ウチ(私)が生まれて、はや5か月余りになろうか? 生まれたころの記憶はないが、その後の何日かを暗い箱の中で過ごし、前の飼い主さまから今の飼い主さまのもとにやってきた。
新しい飼い主さまの名前は、宮本大輔(みやもとだいすけ)という。
飼い主さまはウチに、‘すず‘という名前を与えて溺愛(できあい)してくださり、毎日共に食事をして、夜は同じ布団に潜り込み一緒に眠る仲である。その飼い主さまが、このたび高校2年生というものに昇進され、それはとても苦難の道のりであったということであるらしい。
飼い主さまは狩りが不得意のようで、いつも朝は何かの目玉を焼いたものに、サダラ(サラダ)、それにトースター(トースト)などというものばかりを食べている。ウチも猫年齢では立派な大人であるらしいゆえ、狩りの下手な飼い主さまのために、今宵(こよい)はスズメでも狩ってくることとしよう。この前、ネズミを狩ってきたときには散々と叱られたものだが、飼い主さまが鳥を好物としていることは、妹の陽菜(はるな)殿との会話に猫耳を立てて調査済みである。今夜のうちにスズメ共の寝床にロックオンし、日の出とともに一網打尽(いちもうだじん)とするのだ。ネズミなどより難易度は高いが、鳥好きな飼い主さまのためである。因みにロックオンとは、飼い主さまが、たまに四角い平らな箱と会話されているときの話し言葉で、見つける!ということであろうと理解している。ここは飼い主さまの家の近くだが、道幅が狭く、両脇には背の高い草がはえている。自動車はまず通れない私道である。たまに自転車や人が通るが、ウチを見ると近寄ってきたり抱き上げようとしたりする事があるので、飼い主さまの母殿がいつも妹殿に、知らない人についていってはいけないと言っている事を思い出し、視程内全方位の警戒は常に怠りなく行っている。ここは既(すで)に、スズメ共との主戦場である。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2023-04-27 20:10:59
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危ない道があったとな
最終更新:2021-02-28 20:00:00
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不法投棄された粗大ゴミを回収に来た男が見たものとは。
最終更新:2020-12-27 01:00:00
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――借りたものは、返すのが道理ですわよねェ?
幼い頃、病の床で失われるハズだった命を『借命』して永らえさせてやったのだからと、オネエな天使カマエルから〈魂の導き手(ゴーストキャリアー)〉になるよう依頼(脅迫)される女子大生マキ。
ゴー
ストキャリアー……それは神の救いの手からこぼれ落ちた魂を、つけ狙う悪魔たちから守り、神の御元へと還すという、その名の通り魂の運び屋たる由緒正しき聖者だ。
旧家の息女でありながら、らしくない庶民性と家事スキルにより常々『ニセモノ』扱いされるお嬢様のマキは、シスターと言ってもバイトであり、そんな役目に選ばれる理由が思い当たらない。しかし、事実彼女は適性を見込まれて選出されていた――そう、幼い頃に私道で鍛え上げた、抜きん出たクルマの運転技能を。ゴーストキャリアーとは、天使の手による、なにか色々と規格外な改造を施されたクルマを駆り、こちらも常識外な悪魔どもをブッちぎって、目的地へと魂を運ぶのがお役目だったのだ。
そうして訪れた初仕事の夜。悪魔から守り、神の御元へと運ぶ魂として告げられたのは、マキが病院で知り合い、仲良くなった、ロイという病気の少年だった。
強引な『借命』という手段で大役を押し付けられたことに怒りを覚えつつも、けなげな少年の魂を守り、救うために、几帳面を筋肉で包んだ天使ラファエルと、常時どてらの引きこもり天使ガブリエルの姉弟によって生まれ変わった愛車エリーゼを駆るマキ。
しかし――ロイを巡る問題は、その魂をつけ狙う、カマエルとは双子の堕天使サマエルと、その一党たる悪魔たちばかりではなく、病床の彼を利用しようという悪意ある人間もいて……。
はたしてマキは、クセの強い天使たちとともに、悪魔を振り切り、悪意を断ち切って、導き手として幼い魂を幸ある生へと『導く』ことができるのか?折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-02-21 07:00:00
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