「お姉さま。私、タンポポの綿帽子が大嫌いなの。体がバラバラになって、遠くに散って離れてしまうのは寂しいもの。………生まれ変わっても、これだけは嫌だわ」
姉と二人、庭園でお茶を飲む昼下がり。
私の言葉に頷き、カモミールティーを一口だけ含ん
だ後、カップを置くお姉様。
「……そうなのね。貴女は」
お姉様は楽しげに呟きました。
お姉様は、前王妃イルビナ様の娘。
隣の魔法国の姫だったイルビナ様は、政略結婚で父(現国王エドマール)と結ばれました。隣国には魔法があり、その血を取り込むのが目的だったそうです。
そして生まれたのが、モニカお姉様。
けれど、イルビナ様は産後の肥立ちが悪く儚くなりました。
その後に王妃になったのが、現王妃の私の母ファルム。
父エドマールが、少なからず思っていた相手だったと(乳母に聞きました)。
本当はイルビナ様が存命中から、側妃の打診があったのですが断っていたそうです。
公爵の娘の母は上に3人の兄弟がいて、政略結婚は必要がない位、派閥の力もあったそう。
母はその時演劇に夢中で、それを知った父は何度も母を誘い観劇し、贈り物もたくさんしたそうです。
父の献身を無下にできずに受け入れ、求婚を受けた母。
既にその時、モニカお姉様は4歳。
彼女の周りには、イルビナ様と共に自国から来た侍女や侍従が遣えていました。
そして、彼らは怒っていました。
モニカお姉様に対する、国王の関わりが薄いからです。
「亡きお嬢様が不憫です。こんな野蛮な国に嫁がされ、この地で死んでしまうなんて」
「生きてさえいてくれれば、王子も産めたでしょうに」
「ああ。男児であったならば、王位は確実でしたのに」
「……離縁させて、国に帰してあげたかった。無駄に命を散らしてしまって………お嬢様……」
「王妃にばかり構い、モニカ様に会いにも来ない。あれで父と呼べるのか?」
みんな黙してモニカお姉様に遣えていましたが、彼女がいない所では先程のような愚痴が溢れていることを、彼女は知っていました。
「ああ。私ができることは、亡き母の祈願であるこの国の頂点に立つことだけなのね」
モニカお姉様はそう考え、懸命に学びを進めました。
王位の継承は、男女関係なく才能のあるものに渡されていたからです。
その間にも、父と母は睦まじく語り合い、私メリアンが生まれました。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-05-23 20:12:35
7706文字
会話率:27%
江戸の町で昨今流行りの裏稼業。
モノでもヒトでも依頼されれば何でも贋物を用意するというハッタリカタりの騙しの商売〈贋物屋〉。
その贋物屋の正体は同じく昨今流行りの芝居の一座、深山一座の看板女形の雪之丞と立役者の助三。彼らは卓越した演技
と幅広い人脈で困り事を抱えた依頼人を助けていく。
第三話「贋花嫁」
今回の依頼人は伊勢屋の娘のおみよ。
大店の娘が政略結婚を嫌って贋花嫁を依頼してきた。偽花嫁が婚礼を挙げて親達を油断させている間に自分は好きな男と駆け落ちをするつもりだとのこと。
政略結婚の相手は父親の同業者の中年男で、おみよは後添えとして迎えられるのである。だが、おみよには好きな男がいた。何年か前に町でちんぴらに絡まれているところを助けてくれた男である。その男・駒吉はまともな職にも就かずふらふらとしているような、箸にも棒にもかからぬ男であったが、おみよには優しいのである。おみよに泣きつかれ、贋物屋の人々は依頼を承諾する。仕掛人、つまり贋花嫁として雪之丞が任務を果たす。江戸一番の名女形の腕の見せ所であった。花嫁姿になった雪之丞は妹の菊弥が見ても惚れ惚れするような美しさであった。もったいなくもその美貌を綿帽子で隠し、おみよではないと悟られないようにして雪之丞は婚礼の席へと出向いていった。贋花嫁が婚礼をつつがなく済ましている間に、おみよは家を抜け出しは深山一座へと逃げ込む。そこで男と待ち合わせていたのである。
ところが、駒吉はいつまで経っても姿を現さなかった。
おみよは涙をふき固く決心した様子で、家には戻らぬと言い出した。雪之丞達は仕方なく二・三日、おみよの気の済むまで様子を見ることにしたのである。
ところが、その間におみよの父親の元に身の代金を要求する脅迫状が届いていたのであった。勿論、雪之丞達が出したわけではなく―――折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-01-03 20:47:44
80337文字
会話率:37%
第5回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』参加作品です。
キーワードは雪山・温泉・和菓子・帽子。
©2023 Wakatsuki
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1000文字
会話率:57%
心象素描(しんしょうスケッチ)実践研究
令和癸卯(ミズノトウ)肆拾 師走
弐陸捌参 伍 弐零弐参
綿帽子
三つ目心象素描実践研究ラボ
最終更新:2023-12-06 12:57:46
427文字
会話率:0%
心霊探偵スメラギシリーズで活躍する主人公スメラギと幼ななじみ美月龍之介が出会ったばかりのころのストーリー。
中学入学以来、生まれつきの白髪をからかわれてはケンカする日々を過ごしていたスメラギ。美月は彼の存在が気になりながらも声をかけられず
にいた。そんなある日、スメラギがかわいがっていたウサギが殺され……。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-03-06 00:00:00
11360文字
会話率:35%
タンポポの綿帽子が飛んでゆく。。
この作品はショートショートガーデンに投稿済みです。
https://short-short.garden/S-uCTpkV
最終更新:2021-05-09 20:45:41
230文字
会話率:0%
白い綿帽子が杏の目を焼く。
花嫁姿の彼女はとても美しい。けれど杏の心はすこしも晴れない。
彼の隣に立つのが自分だと思ったことなどなかった。なのに、正装した彼の横顔を遠くから見ているのがつらい。
「いまだけ、すこしの間でいいからお日
様を隠して。私が気持ちに蓋をするまで…」
twitter「#フォロワーさんが5秒で考えたタイトルからあらすじを作る」タグでexaさんにぶん投げたタイトルで考えてくださったあらすじを許可頂いたうえで使用した物語です。
なんか見たことある人物が出てきてますが、そこは作者なので()折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-05-08 15:17:29
2715文字
会話率:39%
豪商、大地主がお大尽なんて呼ばれて、そこの石畳を闊歩してた残り香が未だまだ漂って、午ひる下りになれば、お天道さんが傾くのとは逆に通りばかりか路地まで花街の色香が、ジトッと湧いて時分の話さ。初めて耳にしたときは、どこぞアタマの温あったかくな
った女の拵えばなしだとみんな思ったね。
家路へと歩き出すと、気配だけが二間と離れずに付いてくる。虫食いの明かりばかりの闇夜の道で、振り返らなくてもおとこの履き古して抜けた白いズボンから形の良いお尻が小気味よく左右に揺れているのは、わかっている。
翌朝、すぐに、そいつが鼻腔を擽ったくすぐったんだ。「お粥たいたから、食べようか」
鍋の蓋を開けると、開けるまでじっと中に潜んでいた蜂蜜の匂いが白い湯気と一緒になって四角い部屋の天井までを一気に包み込む。既におとこが用意してくれた茶碗と汁椀それぞれが湯気で綿帽子かぶったみたいになってちゃぶ台に並んでいた。熱いだろうからと、持ちやすいほうの汁椀を渡され、箸を入れる間髪もいらぬまま汁をすするように粥は腹に落ちていく。一息でなく、ゆっくり長い時間がかかっているのに、息をつかぬ長いときが挟まっても苦しくなることはない。水の生き物が故郷の海に戻った安堵感に抱かれた静かさのまま、経っていく。こんなにも鼻腔は蜂蜜の匂いで蓋をされているのに、お椀の中には白い米粒より見当たるものはない。
「米と小鍋、勝手に使ったよ」
三口で先に啜りすすり終えたおとこを見て、よくもこんなに熱いお粥を三口で啜れるものね、と思った。なにか言わなきゃと思ったが、一番に気になることに話が及ぶのが怖くて、二番目に気になることを聞いた。
「何が入ってるの、なんでこんな特別な味がするの」
おとこはそれには答えず、女が食べ終わるまで待って鍋と二つの椀を洗い始める。
「いずれ分かるさ」水の音に紛れていたが、振り返らずにそう言った。 折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-11-16 09:25:24
5777文字
会話率:36%
突然のことに戸惑う榛奈。両親の話に聞き入っているのだが、不安が徐々に大きくなる。
キーワード:
最終更新:2016-06-28 00:00:00
4326文字
会話率:48%
平和な日常に浸っている中学生の榛奈に、突然起こる生活の変化。当たり前の生活は、支えてくれる人がいるから成り立っていることに気づく。今まで家事全般をおこなってきた病気の母を通して、家族を支えるためにと考えて母の代わりをするようになる。ふとした
ことから目にした母の闘病日記。そこに書いてあった姿は、いつも見ていた母ではなかった。戸惑いつつも、すべてを受け入れる榛奈。自分もいつかは母のようになりたいと思いながらも家を出る。そして、、、折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2016-03-08 09:00:00
10413文字
会話率:48%
桜井染衣(さくらいそめい)は幼馴染みの梅原鶯(うめはらうぐいす)に恋心を抱いている。友人の藤柳紫輝(ふじやなぎむらさき)が応援してくれるが、同時にからかわれる毎日でもあった。
あるとき、染衣は部屋の机の上に花が生えていることに気づく。触る
ことのできない透明な花――恋花(こいばな)だった。
そしてその恋花の妖精ラナンキュラスまで現れる。恋心が膨らんでいくに従って恋花は色づき、恋が成就することで実になり種となるらしい。
ほのぼの恋愛もの……ではないかも?
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2011-11-17 01:22:36
113066文字
会話率:33%
知り合いから「綿帽子」というお題で、関西夫夫と命じられたお話です。
関西夫夫
関西弁で、字書きはできるのか? で、はじまった、このお話。
意味がわからない言葉があれば、連絡ください。ははははは。
最終更新:2011-01-07 09:48:09
8221文字
会話率:52%