闇! その中にごく薄い靄が漂っている。よく見ると、それは光っていた。プラズマの発光。キラキラと薄く、闇と反応して…… 「エリア718に到着。これから〔非在〕領域内に突入する。こちらの機器の応答はいまのところ順調だ。この先追尾よろしく」『イ
グザ34了解。レート・レーザには良く見えているよ。こちらの装置にもまだ異常はない。確率変数も安定している』〔非在〕はその存在を知る少数の誰もが予期せぬうちに人体に巣喰う癌のように時空に点在して広がっていった。初の調査隊が向かった[非在]はノルウエー・フィヨルド先の海底百メートルの位置に発見されたものだった。時代を遡って最初にそれを観測したのは天体物理学者だった。異常な重力場領域として観測されたのだ。詳しい解析の結果、その原因は等価原理の違反であると判明した。重力質量と慣性質量の不一致が時空の重力異常として観測されたのだった。ある考えではそれは特殊なスピンとして素粒子内部に隠された空間または時間が部分的に開放された結果なのではないかと解釈された。その場合、観測された重力異常周辺領域には余計な時空が付随することになる。また重力異常領域ではヒッグス粒子の質量がユニタリティ限界を超えた大きさを持つ可能性もあり、その場合には確率の保存が破られる、すなわちその領域内では原因と結果(因果関係)が崩れてしまっている可能性も否定できないのだった。また、それが学者たちが今回の重力異常領域を〔非在〕と名付けた理由でもあった。『わたしたちをここに跳躍させた質量転移について疑問がわいたんです』調査隊員のひとりが隊長に告げた。「というと?」隊長が答える。『質量転移の観測依存性についてですが、あの式に出てきたオブザーバブル=可観測量の導出は間違った仮定の上に求められたのではないかと思えるんです?』「具体的には?」『わたしたちがすでにこの〔非在〕自体に包摂されているという可能性です』折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2024-11-14 06:40:52
16535文字
会話率:48%
アフリカのダイヤモンド鉱山で派遣坑夫として働く森内光矢(もりうちこうや)は、ある朝先輩からの連絡で叩き起こされた。坑道内で作業をしていた同僚、浅井の消息が途絶えたという。先輩である比嘉(ひが)は、いなくなる直前の浅井と無線により連絡を取っ
ていた。その時浅井は「ダイヤではないもの」を見つけたなどと言い、それ以降連絡を完全に絶った。
比嘉によると、坑道内は場所によっては武装組織が絡んでいて極めて危険だという。森内は比嘉と二人でフライングポッドと呼ばれる航行機に乗り込み、同僚の捜索に向かう。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2021-02-27 20:50:26
21705文字
会話率:38%
「存在する点」は
体積も面積も長さも
あらゆるものの部分を持たない。
あるのにない、ないのにある。
この点が実体(モナド)である。
「今という時間」は
時間軸の長さの部分を持たない
「存在しない時間」である。
あるのにない、ないのにある。
今という時間も実体(モナド)である。
実体は現実に我々の世界を構築する要素である。
この実体が「存在する無」なのだ。
「存在するのに存在しない」の概念。
実体が永遠に連鎖をつづける理由、
それは「存在する無」が「完全無」であるための
無限大の広がりである。
この「広がり」が宇宙に誕生した
最初の力学である。
点が「同じもの」として線に広がること、
これがアインシュタインの言う
等価原理である。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-12-31 20:25:42
61576文字
会話率:3%
現実と空想、ミクロとマクロ、そして量子と物理。各々の地平線を昇降する『アインシュタイン・エレベータ』これに乗降する女と男、もとい、人妻と猫。彼らはそこで何を成し、そして何処へ辿り着くというのか。
【空想科学祭FINAL・参加作品】
最終更新:2012-08-30 22:23:14
19974文字
会話率:40%