「山の上の神社に恋愛成就の神様がいる」
事の始まりは、そんな与太話だった。
――想いを寄せる月嶋想依との距離を少しでも近づけられるなら……
そんな願望を抱き、半信半疑で参拝した久遠京志郎は、荒廃し切った神社で青く眩い光を目にした。
翌日、京
志郎は高校の自分の下駄箱にラブレターを忍ばせようとする、一人の女生徒の姿を目撃してしまう。その白く透き通った肌と、黒く麗しい長髪、非常に端整な顔立ちを持つ美しい少女は、クラスメイトの黒咲楓歌だった。
――寡黙で誰とも接点を持ちたがらない楓歌が、どうして自分に?
もし告白されても、自分はそれに応える事が出来ない。手紙を読まずに返すと、楓歌は予想外の反応を見せた。
――神様のお手伝いになってください!
頭を垂れて、縋るような目で懇願する楓歌は、自分が神社の巫女であることを明かす。
恋愛成就の神・恋火は、その力や信仰を完全に失いかけており、楓歌は信仰を集めるために恋火に酷使されているのだという。
楓歌の身を案じた京志郎は、恋火の堕ちた信仰を取り戻すため、楓歌と共に生徒たちの恋煩いを癒す『恋のキューピッド』として奔走することを決意する。
同世代の恋愛の在り方、その甘美と苦悩を目の当たりにする中で、京志郎と楓歌自身も、恋愛と、人を想うことが何かを考えるようになる。
と同時に、楓歌は初めての親しい男子である京志郎を特別な存在だと認識し始め、不定形の暖かい感情を抱くようになる。
順調に願いを叶えていた矢先、一つの問題が起きる。
――二人って付き合ってるんだよね?
月嶋想依のその勘違いは、京志郎の願いを砕き、恋火への信仰を奪うのに容易かった。
このままでは京志郎と想依は決して結ばれず、恋火の復活も遠のく。
恋火は京志郎に言った。
――御主が想依に告白せよ
そうすれば、京志郎の願いも叶い、その成就が信仰心として恋火に還る。
楓歌は言い知れぬ複雑な感情を抱きつつも、恋火の言葉に従順に、京志郎と想依の密会をセッティングするのだった――
神さまあり!巫女あり!笑いあり!胸キュンあり?涙少なめの微ファンタジー学園ラブコメ!
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(この作品は長期連載していた作品を再編集したものです)折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2015-11-09 00:00:00
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