二度の婚約破棄を経験し、すべてに疲れ果てた貴族令嬢ミゼリアは、山奥の屋敷に一人籠もることを決める。唯一の話し相手は、偶然出会った傷ついた猫・シエラル。静かな日々の中で、ミゼリアの凍った心は少しずつほぐれていった。
ある日、負傷した青年・セ
スを屋敷に迎え入れたことから、彼女の生活は少しずつ変化していく。過去に傷ついた二人と一匹の、不器用で温かな共同生活。しかし、セスはある日、何も告げず姿を消す──
「また、大切な人に置いていかれた」
残された手紙と金貨。揺れる感情と決意の中、ミゼリアはもう一度、失ったものを取り戻すため立ち上がる。
これは、孤独と再生、そして静かな愛を描いた物語。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-06-09 18:36:34
14432文字
会話率:46%
風が吹かない村に、青年がひとり流れ着いた。
名前も語らず、ただ剣を持って、静かに焚き火を見ている。
この村では、名前を聞かない。
過去も語らず、未来も約束しない。
焚き火を囲み、パンを分け合いながら、ただ静かに日々を過
ごすだけ。
黒衣の青年が村に来たのは、そんな空気が当たり前になった頃だった。
彼は多くを語らない。剣を手放さない。
――だけど、風が止まった朝、彼の目だけがわずかに揺れていた。
これは、死ねなかった誰かが“まだ生きる理由”を見つけるまでの、静かな物語。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-31 10:09:36
444文字
会話率:20%