全能神ゼウスと豊穣神デメテルの娘ペルセポネーに一目惚れした冥界の王ハデスは、弟でもある父神ゼウスの了承を得て、彼女を冥界へと連れ去った。
娘が連れ去られたことに怒り狂ったデメテルは、自らの責務を放棄し、世に凶作をもたらす。
デメテルの
怒りに触れたゼウスは、ヘルメスを冥界へ遣わしペルセポネーを連れ帰るよう命ずる。
しかし、すでに冥界の食べ物を口にしていたペルセポネーは、一年のうち3分の1は冥界にとどまらなければいけない身となっていた。
ペルセポネーが冥界で過ごす間、娘と会えずに悲しみにくれたデメテルが仕事をせず、作物が育たない季節ができるようになってしまった。
それが冬の始まりであった。
――それがわたしの知っているギリシャ神話の物語。
どうやらわたしは、別の世界から神話の物語の中に入り込んでしまったらしい。
しかし冥界の王の従者サーベラスの一言がわたしの幻想を打ち壊す。
「……ペルセポネーとは何のことだ?」
わたしの名前は山野辺美奈子。
冥界の王を拒絶する娘神の中に、身代わりの人身御供として召喚されてしまったらしい。
……だけどこの世界はわたしが知っている物語とは少しばかり違っているようだ。
いきなりの事態に戸惑いながらも、引きこもりの娘神に語りかけつつ、一方で冥府の王とも積極的に交流し、距離を縮めておくことも忘れない。
野に咲く一輪の可憐な花に一目惚れした冥界の王と、王の乗る黄金の馬車で無理やり冥界へと連れ去られた娘。
世間では、一応そういうことになっている。
でも、なにやら別の事情があるような、ないような。
というか、冥界の王ってこんな性格だったんだ……
だけど、それもわたしには関係のないこと。
いまのわたしは女神の身代わりの人格に過ぎないし、知ったこっちゃない。
とりあえずふたりの仲を取り持ちつつ、一生懸命がんばってまいります。
――でも、なんでこんなことになってんだろ?折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2017-12-12 18:17:26
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