「名を与えられぬ者に、世界は耳を傾けない。」
語られることでしか存在を証明できない世界。
すべての者が「語律」によって管理され、名を与えられ、記録される。
だが、封印の底で目覚めた少年は、名を持たず、声も持たない。
彼は人でも、兵器でも
ない。
——彼は、「未完の詩」だった。
沈黙を守り続けた竜・ラクリマ。
かつて失われた詩の残響をその身に宿し、再びその声に導かれる。
世界は彼を「朗誦」しようとする。
命名し、定義し、完成させようとする。
だが彼は言う。
「僕の名は、まだ“言い終わっていない”。」
未詠なる声が紡ぐ、存在と詩の物語——
詩を語る者ではなく、「詩そのもの」として生まれた少年の、沈黙の旅が始まる。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-13 06:00:00
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