僕の友達にヨシダさんという人が居ます
歳は四十代半ばで長身痩躯。酒豪。ちなみに中々の二枚目でもある
職業タクシー運転手。2006年の或る日、僕が新宿駅西口でたまたま停めたタクシーの運転手さんがヨシダさんでした
目的地で降りるまでの間
、ぽつぽつと話をしました。すると若い頃に僕と同じ街に住んでいた事がわかりました。会話をする中で妙にウマが合ったので連絡先を交換し、それ以来の付き合いになります
ヨシダさんと僕の共通点は同じ街で過ごしたという事と、同じ自動車が好きだという事
そして話を進めていく中で明らかになったのが二人とも今まで数多くの不可思議な現象に遭遇し、様々な恐怖を経験した事でした。ことヨシダさんの経験してきた心霊体験や怪奇現象に修羅場の数々は驚きの連続で、彼から沢山の怪談を聞きました
そしていつの間にか、その場に僕も連れて行かれるようになりました。初めは数か月に一度、多い時はひと月に二度三度、僕は彼といっしょに日本のあちこちにある曰くつきの廃墟の数々に足を踏み入れました
行けば高確率で死ぬほどの恐怖を味わい、行かないと言えば小馬鹿にされる──
僕は悔しくて意地になってヨシダさんにくっついていきました。ヨシダさんと一緒でなければ、あんな真似は出来なかったでしょう
暗く恐ろしい場所に踏み込むとき、僕がこれまで経験したこともないような恐怖に呑み込まれてしまったとき
いつも助けてくれたのもヨシダさんでした
そして最後にはその恐怖に呑まれ、引きずられていったのも
いま僕は何年もヨシダさんに会えないでいます
最後に会った時、彼はあの世とこの世の狭間に居ました。そして僕だけがこの世に帰ってきてしまいました
僕はずっとヨシダさんからの連絡を待っています
ある日思い立って、かつてヨシダさんから聞いた話や彼と共に過ごした日々の思い出を書き出してみました。現実に起こり得るはずのない、信じられないような事が沢山ありました
出会った当初からは想像もつかないような物語に、いつの間にか僕は放り込まれてしまいました
これは僕が謎多き親友、ヨシダさんと共に主に恐怖を味わい、時に過去を振り返りながら束の間を共に過ごした記憶の中から幾つかをピックアップしたものです
この世の片隅で確かに起こっていた男たちのちっぽけな物語を、どうか読んでやってください折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-06-06 21:38:04
254356文字
会話率:53%
皮肉、それは栄光と転落のでたらめな混在。二人の男が堕ちていく物語です。
プロミュージシャンを目指す下川八百太(しもかわやおた)は、コンビニでのアルバイトの傍ら、音楽投稿サイトRAMPANT(リアンペント)に自作の曲を投稿し続けていた。唯一
無二の歌声を持つと自負している八百太は、交流や宣伝を嫌い、黙々と投稿し続ける。いつか誰かが見つけてくれると信じているのだ。
ある日八百太はひょんなことから、RAMPANTでランキング一位の<Lin(リン)>の正体が、同じバイト先の従業員、下川鈴男(しもかわすずお)だと知ってしまう。
※「カクヨム」でも同内容を掲載しています。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-01-28 21:31:34
117393文字
会話率:41%
富士の風穴《ふうけつ》奥に発見された「裂け目」の向こうには、地球とは異なる異世界が広がっていた。
そこには文化程度が低いながらも穏やかな知的生命体がいて、調査隊は彼らとのコミュニケーションを通して「異世界」への進出を試みていた。だが調査
隊の中には「これは一種の侵略ではないのか」と危惧する声もあった。
しかし、事の真実はまったく別のところにあった……折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-09-20 19:59:36
10988文字
会話率:25%