そこは古びた石造りの小さな温泉宿だった。MP回復の湯が名物だが、ご存知のようにある程度の魔法はコインによっていつでも誰にでも使える。にもかかわらず客は引きもきらない。
部屋は二階も合わせて六部屋しかないが、どこも行き届いた手入れがなされ
、家具調度に床までも丁寧に磨きこまれ鈍く深い色で光っていた。清潔で、質素な装飾は、例えば一時のいろどりの切り花ではなく、鉢植えの魔法の花が窓辺に置かれている。壁に掛けられた絵の中の人物も客にやさしく微笑みかける。客用の小物……タオルや櫛や石鹸などにもさまざまな魔法が込められていて、それらを家に持ち帰り、やがて魔法の効果が切れるとまたこの宿に行きたくなるようになっていた。が、それらを求めることが目的でなく、何度も宿を訪れる人も多いと聞く。魔法はMPによって管理されるが、心を込めるとは、時間によって効力が消えうせるものではないのである。
旅人は孤独であり、放浪に身をやつし、いつも通り過ぎてゆく。体力の回復だけならば、王国の仕組みの適当な場所でいつでもできるようになっている。しかし、どんな人にもつかの間の休息は必要である。ここはあらゆる人にひとときの癒しを提供する魔法の宿だった。たとえ二度と消えることのない傷を抱えていたとしても……。
それはともあれ、そんな宿のレストランは、地元の人たちが集い語らう場になっていた。きょうも寡黙な亭主がつくる珍しい料理に舌鼓を打ちながら、馴染みの面々が果実酒を傾けながらどうでもいいようなことで話に花を咲かせている。
今日も今日とて、若女将が女学生だったときの昔の同級生が訪ねてきて……。
上は『異世界旅館』のための前文です。挿話のようにしか入らないのにメインのような扱いの旅館。冒険譚は子供たち、アニキたち、王女も過去に……。
こっちは設定です。創作に興味ない人は物語のほうをお楽しみください。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-02-02 19:39:52
20101文字
会話率:0%
そこは古びた石造りの小さな温泉宿だった。MP回復の湯が名物だが、ご存知のようにある程度の魔法は札やコインによっていつでも誰にでも使える。にもかかわらず客は引きもきらない。
部屋は二階も合わせて六部屋しかないが、どこも行き届いた手入れがな
され、家具調度に床までも丁寧に磨きこまれ鈍く深い色で光っていた。清潔で、質素な装飾は、例えば一時のいろどりの切り花ではなく、鉢植えの魔法の花が窓辺に置かれている。壁に掛けられた絵の中の人物も客にやさしく微笑みかける。客用の小物……タオルや櫛や石鹸などにもさまざまな魔法が込められていて、それらを家に持ち帰り、やがて魔法の効果が切れるとまたこの宿に行きたくなるようになっていた。が、それらを求めることが目的でなく、何度も宿を訪れる人も多いと聞く。魔法はMPによって管理されるが、心を込めるとは、時間によって効力が消えうせるものではないのである。
旅人は孤独であり、放浪に身をやつし、いつも通り過ぎてゆく。体力の回復だけならば、王国の仕組みの適当な場所でいつでもできるようになっている。しかし、どんな人にもつかの間の休息は必要である。ここはあらゆる人にひとときの癒しを提供する魔法の宿だった。たとえ二度と消えることのない傷を抱えていたとしても……。
※
それはともかく、そんな宿のレストランは、地元の人たちが集い語らう場になっていた。きょうも寡黙な亭主がつくる珍しい料理に舌鼓を打ちながら、馴染みの面々が果実酒を傾けながらどうでもいいようなことで話に花を咲かせている。
今日も今日とて、若女将が女学生だったときの昔の同級生が訪ねてきて……。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-02-02 19:28:00
264731文字
会話率:54%
婚約破棄された令嬢は国賓の方に果実酒をかけてしまった結果、隣国へと嫁ぐことに!?
※兄弟子本人は出てこないです。
最終更新:2024-05-06 00:00:21
3069文字
会話率:20%
「僕は勇者になりたいんだ」
甘えるばかりのその少年は、あの日からその言葉を糧に生き、自らの両の手に剣を持った姿を描き続けた。
「俺の旅についてこないか」
旅人は、分かたれた大陸を気の向くままに、風の吹くままに。
揺蕩う煙は歩を止め
ず、先を眺めるその瞳には、半分ばかりの世界があった。
「我が祖国の奪還だ」
類希なる才を持ち合わせた魔法使いは、その才覚を持ってして。ただ、唯一無二の力を持ってして。自らの父母の祖国奪還を願った。
デュボネ、タンカレー、アインベッカー、アマレット。
大きく4つに分かれた大国が統べる世界の、その小さな小さな欠片達。
その、一端の。
そんなお話。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-05-02 23:40:07
1809534文字
会話率:56%
この国を支えるのは、天にも届かんばかりの大きな木である。
木の上に国があり、木の下には海が広がっている。
精霊カカオと異世界人信吉は、不思議な国の話を聞いた。
美味しい海産物や塩が豊富で、果実酒も旨いとか。それは是非とも味わっ
てみたい。
そんな軽い気持ちで、カカオと信吉は海を渡り、噂の世界樹都市ローカルに辿り着いた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-10-20 05:03:26
252文字
会話率:12%
60歳になり現代社会に疲れた主人公(酒好き)が会社を辞めて田舎に
別荘兼果実園を買いそこで人生を見つめ直しながらお酒をつくり過ごす事になる
そこで出会う人と触れ合う事で主人公は少しずつ変化していく
出会う珍客、来客、共に過ごし一緒に酒を飲
み人生観を共有していく
そして家族(好きな人)になる人と出会う
ブランデーを片手に好きな人と庭で過ごす事になるのだった
序章
主人公は東京で働くサラリーマン家賃5万円のマンションに住んでいて
何不自由なく暮らしていたしかしある時、仕事で致命的な失敗をし
会社を辞める事に、嫌気がさした主人公は
退職金と貯金(6000万円)を片手にブランデー消費量1位の
新潟にやってくるのだった、そして年月が経ち
仲間達と共に五年目のブランデーを開けるのだった折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-07-18 22:20:19
3874文字
会話率:7%
適当な場所を見つけると、果実酒をラッパ飲みした。――後は雪が降るのを待つだけだ。
最終更新:2020-12-06 10:19:14
1104文字
会話率:14%
月にいる月兎の物語です。
今回は甘い香りに誘われて、夢うつつの銀兎のお話しです。
最終更新:2020-06-24 13:21:15
1616文字
会話率:15%
詩です。僕の得意ジャンルの一つです。ようこそ悪徳の世界へ。ではどうぞ〜♪
最終更新:2017-09-13 17:56:25
475文字
会話率:0%