暇を持て余す男がいた。映画やゲーム、読書といったありふれた娯楽にはとうの昔に飽きてしまい、今では眠り見る夢のほうが、まだいくらか楽しみだった。使い切れないほどの財産も、もはやなんの慰めにもならない。
眠気を誘おうと、大きなあくびを一つし
てみる。しかし、ついさっき目を覚ましたばかりでは、眠気など訪れるはずもない。
腹も減っておらず、また、さほど興味も湧かない。せめてどちらか一方の欲求が刺激されればと、男は建物内をぶらつくことにした。
すると、ふと棚に置かれた小さな香炉に目が留まった。古びて埃をかぶったそれには、蓋の上から厳重な封が施されていた。物好きだった祖父か父が、どこかの骨董市で手に入れたのかもしれない。高価そうには見えないが、安物と切って捨てるにはどこか妙な存在感があった。
曰く付きの代物かもしれない。いや、むしろそうであってほしい。退屈が紛れる。そう考えた男は、封を剥がし、そっと蓋を開けた。
すると次の瞬間、香炉から煙が勢いよく噴き上がった。男は思わず香炉を床に落とし、数歩後ずさった。
やがて、煙の中からまず手が現れ、続いて角が覗いた。その姿は、どう見ても――
「あ、悪魔……」
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最終更新:2025-07-16 11:00:00
1892文字
会話率:74%
バスから降りた男は、ぐぐぐっと伸びをしたあと、今度は体を前に曲げズボンの裾を少し捲り、足首を掻いた。
次いで、ふっーと息を吐くと辺りを見渡し、そして歩き始めた。
田舎町……いや、普通の町。少なくとも都会ではない。人の姿はそこそこ。店も
同じくそこそこ。パン屋、八百屋、花屋、ラーメン屋に床屋。ショッピングモールの類はなさそうだが『屋』が付く店は大体ありそうだった。
男はアパートの部屋に着くと荷物を放り投げ、畳の上に寝転び、そしてすぐにまた起きた。
もう少し見ておくか。
そう考えた男は部屋の鍵をかけ、近所をぶらつくことにした。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-12-12 11:00:00
2213文字
会話率:13%
ある日、瑶(ヨウ)は聖女召喚に巻き込まれた。
自分の隣には本命の「聖女」、召喚早々に蚊帳の外で冷遇生活が始まる──と思いきやヨウはその場にいた全員を殺害してしまう。
聖女のように癒しの力はないが、破壊の才能はあるらしい。
殺戮の後、聖女召喚
の首謀者の息子を「異世界ガイド」として連れ回しながら一先ず異世界をぶらつくことに。
ファンタジー世界かと思いきや近代的な異世界だった。これはSF、そしてファンタジーです。
この世界に殺人罪無いの!?ラッキー!──そんな話。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-12 22:15:16
84179文字
会話率:33%
泳ぐの大好き社会人が海に引きずり込まれ気づけば異世界転生して人魚に。人魚の慣習により人魚である事を隠しながら地上をぶらつくスローライフの始まりです。
最終更新:2025-06-09 00:20:14
29654文字
会話率:32%
異世界を放浪する旅人は、方々をぶらつくうち、いつの間にか神になっていた——!?
コメディーの中に世界の矛盾やシリアスを見せる!そして国王は、まさかの沼津平成!?
収拾がつかない程に、何も考えずに連載は進んでいくことになる——と思います!
完
結したらスピンオフ編作るかもね。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-12-01 17:40:09
524文字
会話率:35%
はるかアメリカから日本の片田舎へとホームステイしてきた日系二世の少女、ベガ・S(ステラ)・天川。高校生離れしたナイスバディな金髪碧眼の16歳。
ずっとアメリカ暮らしだったその少女は悲願であった日本へのホームステイを叶えるが、そこは憧れ
の大都会トーキョーではなく、シコクという島の片田舎だった。
金髪のポニーテールを揺らしながら山村をぶらつくベガは、山にこだまするエンジン音の多重奏を耳にして、遊園地かと胸躍らせながら、その発信源に向かう。
辿り着いたのは、山をくり抜いたような小さな盆地に舗装された、まるで迷路のようなアスファルトのコース、小さいけど確かにサーキットと呼べる場所。
そしてそこには、ほんの1m四方ほどしかない、可愛らしいミニマシーンがいくつもあった。
レーシングカート。
その出会いが、彼女の日本での生活を、人生で最高にエキサイティングなものへと変えていく。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-11-24 20:10:00
219294文字
会話率:40%
知らいない方からもそこにいる私の存在を当たり前に認識されている不思議
最終更新:2023-09-25 10:33:27
1704文字
会話率:0%
みそっかす召喚士ニカ・グラハムは、世界を救う為の勇者を召喚しようとしたが、召喚されたのは愛らしい猫だった。
魔王の侵攻が深刻となり、王都を落とされたら人間は滅亡のカウントダウンに入る。それを恐れた国王は、世界各地から凄腕の召喚士を呼び寄せ、
魔王を倒し世界を救う勇者を召喚するように命じた。
かわいいものしか召喚出来ないニカもまた、大召喚士アーティの弟子として王都に呼ばれる。
案の定、戦闘力とか全くなさそうな愛想だけが取り柄の可愛らしい猫を召喚し、王宮から追い出されてしまう。
行く当てもなく、かといってこのまま帰るわけにもいかなくなったニカは召喚した猫と共に王都をぶらつく。
猫が姿を消してから数年経過した王都で、猫はとても珍しい生き物として扱われ、国民達の心を次々と癒していく不思議な猫。
そんな時、魔王軍の侵攻が再び王都を襲う。
絶体絶命の危機を迎えたニカは、魔族と戦う為に強い生物を召喚しようと試みるがーー?折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-07-01 22:38:44
10802文字
会話率:34%
【カクヨムで30万PV突破!!】
主人公であるアーサーは魔法学校の教師だった。生徒の人気も高く順風満帆な生活を送っていた。
だが、ある日アーサーは学長から突然クビを言い渡される。「アーサーあなたは新人教師のニナに無理矢理キスをしましたね」
全く身に覚えのないアーサー。当然否定する。だが、これは水魔法教師レイモンドのワナだった。アーサーと学長の座を競っていたレイモンドはニナと共謀してアーサーをハメたのだ。
行く宛もなく街をぶらつくアーサー。そこで女性の悲鳴が聞こえアーサーが女性を助ける。するとその女性は元教え子の【聖女】エリスだった。そして元教え子の【不死】のミラーカもそこにはいた。
「先生が必要なんです。私達のギルドに入ってください!」元教え子の【聖女】に拾われたアーサー。そしてアーサーは徐々に自分の持つ【マテリアライズ】の能力が実は【魔王術】と呼ばれる能力だと気づくことに。
一方、アーサーをハメたレイモンドたちは、アーサーが実は想像以上に学園に貢献していたことに気づき破滅していくことに……
主人公が溺愛され、卑怯な敵が破滅していく話です。
ヒロイン達とのイチャイチャ多め、ざまぁ多めの展開です。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-11-21 18:07:54
154293文字
会話率:44%
非モテな高校生の新藤誠也は、ひとり悲しく街をぶらつく立派なクリぼっち。
そんな彼だが、街中でばったりクラスメイトの黒木怜に出会う。
『クリスマスなんてクソくらえ、よ!』
街のツリーにクソの落書きをしながらそう叫ぶ彼女は、何やらクリ
スマスが憎いらしく、《ブラックサンタ》を名乗っては様々な迷惑行為に及んでいく。
新藤はそんな黒木と行動を共にするうちに、彼女の内なる思いに気が付いていくのだった。
※この小説はカクヨムにも投稿しています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-01-30 20:20:06
9660文字
会話率:50%
主人公はあまり周りからよく思われていなかった。そして主人公もまたそれを自覚していた。
他人からの評価にうんざりしていた主人公。そんな彼の日常は真夜中に外をぶらつくこと。
人があまりいない孤独な世界は彼を虜にした。
そしていつものようにまた
辺りをぶらついている主人公はある少女に出会う……。折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2020-04-30 20:50:30
911文字
会話率:38%
エイマール王国の国王″クリストフ″は無事、息子の戴冠式を終え、四十年ほどの国政というステージから降りることになる。
王子……次期国王は聡明で、また国も安泰だと国民も大層喜んでいた。もちろんクリストフもそう確信していた。
――だが、クリ
ストフにはもう一つの顔があった。彼は日本からこの世界に転生してきた者だったのだ。
「俺の四十年……今から取り戻せるか……?」
転生先は王家で何一つ不自由なく暮らせたものの、魔王は討伐された後で、王家の帝王学は厳しく、遊んでいる暇などなく、転生したのにその醍醐味を何一つ味わうことなくおっさんになってしまったのだ!
これはそんな彼が国王を退位した後、世界を適当にぶらつく冒険譚である。
※エイプリールフール用の一話完結物語です! 続かないのでご注意を!折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-04-05 23:09:15
4381文字
会話率:67%
青年如月楓(きさらぎかえで)と桐ヶ谷泰我(きりがやたいが)はいつも通り街をぶらつくつもりだった。
この後、悲劇が起こるとは知らずに...
《主要人物》
如月楓(きさらぎかえで)
桐ヶ谷泰我(きりがやたいが)
泉奈緋色(いずなひいろ
)
御門蘭花(みかどらんか)折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-09-19 00:02:06
35991文字
会話率:45%
その日、退職届を提出した僕は、会社の帰りにたまたま開いていたバスに乗り込んだ。
バスが行きついたのは、裏野ドリームランドという遊園地。
閉園時間まであと30分。僕は園内をぶらつくことにした。
たどり着いた観覧車に乗ろうとすると、入り口でおじ
いさんが「最後のお客さんだけどいい?」と聞いてきた。僕はうなづき、観覧車に乗り込んだ・・・。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-07-30 11:32:16
5220文字
会話率:20%
大学三年の篠田はるは、学校をサボりカメラを片手にぶらつく日々を過ごしていた。そんな退屈な繰り返される一日の中、不意に蘇るささやかな出来事たち。そして今日も新たな出来事が、思い出がまた一つと生まれてゆく。「あなたは何気ない日常の風景に美しさを
見つけられますか?」折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2016-08-28 12:56:04
2949文字
会話率:30%
これってファンタジー的なものも、恋愛的なものも出ない陰鬱な小説です。
何かピンクな要素を願っているなら必ず失望しべきものです。
ただただ街を歩む小説に過ぎません。日記に似たものかもしれません。
多くの人がこのようなものを読むとは思いません。
悲しいだけですから。
なんの面白さも感じない人が大半のはずです。
でも僕は思うんです。
悲しい小説は人々の心を惑わせ、浮かばせ、やがて何らかの希望、
自分だけの悲しみだったはずの何かを解き放す力があるって。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2014-10-01 23:34:31
1108文字
会話率:0%
ずっとこの町で暮らしてきたけれど、それも今日まで。予想もしていなかった状況に戸惑い、ぼんやりと町をぶらつく男性。彼の今後はどうなるんでしょう。
最終更新:2013-02-28 00:12:54
1000文字
会話率:0%
これは少し不思議な世界のお話。
どんな世界にも人が集まれば街ができ、街が賑わえば人が集まる。しかし、表では生きられない人がいるのもまた事実。表の街があるならば、裏の街もあるのもまた事実。
そんな裏の街をぶらつく傭兵の主人公はとある街で謎の集
団に追いかけられている女性に出会う。助けを願われた主人公は対価に何を支払うかを問う。彼女はこう答えた。
「私の命でどうですか?」(「6倍数の御題様」よりお借りした御題を使用した作品です)折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2012-03-31 19:29:22
47324文字
会話率:50%