海沿いの工業地帯には打ち捨てられた廃ビルが立ち並んでいる。人の姿が消えた集合住宅、複合ビル、事務所。降り積もる年月は、そのかつての時代の空気をビルの中に澱ませ、暗く閉じ込めている。
その中のひとつ、人実会館。
喫茶店、美容室から病院ま
で備えた複合施設として多くの人でにぎわった昭和の中層ビル。しかしそこは45年前に起きた火災で5階から上が全焼し、廃館となった。
上層は焼けただれたまま、下層は食堂の食器や病院の機材など打ち捨てられたままに、ビルから人が去った。次第に周囲の建物からも人の姿が消えていった。
時は流れ、かつてのにぎわいの跡には荒涼たる廃墟だけが佇んでいる。
人がいないはずの建物からは、夜な夜な笑い声がきこえ、窓には人影が浮かぶと言われる淋しく、冷たい廃墟群。
かつて起きた猟奇殺人の真相。
焼身自殺を遂げた女の伝説。
そして当時の人々の悲喜交々の人間模様。
これは、そこに立ち入った肝試しの学生たちの、一夜の物語。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2011-01-10 21:38:41
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会話率:50%