17年前、和歌山県の紀伊大島で、ある老人から罪の告白を聞かさた。
太平洋戦争のとき、人を殺した重い十字架を背負っているのだというが……。
僕は戦争の悲惨さの一端を垣間見た。
最終更新:2023-08-13 08:34:01
3745文字
会話率:12%
三村 大知は現代の浦島太郎を体現したといってもよかった。
彼は『妣島(ははじま)サバイバル研修集団失踪事件』で30年ぶりに生還した1人だった。
政府機関に隔離され、2カ月にも及ぶのあらゆる検査を終え、ようやくこちら側に還ってきたというのに、
心は曇ったままだ。
かつての恋人、波多 真智子をドライブに連れ出し、悩みをぶつけることにする。
真智子もまた、妣島でなにがあったのか母親のように問いかけるのだが、三村は子どもっぽくはぐらかすしかない。
カーラジオから流れてきた音楽番組『大泉 仁志のミュージックG-LOC』でさえ、この集団失踪事件のことについて、あれこれ憶測で発言するほど、世間をにぎわせていた。
ディスクジョッキーたちの無責任なトークに苛立ちを憶えた三村は、ラジオ局に抗議の電話をかける。
応対したディレクターは、むしろ番組人気に火がつくと思い、三村に出演の交渉する。
そして生放送中、三村はスペシャルゲストとしてスタジオに飛び入り参加。ついに政府にも洩らさなかった集団失踪事件での真相を語りはじめる……。
「――まるでトラバサミに挟まれたも同然だった。おれたちは罠にかかったんだ」
三村たちは浦島太郎と同じく、異界へ行き、手厚いもてなしを受けたという。乙姫のような美女との契りまで交わしてしまった。
しかしそれは超えてはいけない一線だった。彼らは罰を受けたのだと告白するのだった……。
奇想天外な現代の龍宮城とは何か? そして謎の腰蓑姿の美女たちの狙いとは?
※本作は夏のホラー2022企画作です。テーマは『ラジオ』。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-08-13 06:12:52
52856文字
会話率:32%
伊豆七島の新島に、父親の葬儀のため帰ってきた葦原 麻衣。
奇しくも葬儀を終えた1月24日――声を出すのさえ慎み、夜は外出を控え、早く寝る『親だまり』の風習に従わなくてはならなかった。ましてや海の方角を見るのはもってのほかとされている。
そ
の晩は、かつて寛永5(1628)年の江戸時代、圧政を強いた悪代官、豊島 忠松が海で溺れ死に、海難法師となって帰ってくる日だと恐れられているのだ。
万が一ソレを見てしまうと、災いがふりかかり、最悪の場合、命を落とすという……。
麻衣は父が死んだ真相を探るべくタブーを犯す。
そして本当に、死のストーカーに追われる羽目になってしまったのだ!
夜の新島を町からはずれ、逃げ惑う麻衣。
恐怖から逃げてばかりいては物事は解決しない。真っ向からぶつかって対決すべきだ。
まいやんは知恵をふり絞り、海難法師を撃退しようと試みるのだった……。
※本作は家紋 武範さま主催「知略企画」参加作品です。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-01-24 05:00:00
30552文字
会話率:16%