「お父様、私は一人でもちゃんと旅ができますから!」
天人と呼ばれる一族の娘ユリは、天人の里を出て人間の世界に足を踏み入れていた。これから一年、彼女は男爵令嬢という仮の身分で人間の世界を旅するのだ。一人前の天人として認められるための、試練の
旅だ。
しかしどういう訳か、その旅に彼女の育ての父シオンがついてきてしまった。大切な愛娘に一人旅などさせられないと、大真面目にそんなことを言って。
そして天人であるシオンは、ユリの兄にしか見えないほど若い姿をしていた。
「ユリ、どうせなら恋人のふりをするのはどうだろう?」
「却下です、『お兄様』」
ユリはつれなかったが、シオンは少しもめげることなく、彼女のそばに寄り添っていた。そのさまは兄妹というには少々親密に過ぎたが、ユリは気づいていなかった。
そうして旅を続けるうちに、色々なことがあった。友人ができたり、うっかりよその貴族にひとめぼれされたり。そんなあれこれを、彼女はシオンと共に楽しんだり乗り越えたりしていた。
そうしてある舞踏会で、ユリを目にしたある貴族が悲鳴を上げる。それをきっかけとして、ユリは家ひとつの存亡に関わる大騒ぎに巻き込まれていくのだった。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-03-18 12:23:09
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会話率:46%