吉原大門の落とす陰には悪鬼が棲むという。
吉原の遊女達を閉じ込める象徴の大門。
毎夜の春をひさぐ女達の哀しみと怨念は、渦巻く波となって毎夜吉原大門に向かって怒濤の如く押し寄せる。
しかし大門に棲む悪鬼はその渦巻く波を悉く跳ね返すのだ。
そし
て跳ね返された渦巻く波は再び濁流となって吉原の中之町に流れ込んで行く。
その渦巻く波と悪鬼が棲む吉原大門を楼閣の二階からいつも眺めている一人の遊女が居た。
本編の主人公、松ノ尾太夫である。
彼女が吉原に売られてきたいきさつとは?
どのようにして太夫の地位まで登り詰めたのか?
当時の吉原のしきたりや文化、そして吉原で生きる遊女達の様々な運命と共に、力強くしなやかに生きていく松ノ尾の姿を描き出します。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-03-30 13:31:15
45564文字
会話率:44%
江戸期、紅花の商いで大儲けした、実在の紅花商人の豪快な逸話を元にした物語である。
出羽尾花沢で「島田屋」の看板を掲げて紅花商をしている鈴木七右衛門は、地元で紅花を仕入れて江戸や京で売り利益を得ていた。七右衛門には心を寄せる女がいた。吉
原の遊女で、高尾太夫を襲名したたかである。
花を仕入れて江戸に来た七右衛門は、競を行ったが問屋は一人も来なかった。
七右衛門が吉原で遊ぶことを快く思わない問屋達が嫌がらせをして、示し合わせて行かなかったのだ。
事情を知った七右衛門は怒り、持って来た紅花を品川の海岸で燃やすと宣言する。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-08-26 12:22:25
24283文字
会話率:52%
廓(くるわ)の刃物研ぎを生業(なりわい)にしている五助の店では、毎月十九日、いつも剃刀が一挺(いっちょう)なくなるという。そして、なくなった剃刀はどこかの楼で見つかる。店前で若い者とそんな話をしていると、通りかかった五助の古くからの友人であ
る鏡研ぎ職人の作平が聞きつけ、実は……と、同じ十九日に関して、自分が研いた鏡の話をし出す。
曰く、昔、吉原の遊女が自分を捨てようとした男を殺そうと剃刀で刺そうとするが、男が手にしていた鏡に遮られ、思いを果たせず、そのため女は自ら自害したという。月は違うが、その日が同じ十九日で、そんな因縁のある剃刀と鏡である。
時を経ても、吉原においては自害した遊女の怨念は消滅しておらず、それが、十九日、再び事件を誘発することとなる。
剃刀研ぎの五助と、鏡研ぎの作平が遭遇する遊里における怪談話。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-04-26 08:01:27
39893文字
会話率:30%
国家老嫡男の秀克は、藩主御息女との祝言の話が決まる。なんの期待もなく義務感でそれを了承した秀克は、参勤交代について江戸へ行き、見聞を広めよと命じられた。着いた江戸では新しい剣友もでき、藩で起こった事件を巡るトラブルにも首を突っ込むことにな
るが、その過程で再会した子供の頃に淡い恋心を抱き合っていた幼馴染は、吉原で遊女になっていた。武家の義務としての婚姻と、藩を揺るがす事件の真相究明。秀克は、己の心にどう向き合うのか。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-06-17 00:00:00
46940文字
会話率:51%
吉原の遊女、籠目の唄
最終更新:2019-08-01 16:22:50
5320文字
会話率:23%