死にたいけれど、死ねないなんて思う事はないだろうか。俺は毎日そう思っている。
退屈な日々の中、俺を取り巻く環境は一風変わっている。
心を壊した俺、俺を束縛して手中に収める千夏、幽霊しか愛せない毅、死んでしまった美咲。幼馴染である俺たち四
人は、何処かで狂っていると知りながらもそれをやめることは出来ない。俺自身も、死んでしまった心を生き返らせる事は考えられなかったはずだった。
しかしその考えは覆されることになる。
七月の夏真っ盛りなある日、この町にだけ、雪が降った。燦々と太陽が輝く中、雪は平気な顔をして降り積もったのだ。
そして同時に、夏雪は奈緒という女性を連れてくる。無邪気で天真爛漫で破天荒。楽しい事しか考えていないような彼女は、だけど俺の死んでしまった心を蘇らせた。ありていに言えば、俺は奈緒に惚れたのだ。
彼女に惚れた俺は、何とか振り向かせようと行動を試みるけれど、奈緒はそんなの気にも止めない。やがて夏雪が俺の町を侵食し始めて、それどころではなくなる。
雪に侵された町、神出鬼没の奈緒。その正体とは――。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2018-05-14 21:08:58
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俺は俺じゃない。自分に対しての快楽を求めず他人に奉仕する。どんな状況でも他人を優先させ自分の感情は心の奥底へに閉じ込める。自分が自分でいれないなんて最悪だ。この世で生きる意味がない。俺自身に対する必要性はない。誰にも俺の感情なんて伝わらない
。そんなことを考えながら夜の公園を歩いていると自動販売機が目に付いた。近づいてみる。
酒だ、酒の自動販売機だ。
高校生なので酒を飲んだことはない。
もうどうにでもなれ......
持っていた小銭で数本のお酒を購入した。缶は痛いほど冷たい。でもどうだっていい。これで少しでも酔うことができれば自分らしくいられるかもしれない。
―――足元がふらつく、でもなんか楽しい。
今、自分がどこに向かっているのかが理解できない。まあ、どうでもいいか。
すれ違う人と肩がぶつかる。謝ろうなんて思わない。
ここがどこなのかがわからない。足元に黄色い四角形の点字ブロックがある。
体がふわっと浮いた瞬間、体が地面に叩きつけられる。地面には二本の鉄が暗闇へとまっすぐ伸びている。
人の声が自分より高い位置から聞こえる。
その時、暗闇から轟音が響いた。二つの小さな光がこちらに近づいてくる。
体が重い。体に鉛が流し込まれたみたいだ。
もう、どうでもいいな。
本当にどうでもいい。―――そこで意識を失い気がつくと殺風景でどこか幻想的な世界に立っていた。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2013-03-25 22:06:54
6726文字
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