私には素晴らしい婚約者様がいる。
容姿、身分、頭脳、強さ――いずれも兼ね備えた、非の打ち所のない、誰もが羨む男性。
貴族の令嬢として悪くもなければ良くもない、そこそこの私には不釣り合いな人。
そんな彼は、何故か出会ったときから、私を愛してく
れている。
そして私は、何故か出会ったときから、婚約者様のことが嫌いだった。
彼が何をしたわけでもなく、ただ、一目見たそのときから。
どうして、私は婚約者様に愛情を抱けないのだろう?
どうしてあの夜会の日、思い浮かんだ見知らぬ光景の中、『死にゆく私』は呼んだのだろう。親しくもない、私を嫌う、軍人の名を。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2019-05-11 08:00:00
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