ある日、年若い僧侶である吏鶯《りう》が拾い上げた赤子がいた。包まれていた錦地のおくるみから察するに、高貴な身分であろう赤子はそのまま寺の養女となる。しかし、異例なのはその待遇ばかりではない。常人の三倍の速さで成長する異常さがあったのだ。
指したる混乱もなく成長する赤子を椿姫と呼ぶ僧侶たちの中で、吏鶯だけは赤子の異質さにはっきりと気付いていた。
それは心に巣くう闇が深い為なのか、存在自体がひとつの闇である赤子は、更なる闇を呼び寄せる。
成人した赤子に剣を向けるひとりの侍の名は、斎藤一。京都の町を震撼させている集団、壬生狼《みぶろ》のひとりでもあった──。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2013-09-08 11:41:07
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会話率:39%