これは、描いたものを具現化する絵師と、異形の肉体を持つ両性者の冒険活劇。
旅の画家として五年間大陸各地を放浪している中性的な美貌の男、リラ・ヴァルムヴェークは、砂の国からの帰路で巨大なクジラ型魄獣に襲撃され、砂船の甲板から絵を具現化す
る異能の術で対抗する。
それは船員たちの間で噂になるが、リラはあくまで自分は画家だと言って、「獣狩(ししがり)」が専業ではない、副業だと説明していたが、そんな彼に船団を率いていた奴隷船の代表船長が声をかけてくる。
言葉巧みに押し付けようとしてきたのは「月光病」という大陸で極々稀に見られる奇病によって肉体が異形のそれへと変化した女性的外見をした両性具有者、メア。
リラは彼女の喪失と悲壮に暮れた溟い目を見ているうちに、気づけば契約書にサインしていた。
こうしてリラは奇妙な縁から出会った、古代大陸神語で悪魔を意味するメアと旅をすることになる。
そしてそれは、失ったものを、半端者の自分だけが生き残っている意味をアートを通して探すリラにとっても、望まぬ肉体に身をやつしたメアにとっても、この唯一大陸・ミュステリウムにとっても大きな意味を持つ、或いは「きっかけ」となる出会いだった——。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-02-14 08:03:43
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