——獣狩(ししがり)。それは化獣(ばけもの)を狩り、その糧を得る狩人たちのことである。
彼らは化獣の命を重んじ、敬愛した上で狩りに臨む気高き狩人であり、その疾風迅雷の戦いぶりに人々は敬意と畏怖を抱いていた。
時は常闇暦八七一年。
かつて栄えた文明が一夜にして消え去った「厄災」からおよそ九世紀が経ち、彼の神楽大陸ではかつての神の教えを中心に、復興が進められていた。
金属禁忌という神の教え——神闇道・常闇之神社では一切の金属が禁じられ、代わりに天然物や化獣素材を用い、人々は不自由なく暮らしていた。
ある寒村で起きた惨劇から十数年後、禁呪をその身に宿す青年・蕾花はある冬の夜、雪の積もる幻冬峠で行き倒れる。
「坊やがこんなとこで死んでんじゃねえよ」——そう言いながら通りがかった龍人の女・潤花は彼を見捨てては置けず、山道脇の朽ちた小屋で蕾花を介抱してやることに。
目覚めた蕾花は潤花にどこか、強い信念と熱を感じながらも突き放そうとする。しかしそこに化獣の咆哮が木霊し、彼らは一時共闘することに。
紆余曲折を経て蕾花は己を付け狙う者たち——「禁呪院」の追手を振り払うための力を磨き、そして糧を得るために潤花の勧めで獣狩となるのだった。
「泡沫の里へ行く」——蕾花は常闇之神社総本社が建立される、霊天山の山腹にある泡沫の里へ向かうことを望む。
その理由は、常闇様自身に問うためであった。
——なぜ、俺なのか。……と。折りたたむ>>続きをよむ最終更新:2025-04-05 07:10:02
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