佐藤家では、毎年正月に「いとこ会」が開かれる。
社交的で親戚づきあいを大切にする陽太郎にとっては、当たり前の恒例行事。
けれど妻・優子にとっては、気疲れとストレスがつきまとう憂鬱な時間だった。
そんな中、今年のいとこ会で――“彼女”は現れ
た。
「実は結婚しまして……妻の、山本まどかです。」
長い髪、柔らかな笑み、そして不思議な距離感。
“いとこ”として現れた山本まどかは、無自覚に陽太郎の心をかき乱していく。
「手……大きいね!比べっこしよっか」
「もう少し、近づいてもいい……?」
「ねぇ、陽太郎くん……ふふっ」
まるで誘惑しているつもりのない彼女に、陽太郎はどんどん惹かれていく――
「もう……俺は逃れられない。」
その時――
「陽太郎、行くよ!」
……優子の声が、現実へと引き戻す。
揺れる心。
揺れる視線。
そして、揺らいでしまった“家庭”の輪郭。
いとこ会という日常の中で始まる、禁断のラブストーリー。
「家庭」か「衝動」か――あなたなら、どちらを選びますか?
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-21 15:16:33
13744文字
会話率:43%
女髪結が厳しく規制されている江戸時代。女髪結のお新は新吉原の見世「白木屋」の新造(若い遊女)である花駒と、彼女とよい仲の、白木屋で働く才三郎を騙し、花駒を家に連れ去る。困った白木屋は花駒を取り返そうと、侠客の花川戸助七をお新の家に送り込むが
...。
河竹黙阿弥作『梅雨小袖昔八丈』の主人公である髪結新三を女髪結お新に書き替えた歌舞伎脚本。三幕六場。
なお文中の「○」は歌舞伎の脚本において感情表現である「思入れ」や動作である「こなし」を示すものである。
カクヨムにも投稿予定。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-11-18 17:56:08
44005文字
会話率:81%
――ラップにおけるフリースタイル・バトル。
ビート上に即興の歌詞を乗せてラップし合い、そのスキルを競う戦い。
今はフリースタイル・ダンジョンという番組が有名なので、詳しく説明する必要はないだろう。
バトルの会場は、白木屋で予約したあくまで
普通の個室(カラオケ付)だ。
なぜ人が見ている外でやらないかというと、僕と奴はまだ初めて三か月の初心者ラッパーだし、なんていうかさ、恥ずかしいじゃん。
今回はまゆに審査員の役を務めてもらうように頼んだ。まゆは初め渋ったものの、僕らの熱意に負けて了承してくれた。まゆは不愛想だしマイペースだけど、悪い奴ではないのだ。
三者三様の闇と病みを抱えた三人が、いまここ(白木屋のカラオケ付個室)に集結し、不器用な魂の会話を開始する――。
※この作品は「カクヨム」「note」にも掲載しています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-06-16 23:14:20
5980文字
会話率:11%
上野不忍池端にある茶屋、白木屋の跡取り竹次郎は十七歳。ゆえあって、祖父母の家に引き取られてきた。その竹次郎の想い人は、従兄弟の勘解由。だが勘解由は妻を娶り、竹次郎の恋は片恋に終わる。しかしそんな竹次郎を、影になり日向になり、そっと見守り支え
てきたのは、勘解由の弟、慶介だった。やがて竹次郎も、ふとした事が切欠で、自分の中の慶介への想いに気付く。が、時遅く、竹次郎は、材木商遠州屋に拉致されてしまう。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2008-04-21 20:01:39
38397文字
会話率:37%