ビルの窓から眺める風景。
真正面に見える街路樹の枝は、夏には力強い青々とした葉をつけ、秋には淡い黄色い葉になります。冬は葉の代わりに霜や雪で化粧をして、そして春には、淡いピンクの花びらをつけます。
それは、こんなコンクリートの建物が並
ぶ都会の中でも、四季を感じられ、情緒があります。
東京という土地は、周りの街並も慌ただしく姿を変え、形を変えてとしていくけど、この事務所はコンクリートや配線が剥き出しで、昔の姿のまま、時間が止まっているようにも感じます。
あくまでも、原色の赤いソファを除いてですが。
そう、ここは、アルクィン拝み屋探偵事務所です。
所長と、職員が二人だけの、総本山からすれば小さな小さな祓い屋です。
わたしは窓から外を眺め、彼女に色んなことを教えていきます。
「あれ見て、渡り鳥だよ。あの方向は臨海の方に飛んでいくのね。まだ少し寒いから、夏に成ったら見に行こうね。それより、八重洲口の桜がもうすぐだから、先にそっちを見に行こうね」
そう言うと、彼女は心なしか喜んでいる様子でした。
わたしは鼻歌を交えながら、その窓から、変わりゆく街並みを眺めていました。
そこで足音が聞こえ、わたしは慌てて彼女を消します。
古びれた音を立てて扉があき、所長が戻って来ました。
「おい、今、あれを出していただろ!」
そう怒り声を上げる所長の脇をすり抜け、わたしは逃げていく。
所長は長い黒髪をなびかせながら、追ってきました。
必死に逃げる、わたしの名は、折坂………、うわっ、捕まった!折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-10-22 12:01:29
39379文字
会話率:28%
ある頃から妻が園芸にハマったらしい。
庭に溢れる花の名前は『ジニア』。
花壇を埋めるピンクの花を、彼女は毎日見つめていた。
最終更新:2024-08-06 05:01:02
1166文字
会話率:30%
毎年、ピンクの花びらが舞い散る季節になると、必ず同じ夢を見る。もう何度目になるだろうか。だけど、何度見ても変わらない。あの夢の結末はいつも同じだった。
僕の伸ばした手が彼女に触れることはなく、彼女は泣き笑いのような表情を浮かべたまま。
夢の中に出てくるあの子が誰なのか、僕には分からない。だけど、あの子が夢の中の僕にとって特別な存在なのだということは分かる。
彼女の涙を拭うことが出来なくて悔しいという思いを抱いて目覚める度に、胸の奥がきゅっと締め付けられるような感覚に襲われる。それが夢に振り回されているみたいで、嫌だと思う。だから、僕は春という季節が、桜という花がいつからか好きではなくなった。
机の上に頬杖を突いてぼんやりと窓の外を眺めていると、ふわりと風に乗ってピンク色の花びらが飛んできた。ひらりと目の前を通り過ぎるそれに誘われるように目線を動かすと、誰もいないはずの校庭に人影を見つけた。
その姿をぼんやりと見ていた僕だったが、次の瞬間に僕は目を大きく見開いた。心臓が大きく跳ね上がる。
そこには――あの子がいた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-12-22 21:00:00
8004文字
会話率:16%
春。桜咲く季節。窓の外で今、風に乗ってどこからか飛んできたピンクの花びらが
はしゃぐ子供のようにくるくると宙を舞った。
今日はいい天気だ。なのに僕は……。
「ハァァクッショ! おい、あんちゃん、窓を閉めてくれよ。俺、花粉症なんだ」
「あ、はい……」折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-08-29 12:00:00
1368文字
会話率:57%
ラクーシャ王国の地方都市アイルベンの裏通りにひっそりと佇む一件の料理店があります。一年枯れる事のない不思議なピンクの花が庭に咲き誇るそのお店では、黒髪黒目の少年と庭に咲いている不思議な木の花弁と同じ色合いをした髪をしたウェイトレスが様々な
想いを抱えたお客様をお待ちしています。そしてそのお店では、王国中を探しても見つからないような不思議な料理と、沢山の物語に溢れた本の数々が楽しめるそうです。
当店の営業日(更新日)は不定期ですが、突然閉店(エタる)することはしませんので、ご安心ください。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-06-21 23:00:22
101715文字
会話率:30%
生まれ変わった先は、お姫様がいて王子様もいる、所謂お伽話の国だった。だがそんな華やかな世界とは縁の無い庶民のアイリスは、今日も実家のレストランのお手伝いに明け暮れる。ある日、一人の騎士から受け取ったピンクの花束には、ちゃんとした意味があった
らしい。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-02-09 00:20:54
27065文字
会話率:44%