婚約破棄。それは貴族学園における、四季折々の風物詩。
私はそれを優雅に観察し、紅茶をすするだけの地味令嬢。
恋なんて火傷の元、興味も関心も──ないはずだった。
でもある夜、魔道具の不具合で“本当の顔”を晒したら、
親友の婚約者がこっちを見
て言ったのよ。
「また会えたね」って。
……いや、待って。なにその詩的なテンプレ台詞?
ていうか、あなた、うちの親友のフィアンセよね?
恋愛劇の観客席にいたはずの私が、気づけば舞台のど真ん中。
友情と正体と、若干めんどくさい詩人気質の男を前に、
私が出す答えはただひとつ。
「そんな恋、断って差し上げます」
これは、“婚約破棄ウォッチャー”が、
“恋の主役”に選ばれてしまった皮肉な物語。
──仮面を外すのは、誰のため?
私の紅茶が今日も少しだけ苦いのは、たぶんそのせい。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-05-16 15:45:18
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