※これは重複投稿作品です。
彼女の街では魔法使いが非常に少ない。時代と共に廃れていった風習のように、魔法の研究をする者もみるみる少なくなってきた。そんな時代の中で、一人の魔法使い見習いの少女が恋をした。
なんとなく頼りなげな背格好の男性だ
が、表情は柔らかく、態度も口調も優しい人だった。そんな彼に恋心を向けたのは、ほんの些細な偶然からだった。それは彼女にとってとても重要なことで、しかし、他人からはどうでもいいかもしれないと思われるようなことだった。
魔法使い見習いのミツは、とにかく不器用な人間だった。他人と付き合うのも、家族との生活の仕方も、誰であっても人見知りが激しく、いつも伏し目がちな子だった。そんな彼女が恋をした。どうにかして彼を、トリを振り向かせるためにしたことは、魔法の力を使って相手からこっちに接触してもらうということだった。
ミツの作戦は成功し、トリが彼女を見る目は変わっていった。それもいい方向に。というか、ミツの望んだ方向に変わった。彼女は幸せだった。今まで生きてきた中で最高の時間だと思うほどに。しかし、その時間も長くは続かなかった。
まだ見習いの身で他人に魔法をかけたせいで、それは不完全なものだった。魔法は解け、なぜ自分は彼女のことが好きだったのか分からなくなった。
ミツは怖くなった。彼がいなくなって、一人ぼっちに戻ることが恐ろしかった。彼女はいつも孤独だった。彼女の家族も、同級生も、誰も彼女に深く関わろうとはしなかった。だから彼女は孤独だった。魔法だとしても、トリの心をこちらに向けることが出来て、そういった孤独が無くなったという時に、魔法は消えた。
おびえるミツをトリは優しく励ました。
「君は一人じゃないよ」
その言葉の意味が彼女には最初は分からなかった。
「君が一人にならないように、僕が一緒にいてあげる。だから、君も僕の側にいてくれないか?」
そして二人は結ばれた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2015-07-21 16:55:24
11229文字
会話率:35%