母が死んだのは、もう十三年も前のことだ。母の誕生日、果ては名前も顏も忘れて久しいのに、命日だけははつきりと覺(おぼ)えてゐる。
其(そ)れは何故なのか。
屹(きつ)度(と)あれの所爲(せい)だ。
故人は死んでも四十九日の間はまだ現世に留ま
ると云ふのを知り乍(なが)らも、どうしてか無性に女が抱き度くなつて──買つたのだ、女を。
母の寢室でだ。
其れがどうしやうもなく後ろめたくて、けれどどうしやうもなく亢(こう)奮(ふん)したので、私は今でも母が亡くなつてからの四十九日間の出來事はしつかりはつきりと覺えて、頭からこびり附いて離れずにゐるのだ。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2012-04-19 20:46:14
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