乖離している。『私』と「私」が。
最終更新:2023-12-10 17:17:54
2544文字
会話率:8%
女性の写真集にはありがちなケースかもしれない。
写真によって、同一人物かと疑うほど、別人のようなテイストを感じるときがある。
長野の戸隠高原のキャンプ場に来ていた山県と保阪。
最近、保阪はふさぎ込んでいた。2週間前、購入した女優、見座リ
ツコの写真集を見てから違和感を憶え、まるで自分の足元が崩れていくようだと不安を訴えるのだ。
山県は、その写真集を自分の眼で確かめる。
なるほど、保阪の言うことも頷ける。写真集特有の振れ幅の大きさは否めず、どれが本来の見座 リツコの容姿であったか、混乱してしまうほど。
よくよく考えてみれば、二人は女優、見座について詳しいことを知らない。というか、見座についての記憶があやふやなのだ。まるで脳をまさぐられ、なんらかの施術を受けたかのように……。
見座 リツコについて、スマホを使って情報収集を行うことにした。
SNSやネットニュースではよからぬゴシップであふれ、得体の知れない怪情報が次々と明るみに出る。
二人は点と点をつなぎ、見座が何者なのか議論を交わした。――そして、とんでもない結論にたどり着くのだった。
実は見座 リツコこそ、地球外からやってきた侵略者、あるいは植物型のミュータントではないか?
ネットの世界では、見座にまつわる怪情報が出回っているにもかかわらず、なぜ大事にならないのか?
よもや、それすら『なかったことに』できる力で、操作されているとしたら?
山県と保阪は地球の存亡を賭けて、見座の侵略に対抗すべく知恵を絞っているときだった……。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-11-08 21:17:18
21336文字
会話率:27%
三村 大知は現代の浦島太郎を体現したといってもよかった。
彼は『妣島(ははじま)サバイバル研修集団失踪事件』で30年ぶりに生還した1人だった。
政府機関に隔離され、2カ月にも及ぶのあらゆる検査を終え、ようやくこちら側に還ってきたというのに、
心は曇ったままだ。
かつての恋人、波多 真智子をドライブに連れ出し、悩みをぶつけることにする。
真智子もまた、妣島でなにがあったのか母親のように問いかけるのだが、三村は子どもっぽくはぐらかすしかない。
カーラジオから流れてきた音楽番組『大泉 仁志のミュージックG-LOC』でさえ、この集団失踪事件のことについて、あれこれ憶測で発言するほど、世間をにぎわせていた。
ディスクジョッキーたちの無責任なトークに苛立ちを憶えた三村は、ラジオ局に抗議の電話をかける。
応対したディレクターは、むしろ番組人気に火がつくと思い、三村に出演の交渉する。
そして生放送中、三村はスペシャルゲストとしてスタジオに飛び入り参加。ついに政府にも洩らさなかった集団失踪事件での真相を語りはじめる……。
「――まるでトラバサミに挟まれたも同然だった。おれたちは罠にかかったんだ」
三村たちは浦島太郎と同じく、異界へ行き、手厚いもてなしを受けたという。乙姫のような美女との契りまで交わしてしまった。
しかしそれは超えてはいけない一線だった。彼らは罰を受けたのだと告白するのだった……。
奇想天外な現代の龍宮城とは何か? そして謎の腰蓑姿の美女たちの狙いとは?
※本作は夏のホラー2022企画作です。テーマは『ラジオ』。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-08-13 06:12:52
52856文字
会話率:32%
「忠義一徹、死して護国の鬼となれ。それがおれたちに与えられた任務だ」
あまりの長きにわたる虜囚の身となったおれ。自身が何者であるかさえ忘れてしまったとは、なんたる不覚か。
いったい、おれは何者なのだ?
この仄暗い檻には、どうやらおれ以外
にも囚われの者がいるようだ。
意を決してそいつに接触を試み、話しかけるのだった。
鎖に繋がれたその男は言うのだった。
「これこそが城を建てるときの秘術なのだ。このことを黙っておけ。仮にこの秘密、洩らすことがあれば、そんなおしゃべりには呪いがくだされるであろう」折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-07-17 07:04:24
6088文字
会話率:17%
「自分」がどこかに行ってしまうこと
最終更新:2016-03-22 05:00:00
554文字
会話率:0%