村から逃げ出して夕陽が三度落ちた。
集落はおろか人一人出会うこともない。
村の外がこれほど薄暗く気味が悪い場所だとは考えもしなかった。
穴の空いた布切れを見に纏い、静かな森をひたすら歩いた。
日の落ちる時間が早いこの時期は冷え込む。
村
を出てから、一度も食べ物を口にしていない。
喉を通ったのは、地面に溜まった泥水だけだ。
受けた拷問の影響で空腹には慣れていたが、歩き続けていることもあり限界が近かった。
大人たちは、今でも僕を探して森中を駆け回っているのだろう。
僕の両親を殺した男のセリフが頭に浮かぶ。
彼は縛られた母親の髪に火をつけながら「悪魔の親が」と言って舌を打った。
『生きる災い』
村の人たちは口を揃えて僕をそう呼んだ。
見るたびに暴力を振るい、罵詈雑言を浴びせた。
怨恨を感じ取ることはできたが、嘲りなどは一切感じられなかった。
心から僕を恨んでいたのだろう。
僕と関わりを持った人たちはみんな『不幸』になった。
ある人は不治の病になり、やがてその病気は流行病となって村人たちの命を奪った。
僕が畑仕事をした翌年には虫が大量に発生し、蝗害となって食糧難が訪れた。
友人は雷に打たれて命を落とし、幼い頃に思いを寄せていた女の子は賊に連れ去られて行方をくらませた。
「誰かを幸せにしたいって、そんなに贅沢な望みかな」
黒い雲が張り詰めた空を見上げて呟く。
雨粒が額の上で弾けた。
雨が降ってきたらしい。
身体は冷えていく一方だが、しばらく飲み水に困ることはなさそうだ。
指に嵌めた父親の形見を見る。
殺される前日にくれたものだ。
僕が生まれた日に母親にプレゼントしたものらしい。
大切な人ができたら、その人の指に嵌めてやれと言われたことを覚えている。
きらりと光る鉛のようなこの装身具の名前を僕は知らない。
けれど父親から話を聞いて、これを指に嵌めることで誰かを幸せにできることは知っていた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-12-31 14:43:55
9310文字
会話率:26%
主人公シンジはラピス、トルー、マリンの三人と共に装備品と装身具の店『ウォーティー』を経営していた。店の売り上げも上々で何の不自由もない毎日を送っているシンジたちだが、彼らには秘密があった。ただの店舗経営者として暮らしていく中で、厄介ごとに巻
き込まれながらも隠し通そうとする彼らの秘密とは……。
これはのんびり生活を送りながらも、厄介ごとに巻き込まれていく、ごく普通(?)な装備品と装身具のお店の話である。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-07-23 18:00:00
63512文字
会話率:57%
華族の御曹司との婚礼を控えた社長令嬢・小野寺真弓。
独身時代最後の誕生祝いとして母より贈られたのは、家族の想いが込められた装身具だった…
※本作品は、黒森 冬炎様御主催の「ミラクル•チェンジ〜改造企画〜」参加作品で御座います。
最終更新:2022-02-01 06:56:23
4302文字
会話率:30%
冤罪から死刑囚となり、片眼に紋章を刻まれ「咎目(とがめ)」となったユウリ。
逃亡の末たどり着いた街で、幼くも才能あふれる少女、ギルと出会う。
ギルは腕輪などの装身具に紋章を刻むことで、能力者としての力を引き出す「紋章彫金師」だった。
用心棒
として日銭を稼ぎつつ、未だ囚われの仲間たちを救う旅の資金を貯めるユウリに、ギルは専属彫金師を申し出る――――。
毎日21時更新
*以前に某ラノベの賞に応募したものです。
今から読み直すとシナリオのひねりのなさに苦笑いしてしまいますが、
当時一生懸命に書いた&今でも好きな作品なので、供養のため連載したいと思います (‐人‐)折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-02-18 21:00:00
90448文字
会話率:46%
また大和朝廷が勢力を伸ばし続けていた時のこと。
とある豪族がおさめる土地では、低地の集落の他に、敵に攻められた時に立てこもるための拠点として、高地にも集落をつくっていました。
そこに住まう者は、装身具をはじめとするいくつかの決まり事を守る
必要があり……。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-11-05 20:00:00
3995文字
会話率:3%
ミルカ・ロッソは、ロッソ家の長女である。聖女と勇者である両親の間に生まれた聖勇者であるミルカは、過去のトラウマから、生来の名前であるミルルをミルカに改名して暮らしている。
とある事情から、結婚相手を焦って探しているミルカは、美貌の女店主フラ
ンシーヌ・ラグニスの護衛をしている。全くモテない自分の目の前で、フランシーヌはモテまくっている。そんな状況にイライラと日々を過ごしていた所、フランシーヌの屋敷で泥棒が出る為、同居をして欲しいと提案される事になった。
断る予定だったものの、ミルカはフランシーヌにいきなり耳に付けられたイヤリングが外せなくなってしまい屋敷を訪れると、見た事も無い男が屋敷に中に居た。それは泥棒ではなくて、フランシーヌの本来の姿、フランだった。何と、フランシーヌは男だったのだ。
フランシーヌ改めフランは、聖勇者の前に、世界を守っていた旧聖者の末裔で、体内に微量だが天使の魂を内包しており、先祖の記憶を持っている。その為、先祖を救わなかった神を憎んでおり、ミルカに秘密を開示して護衛を頼むように天啓が下った事に腹を立てていた。その為、旧聖者の持つ法術と呼ばれる不思議な力で作った法術装身具(イヤリング)で短い命令をする事が出来る様にしたのだった。
ミルカを神の道具だと言い切り、綺麗にして、権力のある男を宛がうと言うフランと、傷つきつつも、孤独なフランを理解しようとする聖勇者ミルカの話。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-09-02 07:00:00
107188文字
会話率:44%
皆さん、おはようございます。こんにちは。こんばんは。私は電子事務情報処理ロボット『事務子』と申します。私は電子関係に強いロボットです。こんな私ですが、皆さんのお役に立てる事を常々願っております。
さて、そんな私のとある一日を短編として
まとめました。是非ともご覧ください。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-02-22 17:02:18
4930文字
会話率:37%
この物語は、誰も深層部に到達したことのないラストダンジョン「エスタリーク」に隣接する最後の都市に住む、変わり種の魔法装身具職人ダーリのとある日常の話―――かもしれない。
新人潰しで有名の商業区「最後の砦」に、ある日突然店「ダーリ」という凡
庸な名前の魔法装身具職人が店を構えた。開店当日はごたついたものの、「なぜか」翌日には収束し、現在では日々の商売も上々で、上得意客が連日店に訪れる。いわゆる「生計以上の利益が出るレベル」の魔法装身具職人である。
ギルドマスターや商業区組合も一目も、二目も置く不思議な人物だ。
その「ダーリ」の魔法装身具店に今日も「他では決して取り扱いがない」世界でただ一つの目当ての品を求めて、珍客たちが訪れる。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2016-06-02 06:53:00
20107文字
会話率:27%
異世界を渡り歩く少女。
彼女が前にいた世界で起こった出来事を、取材した男の視点で書いた物語。
メルヘンファンタジーの異世界で不思議な力を使い、何でも屋を営んでいる少女。
しかしその力がやがて世界のバランスを崩す事になってゆく。
メルヘン
xSFのバトルものです。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2015-09-27 01:55:25
69853文字
会話率:29%
ティル・ナ・ノーグの街で装身具店を構えるゾロは、あるとき妖精の森で行き倒れの少女と出会い――
老舗アクセサリショップを中心に紡がれる名前の無い男の話。
(タチバナ ナツメさん主催の西洋FT創作企画『ティル・ナ・ノーグの唄』参加作品。)
※PC以外からご覧の場合、簡体字などが文字化けして表示されない可能性があります。また、そうした場合に敢えてルビを振っていないことがあります。仕様ですのでどうぞご容赦ください。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2013-07-05 18:01:02
33029文字
会話率:21%
もっといいネタを手に入れるには?
悩める青年アールは、商店街の片隅で妙な名前の装身具店を見つける――
老舗アクセサリショップを中心に紡がれる青年と狐人の小話。
(西洋FT創作企画『ティル・ナ・ノーグの唄』参加作品です。)
※PC閲覧の為
に一部実際の読みとルビが合っていない部分があります。モバイル端末からご覧の方はご容赦ください。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2012-12-24 00:13:10
61855文字
会話率:42%