「私の魔力を封印して、攫ってください」
「……お前は阿呆なのか?」
魔王・ヴォルフガングは、自分を永きにわたる封印から叩き起こした『聖女』に頭を抱えた。
ウルルは、現代日本に生を受け、望まぬ形で『聖女』として召喚され、そして、魔王と刺し
違えて死んだ、前世の記憶を持って生まれた。
……我ながら、設定が詰め込まれすぎている。
いくら『聖女』として、前世で最期を迎えたからと、生まれは平和な日本の小市民。
何度も何度も、世界のために命を捧げろと言われれば、さすがに拒否したくもなる。
そして、考えた。
『聖女』であると知られる前に、その力を封印してもらえば、自分は平穏に人生を全うできるのではないか、と。
だけど、そのためには『聖女』であると告げなくてはいけない。
……ジレンマだった。
そして思い至る。『聖女』と知れても、力を利用せず、むしろ喜んで封印してくれそうな存在に。
15の誕生日の直前。
国に義務付けられた、魔力鑑定式を前に家を逃げ出し、ウルルは魔王の眠る封印の地を訪れた。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2020-07-22 22:00:00
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会話率:31%