時は慶応四年(1868年)。
大政奉還が行われたにも関わらず、迫る官軍の影に江戸の人々は怯え、一部の武士は上野寛永寺に立てこもって徹底抗戦の構えを見せている。
若き御家人・能谷桑二郎も又、上野へ行く意思を固めていた。
吉原へ一晩泊り、馴染
みの遊女・汐路と熱い一時を過ごしたのも、この世の未練を断ち切る為だ。
翌朝、郭を出た桑二郎は、旧知の武士・戸倉伊助が「田吾作」と名乗る奇妙な女衒相手に往来で刀を抜き、手も足も出ない光景を目の当たりにする。
長い六尺棒を豪快に振るう田吾作の動きは何処か薩摩・示現流を彷彿させるもので、もしや密偵か、と勘繰る桑二郎。
伊助の仇を打つ名目で田吾作に喧嘩を売るものの、二人の戦いの行方は、汐路を巻き込み、彼の想定とは違う方向へ進んでいくのだった……。
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折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-09-29 07:34:01
10544文字
会話率:39%
時は幕末。江戸に暮らす商家山城屋の家族。代々女系を繋ぐ中で長女琴乃が長男貞之助を産んで死んだ。貞之助とその姉貴恵の母となった琴乃の妹雪乃。姉弟を育て上げるが、貴恵とはしっくりこない。
貞之助は十三になった。下に幸恵という妹もできた。貴恵は祖
母里久の後継として商いの勉強を始める。貴恵を恋しがって泣き暮らす貞之助を、里久は小僧修行へと差し向ける。その寺で貞之助は地獄に落ちるという不思議な体験をする。やさしい鬼たちと出会う貞之助。鬼の親方から「しこりをいくつも抱えていると碌な者にはならない」と言われ、しこりを吐き出せない姉はいつか地獄へ落ちるのだろうか。姉を救いたい。素直に気持ちを表せる姉にしたいと願う貞之助。しかし、貴恵と話せぬ内に、貞之助は雪乃から思わぬ事実を聞かされる。実の母が琴乃であると。驚きと疑念を抱く。その上、手代勘助から雪乃が琴乃を殺したと聞かされ、呆然とする。その夜、鬼たちが会いに来た。死んだ琴乃に会わせてくれるという。喜んだ貞之助は鬼たちとの再会を約束した。だが、その直前に貴恵の言った言葉に貞之助はいよいよ絶望する。自分が生まれたことで琴乃は死んだ。琴乃を殺したのは自分だったと悲嘆に暮れる。町をさまよう。行き着いた先は鬼たちと再会を期した神社の境内。そこへ鬼たちは迎えに来た。地獄で琴乃と会う。琴乃の口から「子を思う母の思い」を打ち明けられ、真っすぐ生きることを胸に誓う。そして、育ての母雪乃への思いも新たにする。
一方で、いなくなった貞之助を探しに出た雪乃を勘助がさらう。積年の思いを告白して心中を図ろうとする。そこへゴロツキが現れ二人を襲う。雪乃の危難を知った貞之助は鬼たちの助けを得て二人を救う。雪乃は自分を守ろうとした勘助を見直し、雪乃の思いに触れた勘助は性根を入れ替える。
徳川幕府の瓦解に抵抗するように幕臣が上野に集まっていた。その中には貴恵の恋人格之進も。彰義隊が敗戦したと聞いて走りだす貴恵。向かうは上野。しかし、薩摩軍に捕らえられ乱暴されかける。それをまた鬼たちが助ける。光明寺に運ばれた貴恵。彼女を見守る家族。雪乃の頼みで覚前和尚の説法を受けたみなは明日への道をもう一度見つめ直す。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-05-13 17:00:00
99467文字
会話率:57%
御家人奥村仁右衛門は師匠近藤勇 の死を見届け、沖田総司 に別れを告げ、
上野寛永寺の彰義隊の戦争に参加していた。
黒門口での激闘で意識をなくした彼は、赤子の泣き声に目を覚ます――
八犬伝を題材に、全く新しい新選組の物語が幕を開け
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折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-11-27 10:41:00
31532文字
会話率:31%