クラヴィス公爵家の長女・エステルは、ずっと家具のように扱われてきた。
妹のフィオナに家族の愛も、婚約者も譲って当然──それが“良い姉”の役割だったから。
けれどある日、ついに婚約破棄を言い渡された瞬間、
エステルは黙って家を出ることを決め
た。
「家具は、扉の外には持ち出さないものだから」
名も告げずに田舎の町で働き始めた彼女が出会ったのは、ある一人の青年。
地味で無欲な自分の声を、正面から聞いてくれる不思議な人だった。
そして再び現れる、欲しがりの妹。
奪われる日々はもう終わり。今度こそ、私は譲らない。
これは、使い捨て家具のようだった令嬢が、
誰にも替えのきかない椅子に座るまでの静かなざまぁの物語。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-02 19:00:00
9558文字
会話率:20%