若くして難病《マラド・ムスターシア》に侵された結城内乃介《ゆうきないのすけ》。母を21歳の時に亡くし、資産家の父はその2年後に愛人と再婚。内乃介は父に1億円の小切手で縁を切られる。そのカネでひとり豪邸に住んでいた時に、フリーランサーの神経内
科医・ドクター丘乃《おかの》に生涯治る見込みのない難病であると宣告される。
振戦(手足の震え)、筋固縮(筋肉が固まること)、無動(身体が動かなくなること)、失禁など病状は急激に悪化していき、やがて車イス生活を送るようになり、なぜ生かされているのかひとり悩むことに。
そこに突然現れたのがクスリの副作用でもある幻覚症状から生まれた幻覚少女ホリー。
ホリーは毎日のように内乃介の前に現れては内乃介の心の闇を消し去っていくのである。
やがて、内乃介は現実世界《ラ・リアラ・モンド》と異世界《マルサーマ・モンド》の境目を喪失し、ホリーを心から愛してしまうことに。
そして、2030年に時間と空間を超越し、内乃介の愛によってホリーは人間となるのである。
しかし、2人が辿り着いたのは2018年で、時空は逆行してしまう。
それは内之介にとっては健常者であった時代。本当であれば喜ぶべきところなのであるが、現実は首から下が全く動くことができないアキネジア(無動)状態の内乃介の姿がそこにはあった。
ホリーは内乃介を今ある状態から何とかしなければ…。
また彼女は彼の子を身籠っていたのである。
近未来に発表されたリポートを入手したホリーは、M78星雲のパンドラ星にこの難病を救う手立てがある事を知り、内之介を助けるべく宇宙船に乗ってパンドラ星へ行くことに。
その援助には疎遠だったはずの内之介の父親が名乗り出て来た。
しかし、2018年の宇宙船は未来のモノに比べれば雲泥の差でオンボロ。
果たして、無事にパンドラ星に到達できるのか……。
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若くして難病にかかった著者の実体験に基づく生かされるとは何か、幸せとは何か、恋愛とは何か、欲望とは何かをテーマにした私小説でありながらも、現実世界《ラ・リアラ・モンド》と異世界《マルサーマ・モンド》を行ったり来たりするサイエンス・フィクション小説でございます。
この小説はきまぐれな幻覚少女ホリーがストーリーを破天荒な世界へと導いていくのがキモとなっております。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-03-22 22:00:00
84250文字
会話率:26%