かつて''無血''の少年がいた。
彼は名もなき家に生まれ、ただ静かに幸福に生きていた。しかし、ある日を境にその全ては静かに崩れ落ちる。そこに残ったのは深く濁った怒りと決して晴れることのない喪失感だけだった。一人残った少年は世界に背を向け、魔
術という禁忌に手を伸ばした。復讐のために選んだ力はやがて少年を''最強''へと変えた。喪ったものを埋めるようにして、自分の存在を刻もうとした。最初はその力に歓喜し全てを操れると信じて疑わなかった。だが次第に力が彼自身を蝕み始める。彼は正義を語りながら誰よりも多くを壊し、そして静かに消えた。
━━だが、運命は残酷だった。
終わったはずの命がある日、違う姿で目を覚ます。
過去とは違う名、違う血、違う場所。それでも心はあの時のまま。今の彼はかつて敵と見なした世界に、今は''中の人間''として生きている。誰よりも忌み嫌った場所で、世界で最も軽蔑し、否定し、滅ぼそうとした血を自分の中に抱えながら誰よりも笑っていた。誰にも知られず、かつての名も過去も復讐も封じたまま生きていく彼が異なる視点で見たものはかつての怒りでは気づけなかった温度だった。血では測れない痛み、立場によってゆがめられる正義。「敵」だと思っていた存在にも痛みがあり、恐れがあり、守ろうとしている何かがあるということを。あの時見えなかった景色に少しずつ気づいていくなかで、自分の中に積もった痛みと後悔の重さを彼はようやく知ることになる。それでも彼は自らの罪から目を背けるように、ただ戦い続けていた。
そんな彼の歩みを変えたのは1人の存在だった。そばに誰かがいて、名前を呼ばれ、手を引かれるたびに忘れていた温度を、心の奥にかすかに思い出すようになる。
しかし強さは彼を守らなかった。むしろ強くあろうとした日々が彼を一層脆くした。
今も魔術は彼のそばにある。けれど、それを使うたびに世界が少しずつ遠くなるような気がしてならなかった。それでも彼はその力を手放さない。今度こそ守りたいものがあるからだ。自分のようになってほしくない者たちがいるからだ。同じ傷みを背負わないように、背中を押すふりをしてそっと引き止めるように。
誰にも知られぬまま、彼は歩いている。
魔術使いでありながら、それを戒め、愛し、恐れている一人の人間として。
彼は今日も''無敵''という仮面を被り、脆く、優しく戦っている。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-17 22:49:31
5874文字
会話率:31%
海の向こうに住む人魚に恋をした青年。人と人魚、異なる世界に生きるふたりは、どれだけ想いが通じても結ばれることはない。しかし、青年は諦めきれず、「もしも自分が人魚になれたら?」と願いを抱き、錬金術師のアトリエ「夢幻アトリエ」を訪れる。彼の決意
に、アトリエの主ユリシスは「後先を考えずに決断するのはよくない」と引き止めるが、青年は意志を曲げず、想いを貫こうとする。
アトリエでの提案は、ひとつの試練。青年が人魚になるためには、相手の人魚から五つの鱗を手に入れることが条件だという。だが、青年はそれを「痛い思いをさせられない」と拒み、ユリシスに挑戦を突きつける。果たして彼の想いは届くのか、そして、アトリエの秘密とは――。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-13 22:24:30
21231文字
会話率:57%
鏡花という女はその身に数多の人格を携えている為、非常に気が多い。そしてそれを元に物を書く。
其れでも恋心と愛心を向けるのは、ただ二人に限定されている。
俺と、友人に。
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座い
ません。
注意事項2
瑠衣の事が死ぬ程好きな人格と、その友人の事が死ぬ程好きな人格、二つが混在しているんですよ。
だから統率している鏡花はメンタルガッタガタです。
瑠衣は気にしてません。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-03-23 10:29:19
990文字
会話率:23%
生まれた時からならず者。疎まれて当然。弾かれて当然。だから自分の居場所はあってないようなものだった。
そんな時、一人のチビと出会った。
で、なんで泣いてんだ。
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません
。
注意事項2
飆靡様です〜。照れてくれたらきっと可愛い。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-03-16 17:37:24
1461文字
会話率:52%
風の谷に住む少年・レンは、一族の長の息子でありながら、自由を求めて谷の外の世界に憧れていた。幼馴染のカナだけが彼の心を理解し、共に風に乗る日々を送っていた。そんな中、東の果てで「魔の国の扉」が開いたという報せが届く。
レンはこの機会に外の
世界へ飛び出そうとするが、家族は危険だと彼を引き止める。しかし、彼は「本当の自由」を見つけるため、旅立つ決意を固める。カナもまた彼の決意を支え、二人は風の谷を飛び立ち、未知の世界へと冒険に出る。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-03-07 22:00:00
4850文字
会話率:45%
果てしなく広がる荒野に作られた町、ディサピア。交通拠点ではあるがそれ以外の使い道はなく、西暦三千年を過ぎて衰退した文明からはさらに隔絶されていた。町の保安官ケイトは、旅のガンマンを身元不明の不法入国者としてディサピアに引き止めるが、ミミズク
は世界がどうなっているか知っているらしくて……。
ほとんどパロディネタ。折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2025-02-13 03:00:00
59738文字
会話率:39%
「君には北の国境にある最前線に行ってもらう。君は後方支援が希望だったから、ちょうど良いと思ってな。婚約も生活聖女としての称号も暫定的に残すとしよう。私に少しでも感謝して、婚約者として最後の役目をしっかり果たしてくれ」と婚約者のオーギュスト様
から捨て駒扱いされて北の領地に。そこで出会った王弟殿下のダニエルに取り入り、聖女ベルナデットの有能さを発揮して「聖女ベルナデット殺害計画」を語る。聖女だった頃の自分を捨てて本来の姿に戻ったブランシュだったが、ある失態をおかし、北の領地に留まることはできずにいた。それを王弟殿下ダニエルが引き止めるが──。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-11-29 08:11:54
14548文字
会話率:43%
俳優の絢也と、ヒモ生活を送ってきた葵の恋のお話です。
ある日、葵は世話になっていた女性に恋人が出来た為、彼女の家から出て行く事になった。
今晩をどこで過ごそうかと悩んでいると、街角で偶然、絢也と出会う。俳優として人気を得ていた絢也はすぐに
周囲に気づかれ、何故か葵の手を引いて一緒に走り出した。
人目から逃れてその場から立ち去ろうとする葵だが、そんな葵を何故か必死に引き止める絢也。これがきっかけとなり、二人の生活が始まる。
二人の出会いは、葵にとっては初対面だが、絢也にとっては再会だった。
どうして絢也が自分に好意を寄せるのか分からないまま、葵も絢也に惹かれていく。それでも葵には、絢也の思いを受け入れられない理由があった。
共に絢也と暮らしていく中で、葵が自分の過去と向き合いながら立ち直っていくお話です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-07-27 20:10:00
86091文字
会話率:40%
卒業パーティの日、突然真実の愛に目覚めたと私の婚約者が言った。それは別に良いのだが、この話を異世界恋愛に投稿してくるとかほざきやがった。やめてくたさい!貴方がいくら愛を語ろうとも、この話は異世界恋愛に入れてはならないのです!原稿を持って役所
へ向かう彼を私が全力で引き止める!折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-03-16 21:32:20
3528文字
会話率:61%
地球ではないどこかの世界。その世界にある5つの大陸の一つ、フーラン・チャ・イーズ大陸。そこで最大の勢力を誇る国チョクエーテン王国。その国の中心でもある王都の東門に近い地区にその店はあった。
夜の王都にひっそりと開店する店。元SSランクの冒
険者アムピム・ローソンは、引き止める者達を穏やかに黙ら…いや、諭して己の願い通りに引退した。そして、スーパーコンビニエンスな店の店主となった。誰もが寝静まった深夜でも遠慮なく安心して駆け込み、欲しい物を買う事が出来る、呆れるほどに品揃え豊富で便利な店の店主に。
* 店主は神速の剣聖ではあるものの、この話の中に戦闘シーン等はありません。支払いカウンターから笑顔で接客するだけです。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-10-19 06:00:00
4043文字
会話率:59%
三度の飯よりお昼寝が大好きなレイチェルは、「真実の愛を見つけた!」というヘクターに婚約破棄される。
完全に脳内お花畑状態の婚約者を引き止める気力もなく、直ぐに『元』がつく関係へ。
新たな婚約者を探さなくてはいけない状況で、あるパーティーへ
参席すると、元婚約者のヘクターが居て……?
しかも、「真実の愛」の相手である女性を引き連れていた!
嫌な予感がしてその場を離れようとするものの、時すでに遅し。
見事トラブルになった。
そこへパーティーの主催者である第二公子が現れて……?折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-09-24 19:23:41
98472文字
会話率:25%
続くもの、続けたいもの。
それがつながったときの効果は、果たして……
最終更新:2023-09-19 18:00:00
3480文字
会話率:2%
私のパーティの勇者がとんでもない事を言い出した
強化師ラストンが怠けているから追放しようというのだ
ラストンの強化は全能力倍増、確かに魔物が居なくても
寝ている間でも、自然に掛かり続けているから気付きにくいが…
引き止める奴が誰も居ない!?
皆本気で言ってるのか!?
そいつを追放するな!折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-09-16 23:55:00
23915文字
会話率:47%
体術から始まり魔法、剣技、特殊能力、ありとあらゆることにおいて最強の男アデル。
この世界の誰よりも強い彼は、ある日王国と帝国の戦争に巻き込まれそうになり数年間滞在していた王国を後にする。
その際に王国の上層部からアデルを引き止めるためのコマ
として使われた騎士団長を情けから助けた彼は、師匠から彼女こそが自分が求めている物を持っていることを伝えられるのだった。
これは最強となった彼が唯一手に入れることの出来なかった希望を手に入れるための物語である。
この作品はカクヨム、アルファポリスでも公開中です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-04-16 21:00:00
139718文字
会話率:40%
厨二が自殺を引き止めたいと思って書いたもの。
最終更新:2023-01-13 23:45:57
1147文字
会話率:0%
二人は病院で出会った
どちらも自分の命に限りを知っていた
海を見たことがない
一人が言った
海を見に行こう
もう一人が言った
それは短い時間だった
しかし二人にはとても長い旅だった
たどり着いた海で肩を寄せ合う
一人は願った
私を
置いていかないでと
一人は願った
君を置いていきたくないと
とうとう
一人は静かになる
ゆっくりと静かになる
呼吸が静かになる
鼓動も、熱も、ゆっくりと静かになる
まだ、だめだよ
一人は引き止めるように頭を抱き寄せる
もう一人の耳に心臓の音が届いた
私はまだ生きているから
だから
その時、流星が尾を引いた
一つ、二つ、まっすぐに引いた光の尾が瞬いては消えて
一人は願った
しし座流星群に
折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2022-09-16 19:40:44
221文字
会話率:0%
俺が恋したのは、とある喫茶店の看板"猫"でした——
「——あのっ、荒巻祐也君ですか?」
夏休み明けの学園生活初日。
学園に足を運ぶ荒巻祐也(あらまきゆうや)を、一人の少女が引き止める。
「うわぁ、祐也君ですっ!
」
祐也の顔を目の当たりにして明るい笑顔を咲かせている少女の名前は、芹崎有香猫(せりざきあかね)。
少女の上品な佇まいと、銀色の端正に整えられたロングヘアの髪、そして顔立ちの良さから、祐也はその少女に一目惚れをしてしまう。
祐也は募る想いを抑えることができずに、町で唯一の喫茶店「CATS」の看板猫であるミーシャに有香猫への想いを打ち明けるのだが、その瞬間にミーシャの様子がおかしくなってしまう。
近くにいた喫茶店のマスターまで動揺して、挙句の果てには次の日に出会った有香猫まで祐也から顔を背けてしまう始末に。
戸惑いを隠せない祐也は、なんとか自分に言い聞かせてその場をやり過ごすのだが、有香猫や旧友の古川蓮(ふるかわれんと)学園生活を過ごすうちに段々と有香猫とミーシャの秘密が明るみに出てきて……
※この作品はカクヨム様にも掲載しています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-07-04 19:26:53
57983文字
会話率:38%
現役引退を決めた先輩を後輩が引き止める話
他サイトにも投稿
キーワード:
最終更新:2022-02-10 05:24:13
1971文字
会話率:62%
堀井 信(ほりい しん)と小浜 杏奈(おばま あんな)は幼馴染みだ。
高校に入学してから夏休みが終わるまでの間に、不幸と言えないほどの不幸が立て続けに杏奈に起きていた。この世界に生きる意味を見いだせなくなっていた杏奈は、ふと手に取った異世界
転生ものの小説に自ら死のうとするほど感化されてしまった。異世界に生まれ変われるかもしれないことに期待して自殺を図った時、幼なじみの信は杏奈を止めるためにとある提案をする。
「一緒に、異世界の予習をしよう。」
これは、異世界についてあれこれ考察して現実逃避をし、幼馴染みをこの世界に引き止める話である。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-11-20 21:23:15
469文字
会話率:56%
「私はこれにて失礼します!」
夜会から早々に退場しようと、アリスは宣言する。
歓迎されていないからであると告げて……。
しかし、そんな彼女を引き止める王子は必死な形相で……。
最終更新:2021-11-08 13:39:08
1885文字
会話率:48%
開幕フルスロットルでベタ惚れの溺愛、だけども婚約破棄!
次期皇帝とも名高いコワモテアラフォー騎士団長が、借金まみれの没落令嬢に突然の求婚、初顔合わせで突然の破談。
どういうことだろうと思いつつ、粛々と受け入れ帰ろうとするが……
「なぜ引き
止めるの? もしかしてこのひと、わたくしにベタ惚れなのでは……?」
年齢差17歳、身長も身分も言葉も想いも、何から何までハイテンションでスレ違う、終始一貫ズレっぱなしのラブコメディ、読み切り短編です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-10-01 23:15:26
10632文字
会話率:53%