主人公の白糸葉奈子(しらいとはなこ)は、母方の叔母、豆島美富子(まめしまみとこ)の元勤務先JAを相手に金融ADRを起こす。ADRとは裁判によらない紛争解決方だが、不正をしていた美富子は優位な立場を利用してJAをも操作してうまく逃げる。実
は美富子は農協勤務時の二十代から巨額の横領をしていたが、母親の一族全員がそれを知っていた。誰もが美富子の罪を問えず、逆にそれを暴いた葉奈子が苦境に陥る。
本編は第一章「来し方」 で葉奈子の幼少時代並びに祖母の夕子(ゆうこ)の気鬱、並びに葉奈子と美富子との気まずい関係を書く。
第二章「行く末」 で一族の誰もが美富子の横領を知っていたことが判明する。金融ADRを起こした葉奈子に対し、母親の春子すら「あんたが勝手なことをしたせいで、姉妹仲がおかしくなってしもた」 と責める。
寡黙だった亡父公男、見栄っ張りの春子、巨大組織のJAや国会議員を後ろ盾に悠々と生きる美富子とその一族を対比させ、誠実とは何か、人生で何を一番大事にすべきかを問う小説です。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-02-22 06:00:00
108159文字
会話率:45%
舞台は江戸時代の駿河(するが)。加平は発話障害のある大人しい男です。旅の途中、籔から出てきたみすぼらしいなりをした男から一通の書状を手渡され、それを遠江(とおとうみ)に居る天田という人物に届けてほしいと頼まれます。お人好しの加平は訳も分から
ぬまま引き受けてしまうのですが、男が籔に逃げ込んだのち、その男を追っているという二人の侍(さむらい)が加平の前に現れて……。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-09-08 15:41:14
2781文字
会話率:32%