「世界は呪うか、祝福するしかない場所なのよ」
と、その人は言った。
――古い洋館、たった二人の住人、観葉植物であふれた部屋、外界から遮断されたような生活。
藤谷志仄は、その洋館に住む女主人だった。正体不明の、本物の魔女だとしてもおかし
くないような女性。
わたしはひょんなことから、彼女と親しくするようになる。でもそれは、危険も冒険もない、いたって平穏なものだった。いつもコーヒーとお菓子がつくような、静かな会合でしか。
それでも、志仄さんが謎の人物であることに変わりはなかった。
例えばその左手には、ひどい火傷の痕が残されていた。彼女は自分で、自分に火をつけたのだ。自由を手に入れるために、世界と戦うために、自分を生きるために――彼女にはそうするだけの、理由と必要があったから。
一方のわたしはといえば、あくまで凡庸で、中途半端で、幼稚な人生を生きていた。そこには耳をつんざく雷鳴も、猛り狂う炎も、不吉で残酷な運命なんてものもない。あるのはただ、柔らかくて、窮屈で、愛情にあふれた、箱みたいなものでしか。
光と緑の部屋で、わたしと志仄さんが過ごした時間――たわいのないおしゃべり、いくつかの出来事、奇妙な頼まれ事。
やがてそれは、いたって不可解な終焉を迎える。そこには何のヒントもなければ、ほのめかしさえ存在しない。
そして数年後、わたしは偶然の邂逅をはたすことになる。それが何を意味するのか、正確なところはわからないにせよ。
結局のところ、わたしと志仄さんのあいだにあったのは、フィクションとリアルの奇妙な交錯だった。彼女が本当は何者だったのかは、今でもわからない。
それでも志仄さんは……そのフィクションは、わたしにとって〝リアル〟だった。
(21/10/18~21/11/10)折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-09-12 00:00:00
49078文字
会話率:34%
バルド王国の王女、ヒルデガルド。
覇王である父を超える力を持ち、故に愛されなかった《忌み姫》。
王の死後、彼女は王位を継ぐことを拒否。
王権の象徴《王器》も継承せずに王城を占拠してしまった。
「私は王に相応しくない。しかし私より弱い
者も王とは認めない」
王無くば国は衰退していく他ない。
重臣らは『婚約者』と称した英雄を刺客に送り込むが、全て返り討ちにされた。
ある時、狼を相棒とする傭兵ガイストが城を訪れる。
ヒルデガルドは彼も『婚約者』と判断し、その力で惨殺してしまう。
しかしガイストは不死者、殺されてもすぐに蘇る。
驚く《忌み姫》。しかしガイストも、姫の強さと美しさに心奪われていた。
何度殺されても、ガイストは諦めずにヒルデガルドに挑む。
その間にも、王族の傍系や他国の宮廷魔術師などの婚約者が姫を狙う。
しかしヒルデガルドはガイストと協力しこれを撃退する。
刃を重ねていく内に、《忌み姫》はガイストに心を許すようになっていた。
彼の不死が、悪神に「死」を盗まれてしまった結果であること。
王器の力を求めるのも不死の呪いを解くことが目的だった。
ヒルデガルドは、そのためならば力を貸しても良いと考えた。
しかしガイストは、あくまで自分が姫に勝った上で認めて貰いたいと語る。
そんな二人に、突如として生ける災厄《彷徨える王》が襲いかかる。
《忌み姫》に勝る力を持つ怪物。
全てを焼き尽くす欲深き王は、姫を我が物にせんと猛り狂う。
屈しそうなヒルデガルドをガイストが支え、二人は恐るべき王に挑む。
激戦の末、《忌み姫》は《彷徨える王》を見事に討ち取る。
後日、ガイストはヒルデガルドに決闘を挑み、ついに勝利する。
ガイストを王にと望むヒルデガルドだが、ガイストは拒否。
王に相応しいのはヒルデガルドだと伝え、ついに《忌み姫》は王位を継承した。
ヒルデガルドは女王となった。同時に、自らの影をガイストの供に付ける。
不死の呪いを解くために、姫と亡霊は新たな旅へと出向いた。
※カクヨムとの重複投降です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-09-05 23:48:45
103816文字
会話率:31%
突如人間が自我を失い獣物の如く暴れ狂う、通称『異形』と呼ばれる存在へと変貌する世界。異形狩りを生業とするアイジスは、異形と化した少女ジルの兄を殺した事で、旅を共にする事となる。
この世界の本質は何なのか?
異形とは何なのか?
これ
は、アイジスとジルが世界を廻り、人の本質を探し、異形を知るまでの物語。
———————————————
執筆スピードが遅い為、2〜4日に一話程度の更新になると思います。
後時々休載するかも知れません。
———————————————
カクヨムにも同内容のものを掲載しています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-09-01 13:12:19
66558文字
会話率:24%
初めまして、天川裕司です。
ここではシリーズでやってます『夢時代』と『思記』の原稿を投稿して居ります。
また、YouTubeドラマ用に仕上げたシナリオ等も別枠で投稿して行きます。
どうぞよろしくお願い致します。
少しでも楽しんで頂き、読んだ
方の心の糧になれば幸いです。
サクッと読める幻想小説です(^^♪
お暇な時にでもぜひどうぞ♬
【アメーバブログ】
https://blog.ameba.jp/ucs/top.do
【男山教会ホームページ】
https://otokoyamakyoukai.jimdofree.com/
【YouTube】(不思議のパルプンテ)
https://www.youtube.com/@user-vh3fk4nl7i/videos
【ノート】
https://note.com/unique_panda3782
【カクヨム】
https://kakuyomu.jp/my/works
【YouTubeドラマにつきまして】
無課金でやっておりますので、これで精一杯…と言うところもあり、
お見苦しい点はすみません。 なので音声も無しです(BGMのみ)。
基本的に【ライトノベル感覚のイメージストーリー】です。
創造力・空想力・独創力を思いっきり働かせて見て頂けると嬉しいです(^^♪
出来れば心の声で聴いて頂けると幸いです♬
でもこの条件から出来るだけ面白く工夫してみようと思ってますので、
どうぞよろしくお願いします(^^♪
少しでも楽しんで頂き、読んだ方の心の糧になれば幸いです。
サクッと読める幻想小説です(^^♪
お暇な時にでもぜひどうぞ♬
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-08-22 01:42:48
347文字
会話率:0%
夢日記をつけると気が狂うと聞いたことがある。
気を狂わせたい一心で、夢を書き起こしていく。
終わる頃にはきっと正気ではないと信じたい。
日付は、意味が無いので季節だけ記す。
(前書きより抜粋)
最終更新:2024-08-18 18:30:00
1126文字
会話率:0%
転校して来た達也加藤静香に会い運命歯車が狂う
最終更新:2024-07-29 17:16:59
7987文字
会話率:24%
屋島の合戦。
義経に大役を押し付けられた那須与一崇高は、神仏の加護を念じながら平家が示した扇落としを完遂した。だがすぐに扇を拾い上げ船首で踊り狂う黒い大鎧の武者を義経の命により二射目にて射殺す。
その夜、義経に誘われるがまま松原へと分け入っ
た与一は、夕暮れに射殺した黒い大鎧の男と義経が肩を並べるところに出くわす。
あまりの不気味さに逃げ出す与一はしかしすぐに二人に囚われ、義経が奇怪な言葉を並べて与一を「狭間」へと送り飛ばす。
目が覚めた与一は置かれた場は再び合戦の場。だが、その景色はあからまさに一変していた。見慣れぬ武具、見慣れぬヒトガタ、見慣れぬ敵に、見知った京の都。
狭間へ「流された」与一は命を繋ぐべく再び合戦へと身を投じる。
その手には大弓はなく、しかして狭間筒が握られていた。
「我こそは屋島の扇落とし!那須与一崇高であるぞ!日光権現よ斯くご覧あれ!狭間に轟く我が一射、現世の先まで届けようぞ!」折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-07-19 16:39:18
10572文字
会話率:34%
狂えば狂う程に、愛は一段と輝きを放つ。
最終更新:2024-07-14 13:00:00
1656文字
会話率:15%
職場で普通に仕事をしていたら、気付かぬうちに異世界転移をしており・・・。
その転移先ではおれはお父さまと呼ばれていた。結婚もしていないのに。
おれとどうやら結婚していることになっている妻とはいっこうにあえず、おれはおれをお父さまと呼ぶゲ
ームの推しキャラたちに訳も分からないまま精神が狂うほどの拷問をされる。
曰く。この世界では魔王や魔人が暴れまわっており、おれに簡単に死んでもらっては困るということ。
だから何度でも何度でも何度でも何度でも何度でも。
死に慣れなくてはならない。ただ彼らはおれにそう告げ、死の刃や毒薬や即死魔法などあらゆるもので拷問をし続けた。
毎日毎晩朝から晩まで。片ときも絶やす事なく。
おれは殺され続けた。
精神が狂い始めたときに、おれがこの世界に来てから心が壊れたときの未来の記憶が突如あたまに湧き上がってきた。
今から10年あとのおれの無惨な姿。何度も殺され完全に精神が壊れたおれ。
なぜか機械音声のようなものが聞こえた。リミッターが解除されました。
あなたは999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999度の死を味わいマスターへと昇格。
【メンタル死してなお死なぬ】を獲得。
管理者権限により、ゼロ・サピエンスへと進化・・・。
おれを殺そうと振り上げる毒薬のついたおのを持つゼルダの手をとり、おれはこう言った。
「もうよせ。おれはもう死なねえ。死ねなくなったからな。」
そこには涙を泣きはらも我慢している美少女の姿があった。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-07-12 18:35:10
8523文字
会話率:22%
「この地に、今一度神々の楽園を蘇らせるときが来た」
ある日、平和だった世界は突如現れた「創世神」によって変えられてしまった。山は怒り、大地は震え、海は荒れ狂う。神々の侵略に抗うべく多くの文明社会が立ち上がったが、奮闘むなしく一瞬にして滅ぼ
されてしまう。抵抗するものがいなくなった地上では、「神々」が独自の領域を生成し今となっては文明社会など見る影もなくなってしまう。それからというもの、残った人類は地下シェルターで暮らし日々を過ごすことになった。
それから数百年。かつての文明社会国家の一つ、「日本」でフリーの傭兵をしているユウトと自我を持つ記憶喪失の少女型アンドロイドは出会う。
そして繰り広げられる闘争の果に暴かれる真実とは、一体なんなのか。折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2024-06-09 21:28:53
569文字
会話率:46%
もしも目が覚めた時に真っ白な空間に居たら多分狂う。
最終更新:2024-06-01 07:00:00
1198文字
会話率:4%
幼い頃に婚約を結んだ、別の領地に生まれた2人。そこから9年、顔合わせができない環境が続き。相性最悪の男女なのに、国が決めた集団留学のために、婚約破棄ができない。内心怒り狂う主人公と、わかりやすく暴れて喚く婚約者。そんな彼らが留学先で・・・
最終更新:2024-05-31 22:02:14
2788文字
会話率:20%
高校1年生になった黒河由太。クラスメイトの桜田茜となにやらいい感じ?!
嫉妬に狂う他の男子生徒に、怪しい犯罪続出中?!そんな物騒な学園生活で、主人公は青春できるのか!!
最終更新:2024-05-12 22:48:46
2882文字
会話率:36%
「お前マジで絶対許さんからな」
それは、結婚式に臨んだ新郎新婦が、神様の前で伝えた誓い。
***
伯爵家の跡取り令嬢・フェリータの婚約者が、わがままバツイチ王女に横取りされた。どうやら、王女の側近にして伯爵家の天敵一族の当主・ロレ
ンツィオが裏で糸を引いたもよう。
怒り狂うフェリータだが、父親含めた周りはあてにならない。それでも大事な婚約者を取り返したい一心で、フェリータは祝祭の日に捨て身の行動に出る。
……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。
敵意あふるる新婚夫婦が迎えた初夜、つつがなく夜が更けるはず、ないのであった。
***
『……マジで許さん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』(とある夫の悔恨録より抜粋)
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-04-08 12:30:00
364514文字
会話率:36%
もういーくつ寝ても〜
なーんにも来ない〜
よし、愚痴ろう。
最終更新:2024-03-31 17:30:00
1088文字
会話率:12%
孤児のレントは、河神への生贄として荒れ狂う川に落とされた。
死にたくないともがくレントは濁流の中にひとつの光を見つける。
『契約合意《アオンタ》! さぁ、名前をつけて、僕を捕まえてごらん』
死にかけていたレントを救ったのは、水棲馬ケ
ルピーのイシュカ。幻種の国《ティル・ナヌグ》を飛び出した変わり者で、「外の世界を見に行こう!」とレントを小さな村から連れ出した。
旅を始めた二人の珍道中。世間知らずの二人は気が合うようで、喧嘩をしながらも楽しく旅をしていたけれど……荒廃していく幻種の国《ティル・ナヌグ》から逃げ出してきた幻獣たちの巻き起こす大災害に巻き込まれて――!?
不遇な少年✕おとぼけケルピーの大河冒険ファンタジー。
バルリービ―の深淵にいざゆかん!折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-03-23 07:00:00
94035文字
会話率:46%
世界で一番の美を纏った絵画の私は、画家である彼の生涯を見つめ続ける。
きっと千年後も彼の思想が生きていることを願って、夢に狂う彼へ何処か期待する絵画は微笑んだ。
最終更新:2024-02-25 15:49:38
3610文字
会話率:21%
人間の住まう『王国』。
魔族と神々が住まう『魔界』。
両者から弾き出された者たちが集う『境界』。
その地に生きる者たちの争いで三つに分かたれた『大陸』には、古くより救世主の言い伝えが残る。
伝承をたどり、争い絶えぬ大陸を救うべく現れる伝説
の救世主『勇者』。
その存在は人々を救ってくれるものと信じられていたが――
どこからともなく現れた影は、彷徨う。
「勇者はどこだ」
勇者を求める『黒騎士』と、それを見守る者たち。
神々が荒れ狂う魔界の大地から物語は始まる。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-02-23 11:44:27
723746文字
会話率:26%
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺る
がすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
この作品は下記サイトにも掲載しています。
■アルファポリス:
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/960437777
■ほっこりファンタジー小説
https://dream-eagles.com/fantasy-novel
■YouTube
https://www.youtube.com/@zundamon_fantasy折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-02-19 17:00:00
11653文字
会話率:0%
最果ての岬
荒れ狂う北海
最終更新:2024-02-07 12:15:23
237文字
会話率:0%