俺の名前は神崎透。
国内有数の大学病院で心臓外科の頂点に立ち、「神の手」とまで呼ばれていた。
人の命を救うこと。それこそが、俺の唯一の価値だった。
そう、あの日までは。
その日の執刀中、患者の胸の中から現れたのは、誰も見たことのない「何
か」。
それに触れた瞬間、音も光も消え、俺は感覚をすべて奪われ、やがて…俺は異世界に堕ちた。
残されたのは、嗅覚だけ。
感情も記憶も、すべてが「におい」になる奇妙な世界で、
俺は一匹の犬と出会う。
「お前、本当に救いたいって思ってたの?」
不思議な犬は、心のにおいを嗅ぎ分け、他者の「痛み」に寄り添おうとする存在だった。
万能だったはずの俺は、この世界では犬のように嗅ぐ以外何もできない。
ただの無能として、この世界で「におい」を頼りに心を診察しながら
「優しさ」や「過去の自分」を学び直していく。
これは、すべてを持っていた男が、
再び「人間」になるまでの、静かなリスタートの物語。
においで「こころ」を診る異世界嗅覚ファンタジー。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-07-25 20:50:00
3900文字
会話率:17%