平凡な男爵令嬢アン・イルドゥースは、隣国皇帝に『額縁姫』として求婚される。
才色あふれる妹と弟のために尽くしてきたアンにとって、その求婚は寝耳に水だった。
◇◇◇
アン・イルドゥースは長女だった。
嫡男であり家を背負う弟が何より優先され
るのは自明の理で、
愛らしい末っ子であり美貌の金髪の妹が愛されるのは当然だった。
──貧乏男爵家の長女。
即ち、それは家の為の供物である。
供物、それすなわち世界の主人公にはなりえない存在。
誰かの幸福の脇役であり、添え物であり、世界が潤滑に回る歯車の一つだ。
彼女は自分のことを、それ以外の何者でもないと思っていた。
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-12-08 22:18:14
8490文字
会話率:28%