昔々、あるところに一人の青年が住んでいました。
青年は若くして両親を亡くしていましたが、幼い頃から手先が器用だったこともあり、丈夫な木の皮を編んで笠や籠を作ったり、木片を削って見事な工芸品を作ったりしては、町に売りに行くことで糊口を凌いで
いました。
その日も青年は、淡雪の降る初冬の山道を抜けて、人里から離れたあばら家まで帰ってきました。
「いやぁ、それにしても今日はたくさん売れた。これでしばらくは暮らしていけそうだ。あの町の人達はみんないつも優しい。本当にありがたいことだ」
青年は生来口下手で、商いが得意な方ではありませんでした。
しかし、誠実で思いやりのある人柄と持ち前の器量のよさで、町に暮らす人々の心を鷲掴みにして放しませんでした。
「暮らしを心配され、土産に鰯までいただいてしまった」
青年は風呂敷に包まれた鰯に視線を落とし、申し訳ない気持ちになりましたが、腹の虫が鳴いたので、感謝の気持ちと共に夕餉の支度に取り掛かりました。
すると、そのときのことでした。
コンコンと静かに戸を叩く音が聞こえてきました。
普段この豊かな自然に囲まれたあばら家には訪ねてくる者もおらず、青年は訝しげな表情になりながら戸に近付きました。
風の音ではありません。そこには確かに生ける者の気配がありました。
「何者か」
「道に迷って途方に暮れていたところ、明かりを見つけまして……」
「なんと、それは」
思わぬ女の声に、青年は驚きました。
外はすでに暗くなっており、古くから妖怪変化の住むと噂される山の夜道は女一人ではとても危険でした。
青年は、脳裏にぼんやりと「鶴の恩返し」の話を思い浮かべながらも、いやいやあれはただの昔話だと打ち消しつつ、戸に手を掛けました。
「中に入られよ」
そこに立っていたのは――折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-08-13 08:48:03
3634文字
会話率:47%
十七大陸。
この地では常に緊張が続く。
ふとした瞬間に起こる戦乱。
それを覚悟しながらも日々の生活は続けられる。
旅商人は商売をこなしながら各地を移動し、その見聞を広める。
得られた見聞は情報として持ち帰られる。
商人のルマもまたその生活
を続けるひとりである。
※この作品はPixiv(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8330180)へ投稿しています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-07-06 20:00:00
41473文字
会話率:6%
奴隷商人であるカールは、今日も用心棒のソダを連れて商いにいそしんでいる。この物語は偏った感性の持ち主であるカールが送る憂鬱な日常の一幕である。
最終更新:2021-02-27 00:03:53
3832文字
会話率:52%
とびらの様主催、【あらすじだけ企画】参加作品です。
ハイファンタジー物。
天界・人界・冥界・妖界の四つの要素で成り立っている世界。
失われた物を求めて夫婦者の探し屋がお探しいたします!
長編化予定ですが、お忙しい読み手様にさっと読んで頂ける
よう、2千字に凝縮してみました。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-01-05 21:21:45
1834文字
会話率:6%
氷室正和、病を理由に会社を解雇され無職となるも、不思議な扉が二つ現れる除いて見ると、モンスターが闊歩する異世界と宇宙船?らしき船?が空を飛ぶ未来的な世界。
最初に踏み入った世界で意識を失う。
最終更新:2020-11-30 02:59:17
22559文字
会話率:0%
冒険者ギルド。それは様々な依頼を受けて達成することを商いとする者たちの居場所。
そんな居場所がついに幕を下ろす日が来たようで…
最終更新:2020-09-09 20:43:01
1440文字
会話率:0%
梟禽族、獅狼族、蹄印族、力を持った三つの獣人の大部族が作り上げた国があった。
大陸の北西に位置する獣人たちの国、協商国。海と山に囲まれ、緑と文化に栄えたこの国。今日も様々な物が集まる。
金は当然ながら、食べ物、美術品、剣や鎧などの武具
はもちろん。図鑑や魔導書、あらゆる種族の知恵が収められた書物。
古の時代から商いによって栄えたこの国は、趣向や知識、仕事、金、人材、各々が求める物を提供し、各地から様々な種族が行き交っていた。
この物語は協商国の何気ない日々、そしてどこかの未来であり、誰かの過去を記した物語。それらの一端で、きっと、誰に伝わることの無い切れ端である。
――毎月26日更新予定です――折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-08-26 16:00:00
5356文字
会話率:48%
主人公『青野 理央(アオノ リオ)』は異世界に転移し、ロワネ伯爵家の養女となる。ロワネ伯爵家は由緒正しい貴族であり、大陸一の貿易商会を築く商人の家系である。
『商人は物を売るだけでなく心を売れ』という家訓を胸にリオは立派な商人を目指す。
魔
法は使えないけど剣はある! 度胸とまごころで大陸横断! 商人達が倦厭するもっとも危険なルートへと進路を定めて、初めての商いの旅に出る……が?! なぜか、隣国の公爵様が従者として付いてきた?! しかも観光気分なお貴族様なんですけど?! そんな感じのドタバタ恋愛話です。
◯本作品は『異世界で脳筋国家の宰相補佐になりました』(ユスト国の創始王の頃のお話)より約300年後の時代になります。基本的には独立した別の話になります。ネタバレ的な話はない……はずです。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-07-25 18:03:43
271540文字
会話率:48%
昭和初年の甲府。作造とお新の夫婦が背負の行商から始めた呉服の商いは、辛苦の30年を経て店を構えるまでになった。近頃は性格の異なる嫁のアラが見え不満をつのらせる。昔はこうなりたくはないと思った姑像に自分の姿が重なりハッとするお新。いつの時代も
嫁姑は難しい関係だが、それでも日々は続いていく。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-07-18 13:47:22
7047文字
会話率:46%
空に大きな鷹が飛ぶ。
その背に乗る少女――肩に天秤の刺繍を飾る会計官・ラウは、じっと地平の果てを見つめていた。
その地のヌシとも呼ばれる、大陸をはばかる巨大な獣〈ダイアクラス〉。
古代から存在する翼竜・ワイバーンを使役する帝国は、今も各地
を進攻・侵略を続けている。
これに立ち向かえるのはダイアホークのみ――七歳だったラウは、そのヒナと友達になったことを理由に、国から軍属せよと命じられてしまう。
だが……これはラウの天命だった。
訓練場を訪れていた商業都市の会計官と出会うと、その才知を活かせと会計を学ぶことに。
そしてなんと十二歳にして、会計官の最高位を意味する〈金色の天秤〉の称号を与えられたのである。
「王は言う。『神のみが与を裁く』、と」
「なれば帳簿は神の宣告なり。会計は決して嘘を告げず、人の手のみ嘘を書く」
才覚を見いだし、智慧を授けてくれた師の教えを胸に。
戦場に蔓延る不正会計を暴くため、ラウは前線に出る会計官として大空へと飛び立つのだった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-06-28 22:07:52
224568文字
会話率:40%
額に汗して、知恵と工夫と才覚で稼いだ銭は
それはそれは花のように清らかなものやと思います
私は商いにひたむきに励み、奇麗で可愛い銭の花を育て、咲かせとうおます・・
キーワード:
最終更新:2020-06-26 19:38:57
209文字
会話率:60%
天保七年春、歴史的な大凶作は三年続いていた。大坂城代土井利位は、米商人高津屋に依頼し江戸への廻米を秘かに画策し成功した。ところが秋になり、幕府は更なる糧米確保を目論み、江戸への廻米の幕命を発令した。米不足の中での強権発動で、京・大阪の不満は
高まった。
城代の近習、牧野小次郎は、町人に扮し、治安目的で大塩平八郎の私塾『洗心洞』の内偵を進めた。しかし、役人の私利私欲や豪商との癒着に嫌気がさし、次第に洗心洞一派の義憤に共感するようになった。また、同じ裏長屋に住む通い女中おせんに惹かれ、将来、所帯を持って小商いを一緒に営もうという夢を持っていた。
高津屋の一人娘おしのには、商家の息子で伝八という許嫁がいたが、伝八は突然婚約解消を申し出た。正義感の強い伝八は『洗心洞』で住込みの塾生になったので、決起した時、おしのに累が及ばないように、予め離縁を決意したのだった。しかし、おしのは一途で、伝八の決起と共に、自決する心積もりだった。
洗心洞は、知行同一を教えの根幹に据えていた。塾頭の平八郎は、東町奉行跡部良弼に政治改革の上書を提出した。しかし、分限も弁えず無礼者と、無視され叱責を受けただけだった。ついに、廻米令を機に天誅を下さんと決意する。かつて同僚だった与力、栗林隼人は平八郎に遺恨があり、塾生に返り忠(裏切り)をそそのかした。
翌、天保八年二月、小次郎は決起直前に檄文を入手、義と忠の板挟みに悩んだが城代に通報。一部塾生の返り忠も生じた。
洗心洞一党は、役人と豪商に天誅を下さんと決起し、大坂各所に火を放った。事件の当日、伝八は銃火を浴びて死亡、さらし首となった。自決を覚悟していたおしのだが、お腹の子のため、小次郎の説得で思い止まった。小次郎も騒乱の中、死亡。事件後、おせんは、小次郎との夢であったうどん屋の女将になった。大坂の町の炎上と共に武家社会の終焉を迎えた。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-05-14 21:55:18
161787文字
会話率:65%
時は幕末。江戸に暮らす商家山城屋の家族。代々女系を繋ぐ中で長女琴乃が長男貞之助を産んで死んだ。貞之助とその姉貴恵の母となった琴乃の妹雪乃。姉弟を育て上げるが、貴恵とはしっくりこない。
貞之助は十三になった。下に幸恵という妹もできた。貴恵は祖
母里久の後継として商いの勉強を始める。貴恵を恋しがって泣き暮らす貞之助を、里久は小僧修行へと差し向ける。その寺で貞之助は地獄に落ちるという不思議な体験をする。やさしい鬼たちと出会う貞之助。鬼の親方から「しこりをいくつも抱えていると碌な者にはならない」と言われ、しこりを吐き出せない姉はいつか地獄へ落ちるのだろうか。姉を救いたい。素直に気持ちを表せる姉にしたいと願う貞之助。しかし、貴恵と話せぬ内に、貞之助は雪乃から思わぬ事実を聞かされる。実の母が琴乃であると。驚きと疑念を抱く。その上、手代勘助から雪乃が琴乃を殺したと聞かされ、呆然とする。その夜、鬼たちが会いに来た。死んだ琴乃に会わせてくれるという。喜んだ貞之助は鬼たちとの再会を約束した。だが、その直前に貴恵の言った言葉に貞之助はいよいよ絶望する。自分が生まれたことで琴乃は死んだ。琴乃を殺したのは自分だったと悲嘆に暮れる。町をさまよう。行き着いた先は鬼たちと再会を期した神社の境内。そこへ鬼たちは迎えに来た。地獄で琴乃と会う。琴乃の口から「子を思う母の思い」を打ち明けられ、真っすぐ生きることを胸に誓う。そして、育ての母雪乃への思いも新たにする。
一方で、いなくなった貞之助を探しに出た雪乃を勘助がさらう。積年の思いを告白して心中を図ろうとする。そこへゴロツキが現れ二人を襲う。雪乃の危難を知った貞之助は鬼たちの助けを得て二人を救う。雪乃は自分を守ろうとした勘助を見直し、雪乃の思いに触れた勘助は性根を入れ替える。
徳川幕府の瓦解に抵抗するように幕臣が上野に集まっていた。その中には貴恵の恋人格之進も。彰義隊が敗戦したと聞いて走りだす貴恵。向かうは上野。しかし、薩摩軍に捕らえられ乱暴されかける。それをまた鬼たちが助ける。光明寺に運ばれた貴恵。彼女を見守る家族。雪乃の頼みで覚前和尚の説法を受けたみなは明日への道をもう一度見つめ直す。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-05-13 17:00:00
99467文字
会話率:57%
私の敬愛するご主人様様は、この国で一番の奴隷商人です。「王も貴族も、国ひとつ、領地ひとつ治める者は変態で無ければ務まらない」ご主人様は信念と哲学を持って奴隷を商います。「こいつはマゾの匂いがする」「ご主人様、いきなりお客様をディスらないでく
ださい」折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-03-09 17:56:17
8030文字
会話率:66%
如月恭二が食堂を開いたようです。
頑固一徹。語り出せば蘊蓄が止まらない奇人の店主が、今宵も暖簾を掲げる。
店主のこだわりを持った、漢の料理が供される。
──只今商い中。
最終更新:2020-03-05 21:05:41
17450文字
会話率:1%
童話版のノムーラはんです。いつものようにてんやわんやを繰り広げながら商いにはげんでいると、「億利人になるからカブを売れ」と来た人がいました。かるくあしらって超大型カブを売ってやり、オマケをつけてあげました。そんなことも日々の忙しさですっかり
忘れたころ、その男がまたやって来ました。なにやら不穏な空気が漂います。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-01-15 15:37:46
6031文字
会話率:87%
老舗百貨店の婦人服売り場で店長として働く、希美《のぞみ》、既婚37歳子供無し。
愛されキャラの希美には、一つ秘密が有った。
それはちょっとした縁から始まった、東京と江戸との二重生活。
江戸では「みその」と名前を変え、持ち前の明るさと現代知識
や、江戸ではべらぼうに若く見られる、その不思議な美貌を携えながら、江戸の商いに触れ、恋や捕り物劇までにも巻き込まれて行く物語。の続編です。
※前作を読まなくても支障がないとは思いますが、前作は『ちょいと江戸まで』と言うタイトルです。
※前作を読まれる方は、【前作までの登場人物】は読まない方が良いです。
ネタバレがあります。
※ジャンル変更しました。2017.10.24折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-12-18 11:09:33
510789文字
会話率:34%
老舗百貨店の婦人服売り場で店長として働く、希美《のぞみ》、既婚37歳子供無し。
愛されキャラのそんな希美には、一つ秘密が有った。
それはちょっとした縁から始まった、東京と江戸との二重生活。
江戸では「みその」と名前を変え、持ち前の明
るさと現代知識や、江戸ではべらぼうに若く見られる、その不思議な美貌を携えながら、江戸の商いに触れ、恋や捕り物劇までにも巻き込まれて行く物語。
※こちらの作品はムーライトノベルズで、完結している話です。
続編を書いていて、あまりアレな感じを入れたくなかったので、話の繋がりがある為に修正して投稿する事にしました。
続ける上で設定の年齢を下げたり、名前など細かなところの若干の修正はありますが、大筋はほぼ同じになる予定です。
完結済みのところまでは、一日に2〜3話くらいのペースで更新して行く予定です。(74話分)
宜しくお願い致します。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-07-07 08:00:00
360124文字
会話率:46%
江戸、両国界隈で商いをする者たち。今宵は庚申講で寄り合いがある。
乾物屋の跡継ぎの紀一郎は、同席者に高麗物屋の長子・伊織がいることを苦々しく思う。
伊織には不可思議な噂と、ある二つ名があった。
最終更新:2019-11-30 22:14:50
12546文字
会話率:26%
バイトの帰りの夜道を帰る最中、少女は霧に飲まれて不幸にも道に迷ってしまう。二進も三進もいかない少女に声をかけたのは、異様な雰囲気の女性だった。女性は、近くで商いをやっているから、地図を作るために寄って行くのはどうかと提案し、少女が女性の案内
でついていくと、そこはテナントビルの一階だった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-09-30 23:01:32
8266文字
会話率:67%
毎日違う世界の夢を見る
その世界は現実には見たことのない建物、道具、設備が揃っていて
俺は器用にそれを使いこなしていた。
特に何もない平凡な人生
そんな夢を見る。
目を覚ますと、夢のようなハイテク設備なんてない
街の外には、巨
大な危険なモンスターがはびこり、魔王と勇者が戦い、魔法が主流の世界で、
俺はダメな父親と商いをしながら旅をしていた。
そして10年ぶりに帰ってきた王国で
とある女の子と出会う
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-06-25 13:47:20
14174文字
会話率:23%