プロローグ:観測されない存在
深夜の研究室。白いLED照明の光が、静まり返った室内を無機質に照らしている。量子コンピュータのモニターには、数式と波動関数が踊り、まるで命を持ったかのように変化を続けていた。
桐生湊(きりゅう みなと)は画面を
見つめながら、震える指先でキーボードを叩いた。彼の研究テーマは「量子もつれを用いた情報転送」。観測されることで初めて確定する量子状態――その不確定性に、人間の意識を適用する実験だった。
「……やはり、観測しない限り存在しないのか?」
独り言が虚空に消える。その時、モニターの端に見慣れないデータが浮かび上がった。
——観測されていない存在を検出。
湊は息を呑んだ。そんなはずはない。理論的には不可能なはずの数値が、目の前で証明されようとしている。彼は震える手でマウスを操作し、さらにデータを追った。すると、画面に浮かび上がったのは、一つの奇妙な名前だった。
『天宮(あまみや)玲奈』
彼はその名前に覚えがなかった。しかし、その瞬間から、彼の世界は量子の不確定性と共に揺らぎ始めることになる——。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-23 03:56:40
10454文字
会話率:43%
この宇宙は計算されつくしてしまった。
稀代の天才科学者が作ったスーパースーパースーパーコンピューター『ラプラスの悪魔+』はこの世界の全てを計算しつくしてこの世から曖昧さというものを失わせ、量子論でいう多世界の存在を否定していったのである。た
った一つのボーイ・ミーツ・ガールを残して。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-01-29 22:00:40
7528文字
会話率:55%
引っ越しの日が迫るにつれて、幼なじみのまふゆは俺に何かを言いたそうな様子。
しかし同時に、その何かは絶対に言わないという決意も、彼女からは感じられる。
煮え切らないままの二人の関係は、引っ越しを境に奇妙な方向へ転がりはじめた。
※サークル
機関誌からの転載
※ブログからの転載
http://vivit-jc.hatenablog.com/entry/20120202/1328182791折りたたむ>>続きをよむキーワード:
最終更新:2014-06-12 03:26:38
8672文字
会話率:65%