月の呼吸の音さえ聞こえそうな程の、静かな夜。僕はリビングのテーブルに座り、コーヒーを飲んでいた。時計が針を進める音だけが、辺りに響いていた。僕は何を思うわけでもなく、瞳を閉じたり、手を見つめたりしていた。
人の気配がして後ろを振り返ると
、七歳になる娘が立っていた。暗闇の中、薄紅色のパジャマだけが浮かび上がっていた。僕は何故か、娘は僕の命を奪いに来たのかもしれない、という錯覚に襲われた。冷たい汗が、背中を伝った。僕は娘を恐ろしく思ってしまった自分の思いを吹き飛ばすために、強い声で言った。
「どうしたんだ、眠れないのか」
「うん」娘は不安そうに言った。僕に怒られるんじゃないかと心配しているのだ。
幸いな事に、明日は日曜日で僕の仕事も休みなので、娘を横に座らせ、すこしお喋りをする事にした。それに、さっき僕が感じた不吉な思いは間違いで、僕は娘を愛しているんだという事を確認したかった。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2010-04-16 11:08:05
3526文字
会話率:51%
少年は殻を持っていた。ここで言う殻を、心の壁とか、他人との境界線と置き換えても差し支えはない。殻と言うものは、少なからず皆持っているものだが、少年の持つ殻は他人のものよりはるかに高く、堅かった。
その殻は、肉体的で、精神的で、現実で、幻
想だった。殻は少年に向けられたあらゆる作用を遮断し、彼の考えをその身を震わさん程反響させた。そうして、少年は、あくまで他の人にとってはと言う事だが、特異な人間になった。
夏のある暑い日。財布、携帯電話、MDウォークマン、少し迷ってから果物ナイフをポケットに入れ、少年は家を出た。本当の母親に会うために。太陽が少年の姿を照らし、風が少年の影を揺らした。少年にとっては、太陽が無邪気を演じ、風が無関心を装っているように感じられた。まるで道化師のようだな、と少年は思った。いずれ、笑いながら僕達を傷つけて来るかもしれない。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2010-04-16 11:01:57
9728文字
会話率:21%
「死ぬってどういう事だと思う?」と彼女は言った。
僕は驚いて彼女を見つめた。彼女は真っ直ぐ僕の瞳を見ていた。彼女の瞳は非現実的な程澄んでいた。彼女の瞳を通して、彼女の内面の世界が覗けるような気がするほどだった。でもそれと同時に、彼女が僕
からとても遠くの場所に在るのだという事が分かった。まるで空の上から見つめられているような気がした。
「さあ、わからないな。僕は死んだことがないからね」と言って僕は笑おうとしたが、上手く笑えなかった。
彼女はまだ僕の瞳を見つめていた。まるで僕の中にある答えを見つけ出そうとするように。
「死ぬってことがどういう事かは分からない。でも死後の世界なら分かるっていうか、想像がつく」と僕は言った。
「死後の世界?」と彼女は繰り返した。それは詩の一編のように静かに響いた。
「そう。死んだ人が行く世界は、この世界と全く同じだと思うんだ。パラレルワールドみたいにね」
「全く同じなの?」
「いや、一つだけ違う所がある。じゃないと自分が死んだ事が分からないからね。違う所は一つだけ」と言って僕は指を一本立てた。
彼女は僕の指を珍しいものでも見るかのように、見つめていた。
「自分の愛した人がいないんだ。自分が一番いて欲しい人がその世界にはいない。つまり、死んだ人も、残された人もいる世界は同じなんだ。まあ、これは相思相愛の場合だけだけどね」
僕は話が終わった事を示すためにお酒を飲んだ。
彼女は何かを確認するかのように、ゆっくりと頷いた。僕の言った事について、何か考えているようだった。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2010-04-16 10:59:16
11859文字
会話率:21%
マンション管理人のオハナシを書きました。
笑っていただけたら嬉しいです。
なお、Dnovelsというサイトにもアップしてます。
最終更新:2010-04-11 19:25:50
5167文字
会話率:31%
タイムマシン、アップル一号の完成は世間を大いに沸かせたが、しかし大昔への初航海で当時の人類を連れ帰ったときの反響に比べれば、それはずっと小さかった。そして、科学者の不眠不休の努力によってその古代人と会話ができるようになった時、世間の人々は
すでに完成時の興奮を忘れてしまっていた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2010-04-07 21:20:23
1097文字
会話率:62%
手が触れ合ったその瞬間、響に恋した基樹。
告白、そして二人のそれから。
最終更新:2010-04-07 12:33:56
8498文字
会話率:36%
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キーワード:
最終更新:2010-04-06 21:27:29
366文字
会話率:100%
3月20日。僕は憂鬱だった。今夜7時から営業第二課の担当内会議がある。会議の内容自体はなんてことないのだが、最近、担当内の空気が著しく悪い。僕を含むメンバー4人が1時間も顔を突き合わせて議論をすれば、どんな事態になるかわからない。
会
議が進むに連れ、明らかにされていくそれぞれの人間関係。秘密。皆が隠そうとしている真実とは何なのか?
映画「キサラギ」の影響で書きました。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2010-04-04 23:36:34
13796文字
会話率:51%
公立高校に通う平々々凡々々な男子高校生、仲嶋(なかじま) 流時(りゅうじ)は姉、流華(るか)に買い物を頼まれて無事に買い物を終える。
それから帰り道に近道となるゴーストマンションを通り抜けようとすると悲鳴が響き渡った。
助けようか見捨てよう
か迷った末に助けることにした流時は何を血迷ったのか助けることを決心する。
そして血迷った流時が目にしたのはこの世のものとは思えない光景だった。
お嬢様出ません。
メイド出ません。
ツンデレ出ません。
ツンドラ出ません
クーデレ出ません。
カンテレ出ません。
ヤンデレ出ません。
サクシャ出ません。
ポニーテール出ません。
サイドテール出ません。
ツインテール出ません。
日本人出ません。
外国人出ません
金髪出ません。
銀髪出ません。
黒髪出ません。
日本ではありません。
地球ではありません。
関西ではありません。
ラノベではありません。
純文学です。
大学生出ません。
高校生出ません。
中学生出ません。
さて上記の中に嘘が含まれているかもしれません。
見つけた方はご連絡ください。
誠心誠意真心込めてとぼけさせていただきます。
よかったら感想・評価などをください。
いただけましたら執筆速度が1.00000000000000000001早くなります。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2010-03-31 23:59:59
20468文字
会話率:36%
異能な少年。異常な少女。意味不明な周囲達が引き起こす青春系ライトノベル(予定は決定しかし不安定)。
なお、作者は西尾維新さんや入間人間さんなどに影響受けまくり(の割には語力がない)です。
なので、そう言った方々の作品が苦手な方には不愉快か
もしれないコトを記述しておきます。
よろしければ、綺譚や遠慮のない評価や感想も糧に頑張りたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
今現在、episode1から構成を大幅にやり直しておりますので、新話更新は多少おくれそうです!すいません!
episode1;温泉旅館殺人事変『細工者』
episode2;連続殺人鬼『自殺有段者』
episode3;学園大量殺人忌憚『無味感覚』
episode4;最小異常戦争『最強(フェイク)』『絶滅亡却抹虐殺戮破壊(クリーン)』『万物留転(アップロード)』『狗噛(イコールプラス)』『七枷(ラストナンバー)』『絶対勝利(アグリエッドスクランブル)』VS『不死身(アローン)』『嘘吐き(イエスマン)』『最弱(ポイント)』『過剰風月(フレキシブルロジック)』『黄色信号(フラッグ)』+『完全存在(レゾンデートル)』
episode5;端的個人関係『因果呼応』
episode6;愛情既成犠牲『最悪幸福』
までのプロットはほぼ完璧に完成していますので、執筆をなるだけいそぎます。
episode7;は以降未定の予定です。応援してくださると幸いです。読者数も伸びている昨今、頑張ります!折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2010-03-25 21:14:23
48744文字
会話率:19%
動物の遺伝子操作が一般的になったころ……
ある研究所で動物と人間のハーフ……「ハイブリッド・アニマル」の第一号が誕生する。
しかし、このハイブリッド・アニマルは人間を超えた能力を持っていた……
最終更新:2010-03-24 22:03:45
4243文字
会話率:27%
今年の春、高校受験に成功した主人公、橋本 力(はしもと りき)は、都内にある大学付属高校に入学する。友達とバカやってきます。いろいろな、バカやっていきます。そう、いろいろな…
最終更新:2010-03-13 14:57:22
3140文字
会話率:38%
10年前に桜の木の下で別れた2人。「10年後にここで待ってるから」その言葉を胸に秘め、お互いが新しい生活に踏み出した。
しかし、10年後・・・。
お互いが逢える日を待ち望んでいた日。既に桜の姿が無くなってしまった、その場所で悲劇が襲う。想い
はそれぞれの心に響く事はなく、運命の悪戯が2人を翻弄する。
2人は無事に逢えるのか・・・?折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2010-03-04 21:08:17
23260文字
会話率:61%
誰の特別にもなれなかった主人公はもう恋なんてしないと決意する。その決意は間違った方向へすすんでいくのだが…
最終更新:2010-03-04 15:15:03
2739文字
会話率:35%
主人公『冬見隆史(ふゆみ たかし)』は、ある夜のマンション屋上で、銃で自殺をしようとしてそれを少女に止められる。
名乗る名は、幽(かすか)。腐っても屋上、風は髪をあわやかき乱すほどだいうのに微動だにしない彼女の純白のワンピース。
予言めいた言葉を言い放った。
「あなたは、ここでは死ねない」
「死に場所を、あげる――」
次の日から起こる連続銃殺。最初の事件に立ち会った主人公は、以前敏腕刑事として名をはせていた父親の同僚に事情聴取を受け、使われた弾や薬莢の成分から、使われた凶器が「自分が捨てた銃」であることを悟る。
一日に一人ずつ殺されていく。銃を捨てた自責からか、捜査に協力する主人公。幽が現れなくとも脳内に響く残弾を知らせるカウントダウン。主人公を囲うように知り合いを殺されていき、それはまるで主人公の現世への最後の未練を一本ずつ断ち切っていくよう。いつしか六発目の弾丸が自分を射貫くのではないか――そう思うようになった。
証拠はわずかしかない。必ず殺されていく。何せ一日に1人殺されると言うことは弾数に対応して事件は6日であり、それはあまりにも警察の操作能力範疇を超えるハイスピードな殺人だった。六発限界を知る者も、また主人公のみ。
六発目の弾丸は、『必ず放たれる』。
止めることは出来ない。
―――― 弾は残り六発 ΦΦΦΦΦΦ ――――
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2010-03-03 17:57:57
225878文字
会話率:45%
吟露草は三日三晩歌をうたい、その命の幕を閉じる。
声の出ない片葉の吟露草は、己の生まれてきた意味を問う。
嘆き、絶望し、それでもうたう片葉の吟露草は、宇宙にその歌を響かせるのだった。
最終更新:2010-03-01 19:12:21
2319文字
会話率:25%
嵐を引き連れ永い旅を続ける二人の魔術師、アウンド・ブリュワー、ビース・テン。鐘楼に鐘の無い街にはブリキと鉛の鐘が鳴り響き、彼等の魔術でどんな街でも滅び去る……その少年はまったくその話を信じていた。嵐が来ている。なのに僕の街には鐘がない。少年
の嵐の一夜を描いた話。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2010-02-28 00:10:52
5887文字
会話率:36%
萌えるような春の気配が辺りに満ち、うぐいすこそ鳴かないにせよ、涼やかな風がふくひなたに寝ころんでいた彼は、グランドから響く『さくらさくら』に、もぞもぞと起きあがり、クツについた蒲公英の綿毛を手ではらって立ち上がる。しかたがないとぼやきながら
も決して後ろ向きではない選択を一つ携えて。
かきつばた的な作品。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2010-02-27 10:46:39
838文字
会話率:0%
唄が、響く。
生まれる僕の耳元で。
……世界はとても重くて、押しつぶされそうになるけれど。
唄が響く。
世界を満たす光のことを。生きる喜びと、生まれる意味を。
だから、きっと。僕は大丈夫だ。
最終更新:2009-11-22 19:15:36
2326文字
会話率:0%
主人公入間那世は幼児期、事故で両親を失い精神的な傷を負っていた。その傷により肉体的にも影響を及ぼされ続け、成長できない那世は数年間妹と共に馴染めない叔父の家で暮らしていたが、ある日、叔父の決断により治療と勉強を同時に行える病院施設へと暮らし
を移す事となる。別れの先で色々な変化が起こり、様々な人達と繋がり、精神病患者である少年少女と出会い、深まってゆく人間関係。やがて、徐々に成長して行く那世。その行く末とは……。物語中、多少暴力表現が含まれます。ご注意下さい。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2010-02-26 19:54:37
154958文字
会話率:51%
後漢末期、アジア全土に、ひいては世界に大きな影響を与えた大事件、後漢の滅亡が間近に迫る。
中華全土を旅する秀才宗爵は黄巾の乱の最中、仕えるべき君主を陳留の討伐軍に見出す。
張邈と宗爵は、悲運に見舞われ続けながらも、天命に抗い続ける
最終更新:2010-02-26 00:10:33
6212文字
会話率:11%
平凡な生活をおくる 主人公に突如襲った 真実と謎
この舞台の主を知っている人から主と触れあってきた…存在を知っている…たわいもないが記憶突如消えてしまう。
初めて知った 親の生涯
途方に暮れる主の物語。
この世のどこかに
人間機関という組織
がある
その組織の全貌は全人類の記憶を集めている…管理していって過言ではない
だがその深謀はわからない
また、実体もわからない
ただいえるのは
この組織が物語の鍵になり、その組織の影響で今が変わりつつあること。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2010-02-23 14:47:41
3081文字
会話率:58%
心にはいつもあなた。
あなたの声が頭でゆっくり響く。
好きだよ。
キーワード:
最終更新:2010-02-22 15:48:04
286文字
会話率:0%