――昏い森の中に独り棲む、妖艶な美女。
そんな彼女の元を訪ねたのは、能面の様な顔をした騎士だった。
「やぁ、香煙の魔女」
「あら、ごきげんよう顔無しの騎士サマ」
この騎士は物心がつくまで娼婦に育てられたが、残念ながら彼女は産みの親ではな
かった。
彼は生きる為、国王の駒となり戦場へと向かう。果たしてそれは母国の為なのか、それとも――。
「こんにちは、可愛い兵隊さん」
平和の為に身を捧げた一人の少女。
その笑顔は、儚くとも凛と咲く一輪の花のよう。
それは騎士の心に一つの野望の炎を燈らせた。
――あぁ。彼女が、欲しい。
香煙の魔女と感情を失くした顔無し騎士。そして白百合の姫。
「あら、夜分遅くに随分と物騒なお客様ですのね」
しかし周囲の思惑によって、彼らの関係は引き裂かれていく……
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-07-24 20:23:21
8844文字
会話率:9%
何年か前に、声優さんの卵な方に朗読イベント用の原稿を一本書いてと依頼されて書いたものです。あらすじと言えるほどの筋はなく、しいて言うなら一匹の蝉が羽化するまでを観察した記録です。物語の内容よりはその人が声に出して読んだときに良い雰囲気をかも
し出せるようにということに注力しました。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2014-08-16 20:55:17
2620文字
会話率:4%