目覚めたのは、午前5時47分。
覚えているのは、「紙がめくられる音」だけだった。
六年住んだマンションで、はじめて見る“張り紙”。
書かれていたのは「管理人」からの注意書き。
――だが、このマンションに管理人などいない。
少しず
つ狂い始める生活。
ドアの角度、時計の時間、鏡に映る自分の動作……
そして、俺の部屋には“俺の記録”が置かれていた。
「観察対象No.4 佐倉悠真」
誰が観ている? なぜ記録されている?
このマンションには、“観察者がいない”ということだけが確かだった――。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-01 13:35:20
6427文字
会話率:2%
剣道部主将、菊池直哉には彼女(愛上美穂)がいる。
交際してから五ヶ月の、俗に言う安定期に入った円満カップルの二人。
人受けのいい愛上美穂は、『ハイエナ』と影で呼ばれる謎の美少女、城ヶ崎冷夏と友達になってみたいと直哉に相談。しかし、直哉はとあ
る理由から乗り気ではなかった。
愛上から話をされる数日前、城ヶ崎冷夏は直哉に接触を図っていた。
「菊地直哉くん。私と浮気、してみない?」
美少女からの甘い誘い。しかし直哉は何も言い返さずに、ただ突き放す。
しかし、その後も城ヶ崎からのアプローチはとどまるところを知らなかった。
実家の剣道道場の経営難、母親の死、愛上美穂の悪い噂など、あらゆる点から攻め込み、菊地直哉を虜にしようと尽力する城ヶ崎。彼女を突き動かすのは、他のなにでもなく『奪いたい』と言う欲求のみ。
そして直哉は次第に……
「菊池くん。私に興味がないなら、無視をすればいいじゃない?」
「ちが……俺は、ただ、お前のことが心配で–––」
未だ若き少年少女が、互いの信念をぶつけ合い、汚し合い、ありもしない答えを探し続ける。
この無意味な小競り合いが終わるとすれば、その時は、誰かの手で、誰かが死ぬしかないのだろう。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-04-28 18:14:46
6065文字
会話率:55%