愛情を囁くその声はやさしくて、どこか冷たい。
一方、親友の篠森灯花は、しおりの異変に気づきながらも何も言わず、ただ傍に居続ける。
夢に見た死の光景。
それが“未来”なのか、“過去”なのか、しおりにはわからない。
ただ確かなのは、何かが少しずつ狂い始めているということ。
やがて、夢の中で見た“死体の構図”が現実に重なり始めるとき、
三人の関係は愛と執着と狂気の果てに、静かに、確実に崩壊へと向かっていく──。
すべてが重なったとき、最後に聞こえるのは、
あのやさしくも残酷な囁き。
「これが、愛だよ。ね?」折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-11 06:00:00
90159文字
会話率:12%
すべては、見えていたのに見えていなかった。
崩れる暮らし。忘れられない思い出。
けれど、本当の「喪失」はもっと静かで、やさしい顔をしていた。
見ていた景色、思い出、過ごした時間、何かが違った。
思い出が底に沈んだ時、全ての真相がわかった気
がした。
20分前後で読めるショートショートです。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-06 23:53:12
6237文字
会話率:32%
※この小説は、町田康『くっすん大黒』をオマージュしたライトノベルです。
二十歳の大学生・藤野陽(ふじの よう)は、ぬるい生活を送っていた。授業には出ず、親の仕送りでギリギリ生活し、動画サイトとまとめサイトに埋もれて生きる毎日。希望も夢も熱
意も、もうとうに消えていた。
そんなある日、彼の部屋に大黒様の石像が届く。部屋の隅に置いておくと、突然中から、銀髪で和服姿の小柄な少女が出てくる。見た目はロリ、中身はババア、名を寿々璃(すずり)。自称「福の神」とのことだが、なぜか陽の冷蔵庫が爆破される。捨てても先回りして戻ってくる彼女と、同居することになった陽の生活は、次第に「ろくでもない方向」へと転がっていく。
寿々璃の推薦で始めた「社会復帰」のバイト先は、「アットホームな職場」がウリのファストファッション店。だが待っていたのは、朝礼でポエムを朗読する全身アロハのアフロ店長、語尾が全部「☆」の働かないギャル、令和の中原中也、業務連絡をすべてラップでこなす男という、常識をぶっ飛ばした同僚たちだった。すぐに耐えられなくなり限界を迎える陽。
今度は友人とVチューバ―活動を始めることに。しかし初配信で音声設定ミスにより、可愛いアバターから陰キャ地声を世界に轟かせるという事故を起こし、さらに翌日には配信動画が消えていた。恥をかいただけで終わったが、世界がちょっと広くなった気がした。
地に足を付けた生き方として、農業で生きていこうと決意するも、今どきは「スマート農業」になっており、ドローンとセンサーとAI管理。結局、始める前からあきらめてしまう。
それでも、日々は続く。社会に出ることもできず、何かを成し遂げたわけでもない。けれど、陽は寿々璃とくだらないことで笑い、今日をなんとか生きていく。ダメ人間のまま、福の神と過ごす、そこそこににぎやかな日々。ポンコツ福の神と、人生消化試合中の大学生が繰り広げる、ゆるくて情けなくて、でも温かい「再生未遂」コメディ。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-06 17:49:02
11933文字
会話率:49%