心理学とは、「人間とは何かーー」を探究する学問である。
1879年、ブントがライプチヒ大学に心理学実験室を開設したその時まで、心理学は単に哲学の一領域に過ぎなかった。
哲学が、「人間とは何かーー」を探究する学問である以上、心理学もまた否応な
くこのテーマから逃れることはできない。
心理学とは、種々の実験や調査、面接や観察などを通して、科学的に「人間」を研究する学問である。
以上が意味することは、「人間」の探究に、文理の隔たりはないということなのである。従ってこの場所は、「人間とは何かーー」を探究する者である限り、常にその門扉が開かれる(心理哲学評論:序論に拠る)。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2022-01-28 19:20:11
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喪失のアウトランド(梗概) 藤 達哉
圭彦は大学の医学部に籍を置いていたが、人間の身体と精神の関係に興味を覚え、大学院で精神病理学を専攻する。世界でおこる様ざまな悲劇や事件は人間の欲望や利己心によって惹き起される。そこで、人間の精神
をコントロールできる薬品ができれば、人間の思考や行動様式を一変させ、世界に安寧が訪れ平和になる、と彼は考えた。大学院を卒業し大学の講師となった彼は研究に精励し、ついに人間の心から様ざまな欲望を消し去り、幸せをもたらす薬品を完成させ、ニルバーナZと名づける。
その驚くべき薬効に大学は注目し、そして賞賛の声を送った。
彼の両親は離婚していた。母親は愛欲のもつれから交際相手を刺殺し、その出来事は圭彦の心の癒しようのない深い傷になっていた。
他者が触れようがないその生々しい記憶が、ニルバーナZ開発の抑えがたい動機となっていた。
圭彦が恋人の絢子の協力で、医学部長の席を争っていた野心溢れる上司の教授にその薬を?ませる。すると、彼は人格が変わり、円満な性格になり、権力欲や名誉欲を消失していく。しかし、薬の副作用で鬱状態になり、彼は人生に絶望し自殺を図る。
理想の薬のはずが、皮肉なことに予想だにしなかった副作用で怖ろしい悲劇が生まれてしまった。
目指していた理想とは裏腹な結果に、圭彦は大きなショックを受ける。
薬の副作用が信じられない圭彦は、つぎに綾子に薬を?ませるが、彼女も精神の不安を訴える。
圭彦はもはや自身で薬を?み、自ら薬効を試すほかないと思い、薬を服用することを決意する。
ある夜、彼はニルバーナZを服用して眠りに落ちる。しかし、翌朝、絢子からの電話で彼は意外な事実を知る。
(了)
折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2016-09-26 20:15:39
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